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日本とドイツをつなぐドラマトゥルク「庭山由佳」

ドラマトゥルクというお仕事を知っていますか?
私は、知らなかった!

四半世紀くらい、ずーっと、ドラマトゥルク庭山由佳のファンなのに。

庭山由佳―ドイツ在住の舞台制作・ドラマトゥルク

彼女は、若い時からずっと舞台芸術を愛して、
世界中飛び回って大好きな舞台を観に行って、
演劇の現場でも走り回って。
舞台芸術に寄り添って、
ずっと走り続けてきた方です。

「ドラマトゥルク」って何?

知りたい!と思った私が読んだのは、
平田英一郎著『ドラマトゥルクー舞台芸術を進化/深化させる者』です。

ここにはドラマトゥルクとは、「演劇人の肩書」って書いてある。

なるほど。
そこまでは、私も分かる。

ドラマトゥルクは、
主にドイツ語圏の劇場で活動しており、
それをモデルに、欧米でもドラマトゥルクを採用するようになった。

ドラマトゥルクの活動の目的は、
「演劇を通して、人々に幅広い知的教養、高度な芸術性、社会的な問題提起をもたらすこと」。(p.9)

その活動を3つに分類すると、
1つめ:劇場監督や演出家とともに演目を策定する「演目ドラマトゥギー」
2つめ:作品制作の現場に関わる「制作ドラマトゥルギー」
3つめ:作品の魅力を観客に伝える「観客ドラマトゥルギー」

端的に言えば、「あいだ」をつなぐ仕事

あぁ、なるほど。

作品がオギャと産まれて、
いや、生まれる前ぐらいから、
作品が育つ間も、
観客の元に届けるまでにも、
届いた後にも、
ずっと一緒に添い遂げる、息の長い関わり方をする立場なんだろうな。

一番、グッときたところは、
このドラマトゥルクという仕事を端的に表す言葉として、
「あいだ」をつなぐ、
「In Between」という言葉が出てきていて。
それ、本当に素敵。

著者の平田さんのおっしゃるには、
「あいだ」(In Between)は、
演劇を作り上げてく上では、いつでもどこでも生じる過程で、
必ず出てくるものだと。

たとえば、
「戯曲と演出家、演出家と舞台美術家、俳優と演出家、俳優と俳優、理論と実践、戯曲と演出、コンセプトとその実現可能性、テクストと身体、身体と空間、公演(劇場)と観客、劇場と社会、虚構と現実、異なる演劇文化や言語どうし」(p.19-20)
といった「あいだ」をつなげるのだと。

文化をつくるドラマトゥルク

そうか。
ドラマトゥルクは文化をつくるための役割を背負ってるんだ。
劇場の文化、作品自身の持つ文化、それぞれ関わる人々の持つ文化。
それらをドラマトゥルクがつないでいって、舞台芸術を作り上げてくんだろうなぁ。

「『あいだ』をつなぐ」というのは、
コッチの情報をアッチに伝えるために、コッチに体重をかけてとか、
アッチに確実に伝わるように、アッチに体重をかけてとか、
自分自身の移動がともなう。
それはきっと、宙ぶらりん感につながる。かもしれない。
彼女は感じないかもしれないけれど。

でも、「あいだ」になるって、
葛藤がついてくるものなんじゃないかなって想像できる。

そういう葛藤も、
舞台芸術を中心として生きてきたからこそ、
庭山由佳さんは乗り越えてこられたのかなと感じて、
本当に素晴らしいなぁと思いました。

日本とドイツをつなぐ庭山由佳

先日、イベント学会で主催されたオンライントークに
庭山由佳さんが講師として出演されていました。
トークテーマは「コロナ禍におけるドイツの劇場の実践と文化支援」。

そこでお話しされている彼女の様子を見ていると、
日本とドイツをつなぐ「あいだ」そのものに、彼女自身がなっているなぁ。
と感じました。

考えてみれば、
「庭山由佳」という存在は、
今までずっとそうだったんだろうなぁ。
たくさんの人や、たくさんの作品、
そして劇場の様々な「あいだ」をつなげてきた彼女だから
たくさんの人に信頼されて愛されてるんだろうなぁと思いました。

今回のオンライントークで話されてた内容は、
ドイツの演劇界の現状を、日本の方にお伝えする内容でした。
日本のことも、ドイツのことも、
どっちも愛していて
どちらにも体重をのっけられるバイタリティと情熱が
本当に素敵だな。

今、彼女がドイツにいるということも
日本の代表、「日本人」としてドイツの演劇界にいる、
という感じがすごく素敵。

生き様そのものがアート

彼女自身、彼女の生き様そのものがそのまんまアート。
そんな風に、私には見えます。
庭山由佳さんが人生をかけて、命をかけて挑んでることとか、
ものすごい努力と感性とか、
そういうのすべてひっくるめて、本当にステキだなぁと思うのです。

学生の頃から活躍されていて、
知識や経験も豊富で、
実績も積み上げられてきたんじゃないかな。

現に、私が「ドラマトゥルクって何だろう」と思って
たまたま読んだこの本にも、彼女の名前が載っていて。
インタビューを受けたり、資料写真の提供をされてたりとかね。
こんなところに庭山由佳!っていう感じで。
さすがです。

彼女の活動だけでなく、
お話しされてる姿も、
とても情熱的で素敵なので、
もし機会があれば、
彼女の名前があるオンライントークとかワークショップとか、
参加してみると、とても楽しいと思います。

というわけで、
今回は、
日本とドイツをつなぐドラマトゥルク庭山由佳さんのお話をしました。

※このnoteは、stand.fmの音源『芸術をとことん楽しむラジオ』の内容をもとに作成したものです。『芸術をとことん楽しむラジオ』では、一般市民として論文が書いているいでしほが、大好きなアートや、バレエ、音楽、絵本、論文など、この世に生み出された作品をとことん楽しむラジオ番組を配信中。​


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