日本人であることの善と悪

 NHKオンデマンドで、気になった番組を見ていくのが好きだ。私個人がNHKをいい放送局であると考える一因として、娯楽以外の知識を学べることがある。

ETV特集
「エリザベス この世界に愛を」

 今日、見た番組だ。
 エリザベスと聞いて私がまっさきに思い浮かぶのはかの有名なエリザベス女王くらいだ。サムネイルは女性が誰かを抱きしめる画像で、このときの私は、「かけてるのかな」という今から思えばバカそのものの興味で番組を見ることにした。

 内容は、ナイジェリア人のエリザベスが、在留資格のない外国人が収容されている施設へ趣き、収容者と接したり体制へと訴えたりするドキュメンタリーだった。
 私はまず、国外退去を拒否した外国人たちが原則無期限に収容されていることを知らなかった。これには驚いた。こんな施設があったこと、長期収容者が2019年にハンガーストライキを起こし、それによる死者が出ていたことなどなど…。
 私なりに日本政府としての考えを妄想すると「命令に応じれば即時解放できるので、強制収容施設ではない」だろう。番組内での官僚もおおむねそのように言っていた(個人的解釈のため、正しい発言は番組を各自参照してね)
 収容する必要や、在留資格の取得や、長期収容の理由などは、あらゆる知識の不足している私がああだこうだ言うことではないので省略する。間違っていてもいやだし。

 番組に登場するエリザベスは、彼女自身が母国へ戻ることを拒否して収容された経験があるという。
 施設内の出来事が番組での内容全てであるかどうか、私には判断できない。できないが、エリザベスが叫ぶ「なんで」にはものすごく心を打たれた。

 滞在資格のない外国人が日本にいる。それを良いことだとは私には思えないし、だからといって収容時に腕を折っても良いだなんて思えない。人道的な扱いを収容者が受けられないのは、全然良いことではない。
 あらゆる理由で母国へ帰れないという外国人がいる。それはわかった。よくわからないまま長期収容されている人々がいることも、理解した。

 だからといって、私は政府をバッシングできない。
 私が日本人である以上、日本は平和でいてほしい。私が安全に暮らし、生きていくために、身元のハッキリしない隣人がいたらきっとこわいだろう。
 収容施設はきっと、そういう私(国民)を守るために存在している。
 でも、安全のために誰かが死んでいいわけではない。これも確かなことだ。
 エリザベスの苦しみや訴えは理解できたと思う。でも、日本人である以上、治安を守ってもらっている以上、入管の全てを批判することは私にはできない。

 ここまで書いて、なんともハッキリしないと私自身も思う。
 不法滞在した外国人が麻薬の販売を国内で行ったり、犯罪を犯したりしていることは事実だ。そして外国人研修生を違法に働かせたり解雇したりする日本人がその一因であることもまた事実だ。
 全てが外国人のせいではない。

 私がこの番組を見て「いい番組だった」と感じたのは、こういう思考するきっかけを与えてくれたからだ。そしてエリザベスが言う「大きな家」に共感したから。
 こんな短時間で考えて答えの出る問題ではない。だってエリザベスが20年以上戦っている。何かできないか、無力であったとしても、考えて行こうと思った。
 それから、いつか彼女の言う「大きな家」を私も作りたいと、強く思った。