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コーネルおじさん放火事件 犯人は世界の山田ちゃん(バカ推理小説)

(超ビビりなので、センタッキープライドキチン、コーネルサンダース、世界の山田ちゃん、でかまる子ちゃん、名前を変えました。笑)

「こ、コーネルサンダースの両眼からブスブスと黒煙が立ち上っている!ボヤだボヤだ、ボヤだけにボヤボヤするな!!」

センタッキーの入り口に立ってるコーネルおじさんの目が、昭和のスポ魂マンガの主人公の目みたいにボオオオオオ・・・と燃えている。


この人の顔がコーネルおじさん化したと思ってくれ

「ぼん、べちゃ」「痛てえ」「ぼん」「もぐもぐ」

コーネルおじさんの右腕と左腕が交互に、時速150キロで投げたゆで卵の剛速球が、一発はおれのおでこに、もう一発はおれの口の中にすっぽり入った。殻を剥いてあるし、そこまで固ゆでじゃないから怪我はしてないけど、びっくりするじゃないか!味付け煮卵だからうまい!


おじさんの肩には関節がないにもかかわらず投球をするものだから、コーネルおじさんの両腕は無残にも根元からボッキリと折れて転がっている。まるでバラバラ死体だ。誰だおじさんの腕に無理やりバネを仕込んだやつは。

相変わらず燃えている両目の炎が拡がっておじさんはやがて火だるまになった。

本当に火事になるところだった。野次馬が集まって、骨付きのチキンをあぶってるやつまで出る始末。

ほとんど燃え尽きていたから、店員がバケツ一杯の水をかけると鎮火したが、おじさんは黒焦げになってしまった。


人型の炭は眼鏡をかけている。コーネルおじさんの眼鏡はもともと度が入っているらしいが、虫眼鏡のように強力な度の入った眼鏡。こんなに太陽がカンカンに照り付ける日に黒目を焦点にして、虫眼鏡を当てたらそりゃ火がつくに決まってる。誰かがおじさんの眼鏡をすり替えたらしい。目だけが燃えている時からうっすら日焼けしていたが、犯人は無抵抗のおじさんにサンオイルまで塗ったらしい。サンオイルではなく、フライドチキンを揚げる油かもしれないが。そういえばおじさんが投げたおいしいゆで卵もおそらく犯人が握らせたものだろう。

探偵に早変わりしたおれは、口のまわりにべっとり付いてドロボウのヒゲのような手羽先のタレをベロを一周してぺろりと舐めながら、コーネルおじさん燃やしの犯行に使われた凶器の眼鏡を虫眼鏡として使い、地面に這いつくばって隈なく証拠を探した。

「こっこれは!!」ニワトリの羽根が落ちている。「こっこれは!!」地面に三本足のニワトリの足跡がついている。


羽毛と足跡

「犯人はニワトリ!!」

名探偵のおれはたちまち犯人を突き止めた。

センタッキーはフライドチキンを売ってるのだから、犯人のニワトリは厨房にいるに違いない。犯行現場に犯人が潜んでいるというのも、探偵ものの定石だ。

名探偵なら職権で、厨房に立ち入れるはず。おれは自動ドアを抜けてレジカウンターを飛び越えて、厨房の店員の安全確保に努めた。

おれ「そこのメガネのバイトくん!君のかけているメガネ、今時そんな瓶底の、牛乳瓶の底みたいなメガネをかけている人がありますか!?あなたのメガネはすでにコーネルおじさん殺しのニワトリによって、虫眼鏡にすり替えられている。外に出たら日光で即、失明ですよ!今もおそらく前が見えていないでしょう。フライヤーを使ってるのに危ないじゃないですか!!!」

丸尾くん「ぬおーーーーー突然、何ですかあなたは。ズバリ、これは正真正銘、わたくしのメガネでしょう!!」

バイトリーダーの丸尾くんは、名探偵のおれからメガネをむしり取られて大変に憤慨している。ぐるぐるの渦巻きメガネの下の目は意外にもパッチリしていて可愛い。

おれ「えっこれはあなたのメガネなんですか!?」

丸尾くん「そうです、次回の学級委員選挙ではこの丸尾未男に清き一票を」

おれ「わかりました!あなたはあのでかまる子ちゃんの丸尾くんではないですか。もう高校生なんですね」

丸尾くん「ズバリそうでしょう。わたくしは母さまの期待に応えるべく、東大進学を目指して、猛勉強の傍らこのセンタッキープライドキチンでアルバイトしてるのですよ」

おれ「そうなんですね。丸尾くんがんばってください!」

・・・・・

おれ「ところで丸尾くん、さっきセンタッキーおじさんが放火されたでしょう。きっと犯人はニワトリです。あなたが調理しているそのニワトリがおじさんを燃やしたのです。気を付けてください!」

丸尾くん「何を根拠にあなたはそんなことを言うのでしょう!」

おれ「いや、おじさんの残骸の後にニワトリの足跡と、羽毛が落ちていて」

丸尾くん「ズバリそれはあなたの推理ミスです。店で使っているチキンに羽はもうないし、手羽先だって足跡がつくかどうか」

おれはセンタッキープライドキチンは生きたニワトリから調理していると思っていたのだが、どうやらそんなことはないらしい。

丸尾くん「厨房をいくら探したって証拠は見つけられないでしょう。ズバリ犯人は店の外にいると思われます。事件と聞くとこの丸尾未男も血沸き肉躍るでしょう。ズバリ、コーネルサンダースの怨念を晴らしてください」

丸尾くんの言う通りだと思ったおれは、揚げたてのフライドチキンとセンタッキービスケットを失敬してモシャモシャ食べながら、外で聞き取り調査を行った。

おれ「怪しいニワトリを見た人はいませんかー?そこの綺麗なお姉さん、怪しいニワトリを目撃してはいませんかー?それより、目の前のセンタッキーでお茶でもしませんか?」

「私、見ました。」「ええっ!!」「怪しいニワトリを見ました」「詳しくその話を聞かせてください!!」

名探偵のおれは、綺麗なお姉さんからセンタッキーで話を聞くことにした。

おれ「あっ丸尾くん、たびたびすまん。フライドチキンをどっさりとコーヒーを二つください。ブラックでいいみたいです。僕もブラック」

丸尾くん「ズバリあなた、さっき私が揚げてオーダーの入っていたフライドチキンと、ビスケットを盗み食いしたでしょう!!この丸尾末男の目は誤魔化せませんよ!!次回は必ず警察に突き出すでしょう!!」

おれ「ああついうっかり。その代金も今、払います」そういいながら名探偵のおれはコールスローをモリモリ食べている。やべっ、丸尾くんが気が付かないうちに食べないと。うわ、コールスローだからプラスチックの器がついてるじゃん。これは食べて証拠隠滅できないぞ。


「あなた!!」「丸尾君、コールスローも一つ」

話を伺うとお姉さんは通勤の経路にこのセンタッキーの前を通りかかるのだが、昨夜、人の顔をしたニワトリが閉店したセンタッキーの店の前でうろうろしていたらしい。恐怖を感じて逃げたそうだ。

「犯人は人面ニワトリ!!」

今度こそ、犯人を突き止めたおれはいても立ってもいられずに店から飛び出した。駅前のケンタッキーだが、周りには居酒屋も多い。「世界の山田ちゃん」などがある。さっき口の周りのタレを舐めながら、犯行現場を調査したが、先ほどまで「世界の山田ちゃん」で手羽先を食べていたからだ。


世界の山田ちゃん


おれ「お姉さん、あなたが昨夜見た人面ニワトリの顔、あの世界の山田ちゃんの看板の顔とそっくりではないですか!」

お姉さん「あっあの顔。あの顔です!!昨日見たのはまさにあの看板の人です!!『幻覚の手羽先』と書かれたあの赤い旗も持っていました!!犯人は世界の山田ちゃんです」

なんとあまりにもあっけなく犯人が突き止められてしまった。

おれは「世界の山田ちゃん」に走った。血相を変えて店に飛び込むと、店員がびっくりしている。

おれ「さっきセンタッキーのおじさんが放火されたのを知っていますか!?」
店員「そういえばセンタッキーに人だかりができていましたね。フライドチキンが無料で行列ができているのかと」
おれ「なにをとぼけたことを言ってるのですか!コーネルおじさんが無残にも焼き殺されたのですよ」
店員「そんなことを言ったって・・・」
おれ「あなたちょっと一緒に外に来なさい。看板を見て犯人の顔をその目にしっかりと焼き付けてください!!」

名探偵のおれは店員の腕をつかんで強引に看板の前に引っ張った。

なんと!!看板から世界の山田ちゃんの人の顔をしたニワトリが消えて、真っ黒なシルエットだけになっている!!

「世界の山田ちゃん」は逃亡した。

店に戻ると、メニュー表などいろんなところに印刷されている人の顔をしたニワトリ「世界の山田ちゃん」が黒いシルエットを残して消えていた。

後日、新しい看板に変えられ、メニュー表も新しく作り直された。

コーネルおじさんが左右の腕から投球した味付け煮卵の剛速球も、山田ちゃんで提供しているゆで卵と同じ味だから、犯人は山田ちゃんに間違いない。

同様にその日、全国で何件もコーネルおじさんの像が燃やされる事件が相次いだ。共通するのは駅前のセンタッキーであり、センタッキーの目の前に「世界の山田ちゃん」が必ずあるということだ。

人面ニワトリも全国で目撃された。

コーネルおじさん殺しの犯人は世界の山田ちゃん!

全国でその日に38のコーネルおじさんが燃やされたらしい。人を38人も焼き殺したら100パーセント死刑になるに決まってるから、どこの交番にいっても重要指名手配のお尋ね者のポスターと一緒に、「世界の山田ちゃん」の食欲をそそるポスターが貼られた。



「世界の山田ちゃん」を賞金首にした指名手配のポスターにも関わらず、なんと大きな宣伝効果を生み、交番の前や、駅の構内、いたるところで凶悪犯人の顔をしげしげと眺めていた人たちは、「世界の山田ちゃん」で手羽先を食べたくなった。

重要指名手配の犯人まで、自分のポスターのついでに見た「世界の山田ちゃんの」ポスターを見たことで手羽先がどうしようもなく食べたくなり、手羽先を食べながらお酒を飲んでしたたか酔っぱらっているところを次々と逮捕された。

いつしか凶悪犯人は皆、世界の山田ちゃんで手羽先を食べているところを捕まり、交番の前のポスターは「世界の山田ちゃん」だけになった。

あの黒いシルエットを残して消えた山田ちゃんたちだけはどうしても捕まらない。

「世界の山田ちゃん」がフライドチキンのファーストフード店を作り、チェーン展開した。

このフライドチキンがまた飛ぶように売れて、「センタッキープライドキチン」が次々と「世界の山田ちゃん・フライドチキン」になった。

コーネルおじさんの像は撤去されて、世界の山田ちゃんの像にかわり、センタッキーはついに日本から撤退した。


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