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詩集「凍える言葉」+

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2020年4月27日に発行。 混乱と悲鳴に満ちた青年期の余暇から生まれた第一詩集「凍える言葉」のnoteバージョンです。 「凍える言葉」に収録された作品はもちろん、未収録の作品…
本づくりを中心とした、クリエイティブディレクターが満を辞して作ってしまった詩集です。 書籍版では、…
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記事一覧

詩:眼の夢

詩:眼の夢

夢の中

眼の前には大きな本があった

何かしらのアンケートを取っているようだった

「次のページを開いて選んでください」

詩:工事現場

工事現場では

打ち捨てられた巨大なピンクの脳髄が

雨に塗れて脈動する

詩:夢の女

夢の女は砂の城に眠る

茫々たる木々は波のように城を包む

濡れた髪を散らかして

詩:駅Ⅱ

夜の喫煙所、ロータリーを眺める

鄙びたビルに囲まれて

たった今、電源が落とされて

影のような人たちは、音も立てずに帰路へつく

詩:見てみたい

フランスのガイコツ、ギリシャのカミナリ、イタリアのマンホール、スペインの噴水、ドイツのトロンボーン、ロシアの太鼓、モンゴルのコマ、ハワイのぶどう、メキシコの花火、ポルトガルの戦車、韓国のフエ、中国のシャボン玉、ベトナムのカーテン。

詩:白線

白線は聖なる場所

誰にも侵されない

新宿の車道で私はみた

白線上の鳩の死骸を

詩:指

指はスラッシュ

口に当てれば/沈黙

何かを指せば/景色

詩:秋の朝顔

薄汚れた街の一角

カロリーの少ない土からそれは生まれた

枯れた木にまとわりついて、朝の日差しに顔をしかめている

詩:惑星と筆箱

惑星

無数に存在する惑星の裏側には何があるだろう

目を閉じて宇宙について考える

もしかしたらないかもしれない惑星について思いを巡らす

そして、ないかもしれない惑星の裏側をそっと想像する

詩:Y字路

いつものY字路で私は忘れ物に気づく

ああいけない、そういって道を戻れば、あの時のアイツに出くわす

アイツはあの時のように、家で待っているよと言ってくれる

詩:逆行

気づけば岩だらけの海岸にいた

カモメが何羽も飛んでいる

その時ある迷信が頭をよぎった

詩:肉

この先はまるで螺旋のような道

ぐるぐると回転する道をひたすら登ることにした

あたりは暗く、風も吹かない

私は十字架を見つけた

詩:走る

私は走る

ツノの生えたシマウマに跨って

私は走る

灰色の大地には紫色のカミナリが降り注ぐ

私は走る