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人権と感染症~感染症を理由としてヒトの自由を制限すること~新型コロナウイルス感染症その3

皆様こんにちは。

本記事執筆時点の日本では、新型コロナウイルス感染症の話題が沸騰しております。

その中で、感染症を理由に行動の自由が制限されている皆様がいらっしゃるとの報道を耳にしました。

さてこの「行動の自由の制限」。読者の皆様はどのように考えるでしょうか?

「国民皆を新しい感染症から守るために、リスクのある皆様の行動の

自由を制限するのは仕方がないのでは?」

そうですか。

では、読者の皆様が突然、「この部屋からでてはいけません!」と言われたらどうでしょうか?

「エ~っ!そんなの困る。。。」

「イヤです」

そうですよね!?

それでは本日は日本国憲法のお話しからひも解いてまいりましょう。

筆者も小学生の頃、憲法を学んだ記憶がほんのわずか残っているのですが、

憲法第13条および12条には下記条文があります。

第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ

上記の通り、日本国民(および日本に滞在される皆様)には、(行動の)自由が憲法で認められているのかと思います。

ただし、この自由はには但し書きがあります。
濫用してはならない
・常に公共の福祉のために利用する責任を負う
上記のような範囲で「自由」が認められているのでしょうね。

そして、今日本および世界が直面している、新型コロナウイルス感染症。

ここでも、国民皆に認められている「自由」とこの但し書きの「公共の福祉」の双方のバランスが大変重要となります。

そして、このバランスをうまく保つことは大変にムズカシイものなのです。

実は日本の感染症業界は、過去に重大な過ちを犯しました。

それは、ハンセン病の元患者の皆様およびその家族の皆様に対する誤った判断に基づくものでした。

厚生労働省の「ハンセン病に関する情報ページ」をぜひご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/index.html

上記厚生労働省のWEBSITEには以下の記載があります。以下引用いたします。

「令和元年(2019年)11月15日に、議員立法により『ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律(令和元年法律第55号。以下「法」という。)』が成立し、同年11月22日に公布・施行されました。
○ 法の前文では、ハンセン病の隔離政策の下、ハンセン病元患者家族等が、偏見と差別の中で、ハンセン病元患者との間で望んでいた家族関係を形成することが困難になる等長年にわたり多大の苦痛と苦難を強いられてきたにもかかわらず、その問題の重大性が認識されず、これに対する取組がなされてこなかった、その悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびする旨が述べられています。」

ハンセン病元患者の皆様への誤った感染症学的判断による偏見・差別の歴史。これが、日本の感染症業界最大の負の歴史であると筆者は考えます。

また、他にも感染症に関係した人々の恐怖・不安から、その感染症の患者の皆様およびご家族が苦しい思いをされたであろう感染症が多数ありました。

・結核
・HIV
・ウイルス肝炎(HBV,HCVなど)
・MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
・MRSA以外の様々な薬剤耐性菌
 ・バンコマイシン耐性腸球菌:VRE
 ・多剤耐性アシネトバクター属菌:MDRA
 ・多剤耐性緑膿菌:MDRP
 ・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌:CRE

上記微生物・薬剤耐性菌の中には、すでに治療法が確立されたものも複数あります。
それでも、上記のような、微生物・薬剤耐性菌が検出された患者およびご家族の皆様は、今でも大変困難な状況に置かれる場合が少なくないのではないか?と筆者は考えております。

そして、2019年に出現した新型コロナウイルス感染症

私達はこの「過去の感染症業界の負の歴史」から学んだことを、この新たな感染症~新型コロナウイルス感染症の患者そしてご家族の皆様にどのように活かしていけるでしょうか?

筆者の考えは、「感染症学的な根拠に基づいた感染症患者の皆様の行動制限となっているか?を常に見直すこと」が、モンダイ解決のきっかけとなるのではないか?と考えております。

ここで、重要なことは「時空を超えて正しいことは存在しない」という基本事項を確認しておくこととなります。

ですから、今この瞬間に「正しい」とされている感染症患者の皆様への「行動制限」も、当然のことながら未来には「適切ではないもの」となっている可能性があるのです。

ですから、日々増え続ける新型コロナウイルス感染症に関する新しい情報に基づいて、患者の皆様に対する対応も常に改善し続けていく必要があるのですね。


まとめ

憲法で保証された「行動の自由」

「公共の福祉」を理由にこれを制限することは大変慎重に行う必要がある。

そして、感染症を理由に「行動の制限」≒「人権制限」を行う場合には、感染症学的な根拠・妥当性があることが重要である。

新しい感染症に向き合う際には、初期にはその感染症に対する情報・知識の不足から、「公共の福祉」を優先した対応となることもあるかもしれないが、日々増え続ける情報・知識を元に、感染症患者の皆様に対する対応は常に見直し続けることが大切である。

それでは最後に「新型コロナウイルス感染症」のお話に戻りましょうか。

今現在(本記事執筆時点2020年2月12日)行われている新型コロナウイルス感染症の患者の皆様に行われている様々な対策そして行動の制限

不安や恐怖を理由とした過剰な行動制限ではないか?

私も現在の感染症業界に携わる者の一人です。過去の反省に基づいて日々考え続けたいと思います。

読者の皆様はどのように考えるでしょうか?

ぜひ周囲の皆様といろいろと話し合ってみてください。

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