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【Trend of JICA】国際キャリア総合情報サイト「PARTNER」が大幅リニューアル

登録団体の求人応募も直接可能に
国際協力機構(JICA)が提供する国際キャリア総合情報サイト
「PARTNER」が3月中旬、2003年開設以来の大幅リニューアルを実施する。従来、同サイトから直接ウェブ応募ができたのはJICA関連の求人や研修等に限られていたが、今後は登録団体も利用できるようになる。また、若い世代への訴求を強め、国際協力を身近に感じてもらうことも重視する。リニューアルの背景や具体的な内容について、JICA人事部開発協力人材室の宮川朋子副室長に聞いた。

宮川朋子副室長

2003年開設以来の大きな見直し
 国際キャリア総合情報サイト「PARTNER」は JICAが 2003 年 10 月に開設した。2002 年 3 月にまとめられた「第 2 次 ODA 改革懇談会」の最終報告で、国内外での開発事業に携わる人材の発掘・育成と、有効活用するためのシステム構築の必要性が盛り込まれたことがきっかけだった。当初は JICA 関連の情報の割合が高かったが、開発コンサルティング企業や国際協力NGO などの活用も広がり、国際協力関連の仕事やイベントなどの情報をみつけるサイトとして定着してきた。
 現在は、国際機関、政府機関・地方自治体、大学、民間企業などを含め、約 2,400 団体が国際協力の関連情報を掲載している。個人登録者数は約8万人で、そのうち専門人材である国際協力人材登録者数は約 2 万8,000 人(2023 年 12 月末現在)。一般の人材会社サイトの登録者と比較して、海外経験があったり、特殊な言語に長け国際協力の業務・キャリアに対する経験や親和性を持っていたり、社会貢献への意識の高い人材が多く、NGO/NPO では「PARTNER」経由の採用が最も多いとの調査結果が出ている(「NGO センサス 2019 調査報告書」より)。これらのことから登録団体が必要とする人材の効率的な採用に寄与していると考えている。
 近年、コロナ禍を経て世界規模の課題が一段と多様化・複雑化する一方、SDGs への注目が高まるなど、国際協力を取り巻く環境が大きく変化している。どの分野でも人材不足、人手不足が課題となる中、国際協力の分野でも、より多様な人材の中長期的な確保が求められる。これまでもサイトの改良は随時重ねてきたが、こうした背景から、今回「PARTNER」の刷新を行うことになった。

リニューアル後の「PARTNER」のイメージ

登録団体には応募機能や団体紹介機能を拡充
 新サイトは既存の有用なコンテンツを整理。サイトを訪問した人の属性や目的に応じ、知りたい情報にアクセスしやすいサイト構成にすることで、回遊性を高めることを図った。
 また、刷新後の個人登録を 4 種の会員種別に分けた。具体的には、
①メルマガ会員:“ 国際協力に関心がある人 ” 向け。メールサービス受信等が可能。
②参加会員:①に加え、イベント・セミナーなどへのウェブ応募、 セミナー等の動画視聴が可能。
③求職会員:“ 国際協力の経験や専門性があり、開発途上国での仕事を具体的に探している人 ” 向け。①②に加え、登録団体から求人・採用のオファーメールを受け取ることが可能。
④応募会員:①②③に加え、求人、能力強化研修へのウェブ応募、キャリア相談が可能。
 登録団体に向けては、毎年のアンケート結果なども踏まえて機能を追加した。掲載した求人情報に対しサイトからすぐに応募ができるのは、従来は JICA 関連の募集に限られていたが、このウェブ応募機能が JICA以外の登録団体でも使用できるようになる。これは求人だけではなく、イベントの参加申込にも活用することができる。
 各団体の掲載情報の見やすさも改善、SNS への展開などもできるようにし、登録団体と個人会員をより強く結び付ける。PARTNER のサイト自体の検索エンジン最適化(SEO)対策にも力を入れ、団体の掲載情報も検索結果でより上位に表示されるサイトにしていく計画だ。多文化共生に取り組む自治体や、途上国で社会課題のビジネスを進める企業にも PARTNER をより積極的に活用してほしい。

若年層へリアルで身近な情報を発信
 国際協力は高いスキルを持っている人、意識が高い人がやるものだというイメージを持たれ、参加が敬遠されることもある。そこで、現地での活動だけではなく、日本国内で参加できるイベントやリモートで取り組める仕事など、国際協力の「大きな一歩」と「身近な一歩」の両方の情報を発信する。これにより、将来、国際協力や SDGs に関連する活動に携わりたいと思う人を増やしていきたい。
 その一環として、新たに「学生から始められる国際協力のかたち」というサイトの入り口を用意し、これまでも掲載されていた学生が参加できるイベントやセミナー、インターンシップ、スタディツアーの情報、国際協力に関する進路や職業選択に関するコラムなどを、よりアクセスしやすい形で提供する。他にも、国際協力に従事している人の生活を紹介するコンテンツや、イメージを覆すような「ちょっと変わった国際協力」など、国際協力を身近に感じられるコンテンツも追加していく。姉妹サイトとして運用してきた中高生のための国際協力サイト「ROOKIES」も PARTNER の 1コーナーとして統合し、一体として将来世代への発信を考えていく。


【Interview】ビジョンに共感してくれる人材とつながるサイト

ソーシャルマッチ株式会社
原畑 実央氏

ソーシャルマッチ(株)代表取締役 原畑実央氏

 2019 年に起業。SDGs に取り組む東南アジアの社会起業家を、パートナーを探している日本企業とつなぐ「SDGsビジネスマッチング事業」と、日本の学生にインターンシップの機会などを提供する「SDGs教育事業」を展開している。
 自分自身、大学生の頃から東南アジアや社会課題の解決に関心があり、当時は個人会員として「PARTNER」を活用し、掲載されている情報を見てイベントやセミナーに参加していた。起業後は団体会員として利用し、求人・採用活動や、SDGs に関するイベントなどの案内・告知に活用している。求人・採用活動では、カジュアルな会社説明会の告知、求人情報の掲載、オファーメールの送付など、機能をフル活用している。
 オファーメールは、プロフィールなどを検索し、自社の仕事に合うのではと思った人がいれば、「まずはカジュアル面談をしませんか」と連絡するという使い方をしている。こうしたメールを送ると、PARTNER の場合は 10 通から20 通に1人くらい返信があるので、かなり反応がいいと感じる。
 PARTNER を通じて集まる人材は国際協力に興味関心を持ち、当社のビジョンに共感した上で、主体性を持って参加や応募する人が多く、他の人材紹介サイトや英語人材のサイトなどと比べても、求める人材とマッチする傾向が強い。応募者に占める PARTNER 経由の割合も3割を超えていると感じられ、これもかなり高い。
 人材紹介サイトなどでは、無料のサービスだとなかなか効果につながらず、効果を上げようとすると費用がかかる。これはスタートアップ企業や事業の立ち上げ期、あるいはNGO にとっては課題だが、PARTNER は無料でフルサービスが利用できるのも大きい。
 今回のサイトリニューアルで、国際協力を身近に感じられるコンテンツが増え、より幅広い人たちへの訴求を強めるということにとても魅力を感じている。見やすい団体情報ページや SNS でのシェアボタンが新たに追加されることも有用だ。今後も今まで以上に積極的に活用し、より多様な数多くの人材とのつながるきっかけとなってくれることを期待したい。


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本記事は国際開発ジャーナル2024年3月号に掲載されています
(電子版はこちらから)


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