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10年前からリモートワークしている弊社だから、ちょっとコツとか言わせてほしい

株式会社イデアラボは、心理学の研究・コンサルティングを行う会社です。

最近は新型ウイルスの影響もあり、リモートワークや在宅勤務をする会社が増えていますが、弊社では10年前から完全に自由な働き方を続けてきました。

出社はしなくてもOK、働く場所も自由、働く曜日も時間も自由に決められるこの働き方について、10年間運用してきて感じるメリットやデメリット、コツなどをこの際ちょっと言わせてください。


どんな働き方?

①出社しなくてOK。(事前申請や許可もいらない)

オフィスはありますが、出社する必要はありません。

お客様が来社する時、集中して仕事をしたいとき、対面でミーティングしたいときなどにオフィスを利用しますが、平日の昼間であっても社員はほぼいません。

それぞれが自宅やカフェなど好きなところで働いていますが、申告制では無いので社員がどこで何をしているかはお互い知らないことも多いです。(仕事の打ち合わせや、私用の自慢したい予定はカレンダーで共有しています)


②就業時間もなし。1日30分だけでも12時間働いても自由。

仕事の時間というのも特に決まっていません。

チームやお客様に迷惑をかけないよう自分でスケジュールを管理しながら早朝でも夜中でも好きな時間に働いています。お昼寝も夜更かしも自由。


③職種が違ってもみんなリモートOK

研究員、バックオフィス、営業、広報などの職種がありますが、全員平等にこのルールで働いています。

エンジニアやデザイナー職のフルリモートはよく聞きますが、バックオフィスまでリモートというのはなかなか珍しい気がします。

社員のほとんどはオフィスのある東京を拠点に暮らしていますが、この記事を書いている広報の私は大阪からフルリモートです。


自由な働き方のメリット

①通勤の時間、電車移動のストレスから解放される

都内の電車は混雑や、トラブル、遅延…などなどたくさんの苦労がつきものです。言わずもがな、通勤をなくすことで感染リスクや暑さ寒さ、遅延などの影響を受けずに働くことができます。快適!

朝家を出てから会社に着く頃にはすでに疲れている…ということもなく、家でそのまま仕事を始められるスムーズさは、一度やってしまうとやみつきになりました。私の場合は、朝の通勤にあたる時間は掃除、洗濯、お弁当作りに活用できるようになりました。合理的!


②家族の都合で転勤したり、実家に帰ったり、ふらりと旅行に行ったりもできる

スケジュールをやりくりすることで、混雑を避けて好きな時期に帰省や旅行を楽しめます。また、いろいろな事情(夫婦のどちらかが研究職とか転勤族とか、介護や子育てがあるとか)にももちろん対応可能です。


③平日の昼間に予定が入れられる

役所や病院、学校関連など平日の昼間にしかできない用事にも慌てることがありません。平日休みの友人に会うこともできます。これは単純に最高。


④社員のモチベーションが上がり、業績も上がる

私は集中力にムラがあるタイプなので、何をやってもダメな時はスパッと仕事を諦めたい。早起きするのでできればお昼寝したい。これが叶ってしまうのが本当にありがたい。

心理学では、パフォーマンスを最大限発揮するためにはどうしたら良いか?というのが長年研究されてきました。

※自己啓発本ではなく、ちゃんと心理学の研究に基づいている一般向け書籍としては、下記のような本が参考になります。

人を動かす「動機づけ」には、大きく分けて「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」があると言われています。報酬や社会的責任のために仕事をするのは外発的動機づけ、やりがいや自分のスキルアップのために仕事をするのが内発的動機づけと考えられます。

DeciとRyan(2000)による自己決定理論では、意欲的に行動するためには”自分自身の選択で行動している”と感じられることが重要だと言われています。

つまり、「自由な働き方→自律的に働いている感覚を高める→やる気や満足度が高くなりやすい」という説明ができそうです。
その結果なのか、弊社は無事10年目を迎え、業績も4期連続黒字です。


⑤なんといっても、リスク管理になる

今回、新型コロナウイルスの騒動では多くの企業や社員が対応に追われてそれぞれに大変な思いをされていることと思います。しかし、そもそもリモートを前提に働いていた弊社では、ありがたいことに通常運転を続けられています。

それ以外にも日頃から、体調不良になった、急用ができた、災害が発生した…などあらゆる状況に対応できているのは、そもそも「みんなが1箇所にオフラインで集うことを前提としていない」からこそです。今後も何が起こるか予測できない中で、リスク管理としての強さを実感しました。


実はデメリットもある

完全なリモートワークの私(@大阪)にとっては、とにかく気がつけば「運動不足」「不摂生」「孤独」の3つの敵が襲ってきます。

個人的なコツとしては​、こんな感じでとにかく切り替えと生活リズムが大事だなと実感しています。ちなみに運動不足解消のコツはまだわかりません。それから、家のトイレットペーパーがすごい勢いで無くなります。

・外出予定がなくても服を着替える
・できれば人と暮らす、ルーティーンを作る
 (孤独防止&生活リズム&気持ちの切り替えのため)
・お昼ご飯にこだわらない
・これやってから仕事しよ、と思わない
 (テスト勉強前の掃除…みたいな罠にハマる)
・日中ベッドに近づかない
・ディスプレイやPC、Wi-Fiはちゃんとしたスペックで
 (イデアラボでは自宅用ディスプレイの貸与あり)

また、多くの人が集まる会社にいれば偶然の出会いで知り合いが増えたり、優秀な人と仕事をする機会にも恵まれますが、在宅では減ってしまうのも事実。個人的には、そういう刺激や機会をどうやって維持するかもこれからの課題です。


10年うまく運用できている理由を考えた

コツ1:ITツールを出来るだけ使って、情報共有は”絶対に怠らない”

Slack(ビジネスコミュニケーションツール)やWEB会議システムなどを駆使して、離れていても絶対に情報共有だけは怠りません。基本的には全て文章で残して共有。一見面倒なようですが、誰がいつ見てもわかるようになっているおかげで、結局は仕事がスムーズに進みます。

経費精算や勤怠管理も、クラウドサービスを使ってどこでも手続きできるようにしています。


コツ2:文字ベースでもディスカッションできる文化を作る

私がイデアラボに転職してから驚いたことの一つは、「この人たちめちゃくちゃ文章でディスカッションする…!」ということ。

個人の能力(研究者は文字が大好きなはず)によるところもあると思いますが、会社の文化として育てていくことがリモートワークには必須です。長文を厭わず、ちゃんと文字で妥協せずディスカッションし続けるこの文化のおかげで、こじれやすいオンラインコミュニケーションがうまくいっている気がします。

前職では、チャットが面倒!とすぐ電話をかけてくる人が多発していましたので「電話では1対1の対応になってしまい結果が他のメンバーと共有できないのでチャットで会話しましょう」というように意識を共有する土台が必要だと思います。


コツ3:雑談もネット上で行う

文化といえば、「オンラインでなんでも聞いていい、言っていいという文化」も同じくらい大切です。これがないと仕事が進みません。

イデアラボのSlackには「今日食べたごはん」「仕事に関係ないこと」について雑談をするチャンネルがあります。旅行の景色なんかも送られてくるのですが、こういう風にメンバーの仕事以外の姿をほんの少し知っていることが、人間関係には大事ですよね。


コツ4:特定の人だけではなく、全員が自由に働く

私が以前働いていた会社は、子育てなど特定の事情がある人だけがリモートOKでした。その場合は本人も罪悪感を感じやすいし、周りの人は不公平に感じて不満が出ることも…。

イデアラボでは、「全員が」バラバラの場所で自分のやり方で仕事をしているのがうまくいくコツだと感じています。子育てや介護だけでなく、時にはそれぞれの個人的な状況(楽しいことも含めて)を優先できることが、社員全体の満足度につながっているように思います。


コツ5:社員を管理する、見張るというマインドを捨てる

代表の澤井は「本人にとって一番生産性が良い方法でやればいい」が口ぐせ。

会社側が「労働時間を正確に管理する」「可能な範囲で長い時間会社に貢献させる」という考え方で社員を管理しても生産性が上がるとは限りません。

疲れやストレスを抱えた状態で長時間労働を課しても無駄だから、それぞれが良いパフォーマンス出せるように自己管理してね!という方針です。

社員もそれを理解していて、みんなそれぞれに自分の特性を理解した上で自己管理しているのを感じます。また、本質的に無駄だと感じる業務フローがあれば、だいたい誰かが言い出して抹殺されていきます。澤井いわく、「2ヶ月かかることが2秒で終われば、その2ヶ月は寝てられるやん」とのこと。働き方改革ってそういうことかもしれません。

今後もしばらくはリモートワークの流れが社会的に続きそうですが、リモートワーク検討中・実施中の方の参考になるところがあれば嬉しいです。みなさんのノウハウや経験談もどんどん教えてください。


引用・参考文献
Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The” what” and” why” of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological inquiry, 11, 227-268.
岡田涼. (2010). 自己決定理論における動機づけ概念間の関連性. パーソナリティ研究, 18, 152-160.



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