「チャイムに飛び上がる私」につく学名

 先日、私は家のチャイムが鳴ったことに飛び上がるほど驚いた。
 音量はおそらく一般的なものだし、特殊な音楽が流れるわけでもない。ただの「ピンポーン」だ。だが、自分ひとりしかいない家の中でぼうっとスマートフォンを眺めたいたら(当然だが)前触れ無く鳴ったので、私は体全部がびくんと跳ねるくらい驚いた。これは誇張でもなんでもない。マジの話しなのだ。
 ネット通話をするときも、相手側で何か物音が不意にすると心臓が止まるのではと思うほどびっくりする。友人に話すと「きみは大げさだな」と笑うのだが、私にとってはあんまり笑い事ではなかったりする。

 さて、ハイリー・センシティブ・パーソン(通称HSP)というものを私はつい最近知った。
 wikipediaを参照すると特徴のひとつに「大きな音、太陽、眩しい光、蛍光灯、強い匂い、小さい音が大きく聞こえる、弱い匂いが強く感じるような刺激にも弱い。視覚過敏や聴覚過敏など五感からも与えられるものを持ち合わせることがある。」が挙げられていた。
 他にも記載されている特徴がまあたくさんあるのだが、ことごとく自分に当てはまっているので私は呆然とした。
 それは自分が他者とは違う、特別感とか、そういうものではなかった。
 「えっ、みんなそう感じないの!?」という純粋な驚きだったのだ。

 自分の考えと人の考えが違うことは当たり前のことで、私の視界と他人の視界は別物だ。そういうことはもちろんわかる。
 我が家では人参もジャガイモも皮を剥かないで調理するのだが、多くの料理レシピで当然のように「皮を剥いてから調理しましょう」と書かれているのを発見して「え!?」と戸惑うのと同じようなもの。室内電気の一番弱い明かりを「暗め」とか「ひとつ」とか「オレンジ」とか、たくさんの言い方があると知るのと同じようなもの。
 私と他人との違いを、私はそういう些細な問題として今まで考えてきた。

 が、「野菜の皮を剥くかどうするか」に学名まで付けられて提示されるとどうだろう。その衝撃たるや半端ではない。私がどれほど驚いたのか伝わっていると嬉しい。