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【超ショートショート】ある人生

仕事が終わり、家に帰る。

すり減った靴を脱ぎ捨てて、冷蔵庫を開ける。

冷えた酎ハイを手に取る。

帰りに買ったマクドの15ピースのナゲットを齧りながら、Youtubeの動画を眺める。

"なんで生きているんだろうな。"

 Youtubeの流れゆく動画の音声を聴きながら、スマホでTwitterのメッセージを読む

"なんで生きているのだろうか?"

酔いが回る。気分が良くされていく感覚。気がつくと、Youtubeの動画は好きな歌へと変わっている。

ふわふわした気分でネットサーフィンに洒落込む。

"なんで生きているのだ?"

ナゲットは無くなっている。

Youtubeを流しながら、ベットに寝っ転がる。気がつくと時間は9時になっている。

"なぜ生きているのだろう"

Youtubeは面白くない。ただ、鼓膜をゆらすだけだ。

ネットサーフィンも下らない。情報は次から次へと過ぎていく。網膜に写った情報は脳に届かず、通り過ぎていく。

"なぜ生きているのだろう"

パンツとタオルを持つ。風呂に向かう。

3点ユニットバス。シャワーを暖かくなるまで出して、ちょうど良くなったら、頭にお湯をかけて頭を洗って体を洗って顔を洗って体を拭いて部屋に戻る。

また布団に寝っ転がり、網膜と鼓膜を刺激する物理現象を体に与える。

11時、歯を磨く。

"なんで生きているのだろう"

鏡に自分が映る。

"なんで生きているの"

口を濯ぐ。

"お前はなぜ生きている"

口と手をタオルで拭いて、洗面所から出る。

ベットに寝っ転がる。11時半。

スマホ光る。網膜と鼓膜、踊る。

"死ねば良いのに"

12時、明日も仕事だ。電気を消す。

"なんで生きているのだ、お前は"

目を瞑る。段々、意識が遠のいていく。

"明日も生きるのか。お前は。"

やがて、何も聞こえなくなる。

目を開ける。朝7時。

体を起こす。ベットから降りる。顔を洗う。

"なぜ生きている"

ご飯を食べる。

"意味はあるのか"

ネクタイを結ぶ

"なぜ生きる"

靴を履く

"生きている意味は"

ドアを開ける。

"お前はなぜ生きているのだ"




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