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【放送後記】#04 変革の時代の法律学 ―武蔵野大学法律学科の「大教室双方向授業」とは【ゲスト:池田眞朗先生(法律学・民法)】

はじめての有明キャンパス収録

 空と海とビルと緑の映える有明キャンパス、今回のイドバタコウギは機材一式を大移動させての収録となりました。武蔵野大学には自然豊かで横に広い武蔵野キャンパスと、まだ新しい校舎・施設がまぶしく縦に長い有明キャンパスがあります。
 今回は有明キャンパスの9階(!?)にて、武蔵野大学院法学研究科長の池田眞朗先生にご専門の民法と「新世代法学部」についてお話を伺いました。私たちの人生にとっても身近な話題です、ご覧あれ!

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メロスの「意志」と法律の「意思」

 今回は池田先生にイニシアチブ(主導権)をお渡しした番組構成となっていますが、実はパーソナリティの学生がご提案した幻の第一案がありました。
 題して「太宰治『走れメロス』に学ぶ民法」。
 しかし、これは民法を説明するにあたってとても不適切な組み合わせだと池田先生からご指摘をいただきました。どう不適切かというと(ここからちょっと文学のお話が入ってきますが)、「走れメロス」の主題は一般的には「友情」だと言われています(いやセリヌンティウス一瞬裏切られかけてるやんとか、メロスの弱さや自己矛盾説はどこ行ったんやとか、それはちょっと置いといて…)。自分の身代わりとして刑場に磔にしてきた友・セリヌンティウスを救うべくメロスは走ります。このときメロスが心に持っているのは、友を救うのだという「意志」です。
 一方、法律におけるイシは「意思」であって、志の強弱は問わず、相手方と一定の法律関係を作ろうとする「意思表示」が問題になるのだそうです。
 この「意志」と「意思」の違いがあるために「走れメロス」を題材にするとかえって誤解を招く、と池田先生からご指摘があったということですね。


 ところで、なぜパーソナリティの取り上げた題材が「走れメロス」かというと、多くの人が義務教育で触れる作品であるため、すでにある程度の共通認識があるからです。
 それから、我々の番組コンセプトに「新感覚”雑談型”ラジオ」というのがあります。例えば、大学の休み時間に先生と雑談しているとき、授業より近い距離感や砕けた雰囲気のおかげで学問的な話題で信じられないくらい盛り上がったり、授業ではニッチ過ぎて立ち入らない領域だけどものすごく興味深いお話を聞けたりすることがあります。これって、その話題に詳しい人のご高説を一方的に聞いているだけじゃ味わえないおもしろさだと思うし、むしろこちらからグイグイ質問攻めにしちゃったりするものです。そういう種類の学問的おもしろさを専門家と一緒に発信したい、というのが番組のいちコンセプトなのです。
 そういう意味で、パーソナリティが「はー」とか「ほえー」とか言ってるだけの教則ビデオになっちゃいけない。だがしかし、目の前にはカメラとマイク、醜態をさらしたらどうしよう。そんな状態でドが付くほどの専門家のお話に喰らいついていかなきゃならない。命綱を結んでおかなきゃ…! ということで、企画立案の段階から元々自分が知識や考えを持っている題材(とりわけ所属学部の内容)に引き付けようとしているわけです。ゲストの先生の専門分野とパーソナリティの学生の専攻を両端に置いた数直線のどこに企画を持ってくるか、と言えば分かりやすいでしょうか。


 ただし今回は上記のようなわけで、法学部で池田先生が行われている「大教室双方向授業」を体験させていただくという、言わば池田先生の胸をお借りした内容になりました。
 ちなみに、もし池田先生が文学部の学生を相手に法律の授業をするなら「メロス」案のような導入も考えられると仰っていました。…その授業受けてみたい!

番組の要、リサーチ~『プレステップ法学 第5版』~

 先で番組のコンセプトについて少し触れたので、もうひとつ私たち学生が番組を作るうえで大切にしていることをお伝えします。それは、ゲストの先生についてよく知ること。ご専門分野の内容はもちろん、ゲストの先生はその分野に対してどのような視点で研究をされているのか、さらにはお人柄のようなパーソナルな部分まで、ご著書や論文をひっくり返し、インターネットの海を泳ぎ、番組監修の土屋忍先生からお話を伺い、よくリサーチをします。ここにいちばん重きを置いているといっても過言ではないかもしれません。とはいえ、実際にお会いして打ち合わせをしたり収録をしたりして初めて得られる気づきや学びがたくさんあります。番組でそれをお届けできればいいなと思っています。
 さて、今回の重たる参考文献は池田先生編『プレステップ法学 第5版』です。実はこれ、池田先生ご本人からご提示いただいたいわゆる教科書です。私じゃないほうのパーソナリティは第4版で勉強していたのですが、法改正前の発行なのでダメなのだそう。皆さまも、手に取る際は版にお気をつけください!

『プレステップ法学 第5版』は法律学科1年生の教科書・入学前教育のテキストだそうで、法律の授業を受けたことのない中の人でも理解しながら読み進めることができました。
 内容は、民法、刑法、憲法、会社法、労働法、国際法などを14章に分けて解説したもの。視聴者アンケートの御礼品(先着1名様)となっていますので、そちらへのご協力もぜひお願いいたします。

2024年2月3日(土)に最終講義

 池田先生は今年度でご退職とのことで、2024年2月3日(土)14:00~15:30有明キャンパスにて最終講義を行われます。学外の方もご参加いただけますので、大学からの詳細情報をお待ちください。

池田先生、イドバタコウギはいかがでしたか?

池田先生に収録後の感想を伺いました。

池田先生:
 今日は、私の方からだいぶいろいろ注文も、それから事前の質問もさせていただきました。この企画が全学的にどういうものなのか、そしてそれと(インターネットラジオ研究会の)皆さんが考えていることがどういうところでマッチしていて、あるいはどういうところでずれているのかというのをまず確認させていただこうというところから始めて、ある程度のイニシアチブをこちらにいただいて今日に至ったわけです。先ほどもちょっと本編で申し上げましたけれども、かなり皆さん一生懸命こちらの要請に応えて急遽の勉強もしてくださいました。
 それからこの収録自体は、もうほかの先生とおやりになっているんですよね。だからそういう意味では非常にスムーズに作業をされているなと思いました。そして、今回私は、この企画が全学的なものなのだから、武蔵野だけでやるのではなくて、有明に場所を移してもやっていただきたいという気持ちがありまして、ちょっとそういう意味ではご負担をおかけしたかと思うんだけれども、こうやって武蔵野でも有明でもできるという実績を作っていただけたことがとてもよかったと思いますし、最終的には私としては学生諸君のこうやっておやりになるイベントというか、お仕事としては非常に頑張ってやってくださったなという思いで、感謝をしたいと思います。だから、森貞さん、伊藤さんをはじめ、関係している学生諸君に拍手を送りたいと思います。どうもお疲れ様でした。ありがとうございました。

おわりに

今回のイドバタコウギはいかがでしょうか?
中の人にとっては、初めての有明キャンパス収録や番組のコンセプトについて言語化する良い機会となりました。
ぜひチャンネル登録のうえ、次回の更新をお待ちください!
各種SNSのフォロー、視聴者アンケートへのご協力もどうぞよろしくお願いいたします!(最近TikTokも始めました~、そちらもぜひ!)

文責:森貞 茜


番組クレジット(収録当時)/SNS情報

#04 変革の時代の法律学 ―武蔵野大学法律学科の「大教室双方向授業」とは【ゲスト:池田眞朗先生(法律学・民法)】
ゲスト:池田 眞朗 先生(武蔵野大学法学部法律学科 教授、法学研究科長、武蔵野大学法学研究所長)
企画/パーソナリティ:伊藤 遥香・森貞 茜(日本文学文化学科4年)
撮影:江端 進一郎・大石 歩果・長田 千弘(日本文学文化学科4年)
   内田 恵美莉・小瀬 ゆかり(日本文学文化学科3年)
編集:江端 進一郎・伊藤 遥香・森貞 茜(日本文学文化学科4年)
協力:横山 裕貴(映像制作/PA)
ショート動画:内田 恵美莉・小瀬 ゆかり・堀 羽美(日本文学文化学科3年)
       長田 千弘(日本文学文化学科4年)
監修:土屋 忍(日本文学文化学科 教授)
参考文献:
 池田眞朗編『プレステップ法学 第5版』(2009第1版、2023第5版、弘文堂)
 池田眞朗、宮島司、安冨潔、三上威彦、三木浩一、小山剛、北澤安紀『法学六法’23』(信山社)
 池田眞朗『民法はおもしろい』(2012、講談社)
 池田眞朗「武蔵野大学前法学部長『有明日記』」武蔵野大学https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/law/guide/ariakediary_law.html(2023/08/01閲覧)
収録日:2023年8月5日(肩書・学年は収録当時のもの)
提供:武蔵野大学

武蔵野大学発インターネットラジオ番組「イドバタコウギ」
YouTube:https://www.youtube.com/@idobatakougi_mu 
Spotify:https://open.spotify.com/show/3EmRBUFvnClnzpPHYDrbT6
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Ⓒ武蔵野大学インターネットラジオ研究会

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