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「祐の心、祐の喜び」を肝に銘じ人類の幸福に貢献【創立60周年を迎えた三祐コンサルタンツ】

60年の経験と技術を生かし激変する世界に挑戦
農業と水資源開発などで豊かな経験と技術力を持つ(株)三祐コンサルタンツが創立60 周年を迎えた。この間培ってきた企業理念は「祐の心、祐の喜び」。久野格彦社長にこの60 年の歩みとこれからを語ってもらった。


(株)三祐コンサルタンツ 代表取締役社長 久野 格彦氏


原点は愛知用水事業

 この度、創立60 周年を無事迎えられたことにまず、感謝申し上げたいと
思います。会社の寿命30 年と一昔前に言われていましたが、当社は幸いにして2 サイクルを迎えたことになります。この間、決して順風満帆であったわけではありません。数多くの方々に支えられ、時に叱咤激励を受けながら、何とか乗り越えてくることができました。誠にありがとうございました。
 少し時代をさかのぼりますが、当社の原点は愛知用水事業にあります。当社を創立した久野庄太郎は、戦後間もない1947 年に発生した大干ばつを機に、木曽川の水を知多半島に引くことを、盟友である浜島辰雄先生とともに計画します。戦後の混乱と食糧難、干ばつなど自然災害に対して脆弱な農業
と生活がその背景にはありました。愛知用水は1961 年9 月10 日に通水が開始され、以後は農業、工業、都市用水を供給し“地域発展の礎”となります。
 当社が誕生したのは1962 年。高度経済成長の真っただ中でした。前年から始まった所得倍増計画は「東洋の奇跡」といわれた経済成長の波に乗り、計画の10 年を待たずして実現する実にエネルギーに満ちた時代でした。農業では農業基本法(1961 年)、改正土地改良法(1964 年)に基づき、農業の機械化、経営規模拡大、労働生産性の向上が進められるとともに、生産基盤の整備・強化が進められました。当社は、こうした背景が追い風となり、愛知用水建設に携わった技術者を母体に、国内外における農業基盤整備、水資源開発に取り組んできました。海外ではイランのタレガン水資源開発が国際協力の嚆こうし矢となりました。
 当時、イランのパーレビ国王が来日した際に、日本の田園風景の美しさと建設中だった愛知用水を見て感激し、日本に灌漑開発の協力を求めたのが契機となっています。愛知用水で培った技術を生かしイランの農業振興に貢献しよう、という想いが創立当初のエネルギーとなり海外への技術協力が始まりました。
 1962 年はまた、JICA の前身である海外技術協力事業団(OTCA)が設立された年です。つまり、JICA の技術協力とともに歩んできた60 年でもあります。当初は農業基盤整備や水資源開発が中心でしたが、時代とともに開発課題も変化し、農村開発や参加型開発、そして近年ではFVC や栄養改善など、マルチセクター的な取り組みへと変化するにつれ、当社社員の顔ぶれも多様化して参りました。創業当初は農業土木の技術者が当社社員の大多数を占めていましたが、創立30 周年を過ぎたあたりから、徐々に農業や経済など所謂ソフト部門の人材が増えて参りました。さらに近年は、海外におけるコンサルティング・ニーズに対応する形で、社会、環境、地方自治、組織強化、栄養などの分野を得意とする専門家も在籍しており、それに伴い女性コンサルタントの人数も増えて参りました。海外事業本部の中には、部員11 名中8 名が女性の部署もあります。今後も、食と水に関する課題を中心に据えつつ、関連分野に柔軟に対応していきたいと考えています。


デジタル革命で激変する世界

 コロナによって世界は閉ざされ、他方では開かれたと言えるでしょう。世界各地で採用された移動制限やロックダウン、在宅勤務、リモートワーク、巣ごもり需要など、感染を防ぐために国・地域・家庭の各レベルで閉鎖が起きる一方で、デジタル・トランス・フォーメーション(DX)により、これほど世界が近くなったことはなかったでしょう。E コマースによる取引、UberEats などによる食事の宅配など消費
の変化は一気に加速しました。仕事の世界では、国内に限らず世界各地の関係者と常時オンラインで結ばれ、朝から晩まで会議が続くようになりました。デジタル革命が一気に進み、コンサルタントの仕事も大きく変わらざるを得なくなっています。
 例えば、農業の技術普及はこれまで普及員の技術力に加えて、予算と人員不足が大きな制約要因となってきましたが、SNS を通じた情報共有や普及員とのコミュニケーションが可能になるとともに、スマートフォンを通じて政府のサイトに登録することで、そのサービスへのアクセスが向上するなど、物理的な限界を超えてつながることが可能になっています。こうしたDX の利点を生かしつつ、取りこぼされた存在がないよう配慮することも今後の協力の要諦になるでしょう。


弛まぬ研鑽で世界の人を幸福に

 当社の企業理念は「祐たすけの心、祐の喜び」です。この言葉は、技術をもって世界の人々の幸福に貢献する事が社の使命である事を示しています。また、この企業理念を具現化するためのミッション・ステートメント(事業目的)として「安全な水・食料・エネルギーの創出に貢献し、社会・人類の発展に寄与する」ことを掲げています。これに応えられるよう、技術の研鑽を今後も続けて参ります。
 愛知用水の建設を推進するに当たり、創立者の久野庄太郎は、①民衆の啓発に重きを置き、②私利私欲をはなれた清潔な運動を心掛け、③運動費用は自弁を建前とし篤志家の協力を得ることを基本姿勢として出発しました。その上で、地域住民・農家を説得し、地方行政に説き、やがて当時の総理大臣を動かし、世界銀行の融資を受けることで実現に至ります。当社の原点にあるこうした一連の運動は、参加型開発のモデルケースとして、今なお色あせないものがありますが、その根底にあるのは「祐の心、祐の喜び」であることを今後も肝に銘じ、堅持します。
 人類が今日、直面する課題の中でも、地球温暖化は世代を超えた取り組みが必要な大問題で、早急に対応していく必要があります。当社が得意としてきた農業と水資源に係る技術はますます求められており、活躍できるフィールドはさらに広がっています。60 年の経験と技術を踏まえ、さらなる技術の研鑽を積んで、人類の課題に応えて参りたいと思います。


本記事掲載誌のご紹介

本記事は国際開発ジャーナル2022年6月号に掲載されています。
(電子版はこちらから)


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