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#4 「元祖・発車音」開発ー思考の軌跡 | 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

今でこそ多くの駅で聞かれる発車メロディや発車サウンド。
その元祖である、「JR新宿駅・渋谷駅の音(1989-)」について、当時の開発プロジェクトリーダーである「井出 研究所」所長・井出 祐昭が、開発秘話や制作エピソードを語ります。

TOKYO MORNING 1989 (井出 研究所)

「元祖・発車音」開発ー思考の軌跡

プレゼンテーションを勝ち抜き、いよいよ「発車音」の開発がスタート!
発車音の概念を根底から変えたと言っても過言でない、「JR新宿駅・渋谷駅の音」。
開発の裏側には、どういった思考プロセスや考えがあったのでしょうか?


当時の発車ベルは、今でもたまに聞く「プルルルル」というものでした。
うるさいけれど、あれを否定していこうと思ってはいません。

時々「従来の発車ベルを全く否定して、音楽にした」というような誤解を受けることがあるのですが、実際はそうじゃなくて、「従来の発車ベルをアリだとした場合に、どうしたら良いのか?」というところから発想していきました。

「プルルルル」という発車ベルをベースに、音色を柔らかくするとか、「プルル、プルル」といった感じでパルスみたいに細切れにして鳴らすとか、音程を変えるとか、そういうのもありかなと思っていました。発車ベルって、「発車しますよ!」というギリギリの合図だから、あまりそれっぽくないのはどうかな、というのもありました。

当時色々と調べてみたところ、ヨーロッパやアメリカなどでは、そもそも「発車ベル」というものがない。車掌や駅員の声掛けはあっても、いわゆる「プルルルル」みたいなものはない、ということがわかりました。日本などに比べて個人主義的であるということも関係しているのかもしれません。

発車メロディスタート後に掲載された記事(日刊ゲンダイ 1989.8.16)
見出しの表現からも改良前の発車音の課題が見受けられ、
お知らせ音をデザインする発想が波及した様子が分かる。

そんなわけで、なくしたらどうか?という話も出ました。
日本でも、例えば千葉駅では発車ベルがありませんでした。

(注:JR千葉駅では、1988年に、近隣からの「発車ベルが騒音である」という苦情に応え、発車ベルを鳴らさずに電車を運行する試験が行われた。特に問題が生じなかったので、試行期間終了後にはそのまま発車ベルが廃止された。)

「発車ベルをなくしてみたらどうなのか?」といったことも、JRの方とも話し合いました。
けれど、さすがに乗降客が百何十万人もいるので、なくしてしまうのはやばくないか?危なくないか?ということになりました。
今でも、「発車ベルなし」というのもありかな、という風にも思います。
ですが、危険回避のために最低限の信号は必要なのではないかと思っています。


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井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。

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