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『BREAK THE SILENCE : THE MOVIE PERSONA』


遅ればせながら10月初旬『BREAK THE SILENCE : THE MOVIE PERSONA』を観た。

彼らと出会って日の浅い私は、この映画を観る覚悟(K-POPという大海に飛び込む覚悟)がなかなか持てずにいたが、花様年華ツアーや毎日のように供給されるコンテンツを受容した私に退路なんてないし、前売り買っちゃったし…と腹を括りやっと観ることができた。


この映画の大まかな内容は、“BTSの自分”と“本名の自分”の2つの自分について彼らがそれぞれ語りながら、ワールドツアー「LOVE YOURSELF:SPEAK
YOURSELF」をライブ映像と共に振り返ること。映画冒頭、2つの名前で自己紹介させたのはその対比の強調だと思う。



観終わった後、私の頭を大部分を占めていたのは、
“なんだ、知ってる人たちだ。”

“彼らも生きてるんだなぁ。”
という感想だった。


知ってると言うとだいぶおこがましい。それも彼らを知って数ヶ月のファンが言えることじゃない。私もそう思う。だけどたしかにそう思った。
なぜなら、観る前は映画版のドラえもんでジャイアンが急に優しくなるような、のび太が急にかっこよくなるような、そんな劇場版の彼らがそこにいると思い込んでいたから。でも実際、映画の中で語る彼らは小さなスマートフォンの画面で見たインタビューやVliveで話す彼らの延長線上にいたから。

私が見たものも知っているのもはほんの一部なのは重々承知しているが、映画版でも映画用でもないいつもの彼らが自分自信の考えを話してくれているから、きっと知っているように感じたのだ。

彼らはフィクションじゃない。20数年間生き、感じたもの見たもの聞いたもので構成されていて、ひとつながりの人生の上を歩いている。

インタビューの中では、Love Yourselfシリーズに続くMAP OF THE SOULの楽曲と共通する彼らの思想が時折感じられ、当たり前のことだが、このツアーもMOTSもひとつながりの彼らの人生の上にあるということが実感された。
(MOTSの楽曲は内省的な歌詞が多く、作詞に携わったメンバーの考えが反映されているのは当然といえば当然かもしれない)

大きな感動や衝撃はなかったけど、今までみてきた彼らが間違いなく彼らであったこと、私と同じように生きて何かを感じ何かを考えて私たちに話していること、個人的な小さな気づきみたいなものがたくさんあった映画であった。



映画を観ながらもう一つ実感したこと。

ユンギが好きだということ。

正直、彼を好きになるのは心外だった。彼らと出会った「Dynamite」のMVでの印象は全く無いし、顔を覚えようと躍起になった際も最後までホビとの見分けが付かずに難儀した。そんな目立たない人という第一印象から変化する経緯にドラマチックさなどなく、ただ知れば知るほどに彼の良さが私にしみわたり、その印象が塗り替えられてしまっていただけに過ぎない。

その気持ちをたしかなものにするように、この映画中無意識に、常に画面にいないか探したし、発した言葉はできるだけ覚えておきたくて何度も頭の中で繰り返した。

彼の魅力は好きなアーティスト程度で留めておけるようなそんな生半可なものではなかった。だが好きだと認めるにはそれ相応の覚悟が必要だった。だから私は冒頭腹を括って映画を観たのだ。

改めて言う。ミン・ユンギが好きだ。
この告白まがいのことはのちのち後悔するような気がするが、その時のことはその時考えよう。


今回は映画の中で印象的だったユンギのシーンを2つ挙げて終わりたいと思う。


・もそもそとご飯を食べるユンギ
彼は静かにちいさくもそもそ(もぐもぐよりもそもそが似合う)ご飯を食べる。
冗談半分に「BTSの中で一番ご飯をまずそうに食べます」と自称していたその背中は昔から猫背ぎみで丸まっているようだ。

http://www.vlive.tv/video/3724 


NYのホテルでの1人のご飯も、7人だけで初日の打ち上げをしていたときも、もそもそと黙々と。打ち上げで話したと思えば「深酒はしないよ」と一言のみ。
もう十分に強くてしたたかな大人だと知っていながらも何故か守りたくなる。ユンギは小さな生き物のようなかわいらしさをもった人だと思う。


・「ツアーとは日常」
インタビューの最後は「あなたにとってこのツアーとは」という質問で締めくくられる。その答えは7人7様で「毎晩何が出てくるか楽しみなご飯」と答えたジンにとても胸が熱くなった。
その質問にユンギは「日常です」と小さく笑って答える。

可愛い顔でかっこいいこと言っちゃって。

インタビュー用に予め考えていたのだろうかとも思ったが、AgustD名義のmixtape『Dー2』収録曲『사람 / People』の中にこういう歌詞がある。


너의 평범함은 되려 나의 특별함
君の平凡はかえって俺の特別

너의 특별함은 되려 나의 평범함
君の特別はかえって俺の平凡


この歌詞は誰と誰の間にも当てはまることだと思う。普通の定義が難しいように、性格も歩む人生も、人はそれぞれに他人とは異なり、全く同じ人はいないから。
人生において俺=ゆんぎの日常(平凡)と君=ファンの特別が重なる瞬間の1つがこのツアーだったのではないか。そしてそれは逆に、私の日常は彼にとって特別かもしれないということを意味する。

「ツアーは日常」という彼の言葉には、華やかさと少しの侘しさを見いだすこともできるかも知れない。だが、小さく笑う彼の表情からは不安や侘しさは感じられなかった。


このニューノーマルな生活を余儀なくされる中で、彼はこの日常を失った。喪失感を感じただろうか、ファンのことが心配でならなかっただろうか、それとも突然やってきた休暇だとポジティブに受け止めただろうか。

彼の心の内を知る術はないが、BTSは8月「Dynamite」をリリースした。ピカピカの光を放ち、塞ぎ込んだ私の心を照らしたその曲は私にとってまさに光であり、あたたかいお日さまみたいな優しさだった。

4月某日の新しいアルバムに関するミーティングで彼は「不特定多数の人に届くような直接的でない慰めの言葉が必要だと思う」と話していた。この曲がそれだったのかは分からないが、私にとって「Dynamite」はまさしくそれだった。そして私にとってのユンギも同じようにお日さまみたいにあたたかな優しさをもった人になった。

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点と点をつなげる。断片的に分かる彼のことを思い浮かべて線で結ぶ。その線で描いた星座が私にとっての彼になる。その線はもしかすると見当違いの星座を作っているのかもしれない。

どう描いても彼は優しくて可愛い。どう足掻いても私はユンギのことが好きだという事実は変えられそうにない。



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