たまねぎみたいな生き方

 先日、私は職場でめちゃくちゃに罵倒された。要約すると私の態度が気に入らない、生意気な口をきくな、口答えするな、私のほうがここに長く務めているんだぞ。というような内容であった。これにはもう心底驚いた。
 幸いにもすぐ近くにいた同僚たちが「あなたは全然悪くなかった」と証言してくれたのであまり落ち込まずに済んでいるのだが、人並みに落ち込みはした。

 さて私は一人暮らしなので自炊をしているのだが、気を抜くとすぐにさぼってしまう。今日も三週間前くらいに買ったたまねぎを使い切っていないことを思い出し、ろくに開けていなかった野菜室を気まずい思いで開けた。
 たまねぎは全部で八個あったのだが、すべてに芽が出ていて、ひとつも腐っていなかった。
 私はそれに、とても感動した。

 たまねぎは私が使わない三週間もの間、冷蔵庫で少しも腐らずにあろうことか芽まで出して、生命力を溢れさせていたのだ。
 すごい。
 かっこいい。
 おまけにたまねぎは美味しいし、だいたいいつでも安価でスーパーに並んでいる。どんな料理にも対応してくれるし栄養価もあるし、貧困層あたりにいる私には救世主である。
 よくわからない罵倒をされて落ち込んでいたが、たまねぎみたいに生きれたらとてもいいのではないだろうかと唐突に考えた。こんなにたくましく、美味しく、安価で素敵な食べ物みたいになれたらどんなにいいだろう。
 よくわからないことを書いている自覚は十分にあるのだが、たまねぎという野菜に大変救われた気持ちになったので、あの美味しいたまねぎを育ててくれた農家の方と、スーパーに並んで私が家に持ち帰って保存するまで関わっているだろう多くの人に感謝したい。