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アジア遠隔医療開発センター(TEMDEC) ODAに期待されるハード・ソフト両面の支援

治療薬開発と遠隔医療の今

福岡拠点にアジアの人材を育成
 新薬開発に加え、今後の感染症対策において注目されるのが、遠隔医療だ。開発途上国でも、新型コロナの流行以前からその取り組みは徐々に進められてきた。遠隔医療は、大きく2つに分けられる。一つは医師と患者をインターネットでつなぎ、診療を行うものだ。タイでは2017年、オンライン上で病院の受診予約から診察まで行える環境を整える方針を政府が打ち出した。

 もう一つは医療関係者同士がインターネットを介して患者の検査結果などを共有し、間接的に疾病を診断するものだ。ブラジルはこの遠隔医療の普及を国家政策として掲げている。同国では都市部に医療施設が集中しており、地方部の医療アクセスは低い。そこで、同国は10年以上前から研究用のネットワークを多数の病院に接続して、レントゲンやX線検査の画像を共有したり、地方部の医師がオンラインで専門医の意見を仰いだりできるようにしている。このほか、眼科医不足に悩まされていたインド東部のトリプラ州では、07年より州の保健家族福祉局の主導の下、訓練を受けた村の検眼士が村民の目を撮影し、その画像を都市部の専門医に転送して診断するサービスを展開している。

 こうした途上国における医療関係者間の遠隔医療を、日本の知見を活用して促進しているのが、福岡県の九州大学病院内にあるアジア遠隔医療開発センター(TEMDEC)だ。福岡市では2002年、韓国の釜山市との間で高速の学術用ネット回線が開通され、この回線を用いて韓国と遠隔教育や文化交流、遠隔医療の取り組みを進める産官学連携の動きが始まった。これをさらに、アジア・太平洋地域中心に広げていこうと0 8 年に設立されたのがTEMDECだ。

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国際開発ジャーナル6月号での特集「コロナ危機が問う国際協力」で掲載した新型コロナ関連記事を抜粋したマガジンです。 保健医療を中心に国際協力…

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