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環境問題に挑み人の「命」を救うライフワークとして途上国支援の仕事は絶対やめない【設立15周年を迎えたカーボンフリーコンサルティング(株)】

環境経営コンサルティングのリーディング・カンパニーとして地歩を固めつつあるカーボンフリーコンサルティング(CFC)が今年9月、設立15 周年を迎えた。近年は中小企業の海外展開支援でも実績を積み上げている。業界の“ 異端児”、中西武志代表取締役に「これまでの15 年とこれから」を聞いた。
(聞き手:本誌顧問/企画部長・和泉 隆一)

カーボンフリーコンサルティング(株)代表取締役 中西武志氏



「環境」と「人道支援」

─― 中西代表取締役はCFC を立ち上げられる前、金融機関で排出権取引の仕事を経験されています。その辺が出発点ですか。
 自分の人生を半分に分けたら、前半は自分のため、後半は社会のために働きたいという強い思いがあった。そこでかねてより関心を持っていた開発途上国の「環境」と「人道支援」の両方を扱っている会社を探したが、1 社も見つからなかった。要するに自分で立ち上げるしかなかった、というのが
背景だ。
 当初は「環境」か「人道支援」のどちらを軸にするかで随分悩んだが、国内外の環境問題への取り組みを通じ、社会課題が解決できるということが徐々に分かってきた。環境問題は、例えば廃棄物対策であったり、気候変動と防災の問題、生存のための水の確保、さらには食糧の問題にも絡んでくる。こうした課題への取り組みが結果的に人道支援につながっているのだ。環境専門のコンサルタントが、開発コンサルティングの領域に入っていったのはまさに必然であり、CFC の目標に向かうためにはその領域に入らざるを得なかったとも言える。

─― 設立されたのは15 年前の9月。営業の走り出しはどのような状況でしたか。
 斬新なホームページを作ったものの、最初の半年は電話1本鳴らない、メール1通来ないという状態だった。それこそ“電話が壊れているんじゃないか”と思うぐらい……。営業のやり方もわからなかった。私は自分自身に“それまでのネットワークや人脈は使わない”という縛りをかけていたこともあり、最初はとにかく動きがなかった。
 CFC として初めていただいた仕事は2008 年7月の北海道洞爺湖サミット関連の業務だ。発注元は内閣府。主要先進国の首脳が集まるような大規模な国際会議になると、CO2がものすごく出る。環境配慮をアピールする狙いもあったと思うが、植林などカーボンオフセットをやりたいという依頼だった。幸い、その取り組みはNHK などテレビ番組でも報道され、そこから少しずつ仕事の依頼が入ってきた。
 そして、2012 年から国際協力機構(JICA)の中小企業海外展開支援事業(当時)が始まる。当社にとっては成長の“起爆剤”となった事業と捉えており、その制度の活用を通し事業領域の拡大が可能になった。


JICA中小企業支援実績は47件

─― JICA の中小企業・SDGs ビジネス支援事業ではトップクラスの採択実績を上げられている。採択案件は何件になりますか
 2012 年度の第1 回公示分から採択をいただいており、これまで47 件の実績を積み上げている。以来、業務実施体制を国内と海外に分け、私は一貫して海外に注力している。コロナ前までは1年の半分は海外という生活が続いた。
 採択をいただいた案件の半分以上は海外展開に向け、順調に推移している。当社は社員10 数人の小さな会社であり、相談に来られる中小企業については“本気で進出しようとしているのか”、その姿勢と考え方を厳しく見極め、選ばさせていただいている。あくまでも“進出が前提”という会社をシビアに選んでいけば結果は自ずと付いてくる。分野的には環境という軸はぶらさず、そこに包含される防災、保健・医療、衛生・栄養、気候変動に強い食料開発など多様だ。医療分野では、例えば緊急性の高い遠隔医療システムなどを手掛ける中小企業を支援している。

─― 調査業務などJICA 業務実施分野にも挑戦されたと思います。手応えはどうですか。
 参入の障壁は非常に高かった。特に実績主義の壁は厚く、ほとんど経験のない新参者がたやすく入れる世界ではなかった。業界のいろいろな方にアドバイスを求めると、誰もが大手の下に入り経験を積んで、と言われる。ところが、大手の下に入る機会さえ得るのが難しかった。結局、中小企業支援スキーム以外、私たちは手を出すことが出来なかった。
 政府開発援助(ODA)では外務省枠の草の根支援や大使館枠の業務を受注した。

─― 中小企業・SDGs ビジネス支援事業の制度が抜本的に見直され、改編されました。どう対応されますか。
当社のような小さなコンサルタントには高いハードルがあるが、途上国支援は私たちのライフワークだ。たとえJICA に「NO」と言われても続けていく。今回の公示では選ばれなかったが、また生き抜いていく術を考える。
 一連の海外展開支援を通じ、当社は信用金庫を含めた地域金融機関7行と連携覚書を結んでいるほか、自治体連携も深まっている。こうしたネットワークも十分に生かしていきたいと考えている。


“自分一人の命で何人救えるか”

─― CFC は環境コンサルタントとして地歩を固めつつありますが、この15 年の歩みを踏まえ、どんな会社を目指していきますか。
 環境という軸は絶対にぶらさない。具体的な内容を話せる段階にはないが、一段スケールの大きいプロジェクトを水面下で仕掛けている。例えばエネルギー問題については、再生可能エネルギーを主体とした発電事業者に近い立場で仕事をしていくことになると思う。大手と組んでいくことになるが、環境の専門家が行う発電事業ということで採算性にも徹底的にこだわっていきたい。
 事業領域の拡大計画に伴い、社員についても拡充を図り、現在の12 人体制を数年以内には50 人くらいまで増やしていく方向だ。ただ、収益の柱がないと人材の拡充は難しい。今後の業務展開としては、エネルギー分野に注力し、環境影響評価、環境調査などの領域を大幅に拡大していきたいと考え
ており、それぞれの専門性を重視し人材を確保していきたい。

─― CFC も第2フェーズに入ったと思います。
 “勝負のステージ”に入ったということだ。とにかくこの1年は挑戦者の気持ちで勝負をかけていきたいと思いを新たにしている。
 中小企業の海外展開支援については制度が大幅に改編され、弱小コンサルタントは不利と言われる中、大手のビジネスコンサルタントなどに声掛けし、JV の編成に努め環境分野で1本プロポーザルを出した。結果は、先ほども触れたように採択には至らなかった。次回を目指していく。
 CFC はこれからも環境にこだわり続けるが、私は環境問題の根っこは「人命」にあると思っている。水が減っても食料が減っても人の命にかかわる。その時、自分一人の命を使って何人の命を救えるか。今もそこに尽きることのない興味がある。


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本記事は「国際開発ジャーナル2022年9月号」に掲載されています
(電子版はこちらから)



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