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劇団zzZ°のこれまで

ご挨拶

改めまして、劇団zzZ°主宰の佐藤陽です。
劇団zzZ°と書いてズーズーズーと読みます。
え?名前が読みにくい?まんまやないかって?
はい、僕もそう思います。

この劇団は7年前(え、まって、7年?!)
僕が高校一年の2月に幼馴染と立ち上げた団体で、これまでに5回公演を行ってきました。
受験だったりコロナだったり、いつの間にか他のメンバーと連絡が取れなくなったりと色々あって公演しない期間が何かと長かったのですが、新しい劇団員を迎え、今年の2月から活動を再開する予定でございます。
それにあたってこれまでの公演についてまとめたものを出そうかなと思いました。
映像と台本を残している公演もありますので、この記事を読んで興味を持っていただけたら、そちらも見ていただけると幸いです。

旗揚げ公演『白を描いても0』 〜何を描けって言うんだよ〜

公演フライヤー

公演期間 2018年2月11日~12日
公演会場 青い保育園地下

・STORY
私は真っ白な絵を描いている……いや少し濁っているかも?
散らかった部屋で、コンビニ食とスマホ、後スマホをお供に。
今はニート。
仕事はAIに奪われた。
私の絵は白く淀む。
午後過ぎに起きて、ネトゲしてSNSして、寝ている。
怠惰な生活はとても居心地良く、吐き気がするほど気持ち悪い。
私の絵は白く滲む。

SNSからコメントがくる。
「何の絵なの?」
私の人生だよ。まっ白でしょ。
壊れただけの白、ただのノイズ。
いつになったら私の色はみつかるの?
一緒に探してくれませんか?

・公演について
本当の自由ってなんだろう。
もしかしてとてつもなく怖いものなんじゃないのかな。
僕の姉と母はスウェーデンに留学経験があり、その年の夏二人がそれぞれ暮らしていた場所を案内してくれた時のことでした。
風情のある煉瓦造りの建物、街中に鳴り響く陽気な民謡音楽、誰もが一度は憧れるような幸せを体現した風景がそこにありました。
程よい夏の気候、よく手入れされた芝生、甘いお菓子と紅茶を囲んで母のホストファミリーとのお茶会。なんと豊かで穏やかな国なんだろう。
その時僕は思いました。

「気持ち悪い」

なんで……?え、なんで?
こんなにも素敵な場所でなんでこんなにも吐き気がするの?
なんでこんなにも『何か』に飢えてるの?
誰もが満ち足りた顔をしているのに、僕だけが何もかも足りていない顔しなきゃいけないの……。
あ、そう言うことか。
ここには『ノイズ』がないんだ。
鬱陶しい爆音の音楽が、いつの間にか生活の中で当たり前になっていた過剰な喧騒がここにはないんだ。
音だけじゃない、『消費』して終わるためだけのものがないんだ。
その時、僕は心底自分に落胆しました。
僕は知らず知らずのうちに色んな『ノイズ』に依存していて、貧相な自分の精神をその『ノイズ』で埋めて『満ちている』と誤魔化しいたんだと。
本当に足るということは、本当に『自由』と『幸せ』を手に入れるにはいくら時間があっても、いくらお金があっても仕方ないんだと。
僕はその旅の帰り、空の上でこの作品を一気に書き上げました。

仕事や勉強、他にもやらないといけないことが溢れかえった現代で、もしこの瞬間自由を与えられたとして、僕らはちゃんと自由をまっとうできるのか。
そんな問いから、AIが全ての仕事を担う世界を舞台に、自堕落な生活に落ち、人との関わりさえ捨ててしまった女性の再生の物語を描きました。

正直、荒削りな部分が多い作品ではありましたが、耳心地の良いボサノバミュージックを『ノイズ』として扱ったり、ゲーム世界と現実世界を同時に進行させる構成など、テーマ的にも演出的にも再演で磨き上げたい部分はたくさんある演目だなと思います。
旗揚げ公演ということもあり、お金も公演を行うためのハウトゥーも全くなかったので知り合いの方に場所を貸していただいたのですが、今度はこの作品の白さを活かせる場所でお届けしたいですね。


第2夢公演『君が目を覚ますまで、』 〜貴方は僕等を理解できますか〜


あえて表面は何も書かないタイプのフライヤー

公演期間 2018年9月24日
公演会場 北とぴあペガサスホール

STORY
周りからは病気と言われ、異常者と見られる
ただ人が人を好きになるだけなんだ
男とか女とかじゃなく一人の人間として好きなんだ
それでも汚いものとして見えるなら
君はこの事実をどう受け止めるのかな
ー僕、妊娠したんだー
『性』をテーマに7人の高校生が描く物語
きっと誰もが傷ついて誰かを大切に思う

・公演について
いや、タイトルよくね?
けふんけふん。
失礼しました。
この話は簡潔に言えば男子高校生が妊娠し、それによって変わっていく人間関係を描いた群像劇です。
今でこそ煙たがる人は少なくなりましたが、当時一人の政治家が「LGBTQには生産性がない」という発言をしたという事件を覚えているでしょうか。
生産性って何?子供を産むこと?結婚って子供を産むためにすることでもないし、仮に同性同士の結婚に生産性がないとするならば不妊症を患う女性も同じじゃないでしょうか?
じゃあ逆に男性同士でも産まれるようになったら受け入れるの?
という、反発精神もりもりで描いた作品です。

高校2年生、この頃からおよそ5年ほどでしょうか。
僕は自分の性についてずっと悩み続けることになります。
自分の性別ってなんだ、一体どっちが好きなんだ、こんなにも過剰に性的なことを恐れるのは男性としておかしいのか。
ただ、この時確かに感じた、理解を拒み異常者として分断を強いる人々への怒りだけは正しいと思い、筆を取りました。

ジェンダーに関する知識は無いし、当事者の立場に立てるわけでもない。
ただ等身大の感情と疑問に身を任せた勢いだけの作品です。
ですが、僕はこの公演で、たった一回の公演で150人からの拍手を頂きました。
北とぴあ演劇祭、というイベント効果もあるかもしれません。
ですがキャストと2ヶ月間悩みに悩んで作り上げた作品で、それに対して公演後お客様から「ありがとう」と言葉をもらった時は、それまでに悩んでいた全てのことが報われる気持ちでした。

ただそれと同時に「お前は何もわかっていない」という声ももらっていて、本当にその通りだと思います。今になってあの時の自分の危うさを実感します。演劇の持つ素晴らしさと恐ろしさ、その二つを同時を知れたという意味では、おそらく劇作家としてここが僕の分岐点だったのだと思います。


第3夢公演短編演劇祭『もしもの日常、通過して征く今日』〜もう何も奪われないように〜

公演期間 2021年3月20〜21日
公演会場 スタジオ空洞

STORY1 『眠れない日々のあとに』
夜更けに目が覚め、不意にニュースをつけた。
流れてくるのは新種のウィルスとその感染者数。
増え続けていくのが当たり前になりつつあったその日、私は久しぶりに涙を流した。自覚もないまま。
怒りも悲しみもとっくに枯れ、でも涙だけが尽きることはなかった。
けれど私は今日も昨日も変わらず、無駄な時間だけを貪る。
もう諦めかけた夢を抱いて。

・公演について
コロナの話です。
受験のために断腸の思いで演劇に踏ん切りをつけ、やっとの思いで日芸に合格。これから夢のキャンパスライフが……と思った瞬間自宅学習。
オンライン授業、交流会、埋め合わせのように大学から出されたのは何もかもが中途半端で、ただただ無駄に時間がすぎ、同時に演劇の世界があっけなく崩れていくのを見ていた。
でも、それは劇的な変化というよりはあまりにも静かに僕たちの生活に侵食してきて、悲しいということに自覚するのすら時間が必要でした。
「誰のせいでもないから」
その言葉が嫌だった。
こんなにも誰かのせいにしたいと思うことはなかった。
「いつか戻るから」
こんなにも薄っぺらく感じるとは思わなかった。
どんな形でもいいから、誰のせいにもできないならせめて、心の底から泣いて怒って悲しんで、いつの間にか失ったものを自覚し弔おう。
そういう話です。
『眠れない日々のあとに』この後は足跡であり傷跡です。
僕はあの日々を絶対に忘れるつもりはありません。

STORY2『それでいい。これがいい。』
「ねえ、今暇?」
「暇だよ。どうした?」
「じゃあ、ちょっと来てもらえる?」
「わかった、いつものところでいいか?」
「うん、ありがとう。ごめんね」
僕は手元にあるポーチから、使い込んだ口紅を取り出した。
これは彼女に逢うための儀式のようなものだ。

・公演について
男女の友情をテーマに描いた作品です。
大学生になり、女友達に彼氏ができて、疎遠になることを恐れた青年が、彼女と友達でい続けるために女装を続ける、そんなお話です。

男女の友情は脆い、なんてよく言われますが僕はそれを全否定したかった。
どちらかが異性として意識しているなら、それは成立しない、なんてどういうルールだよって。
むしろ相手の性を気にしないでいる友人関係なんてただただ失礼なだけじゃないの?
相手の性も自分に対してどう思ってるのかも、それを踏まえてお互いになりたい関係をはっきりさせてようやく対等に歩み寄れるんじゃないの?
なんてまあ、一人一人にそこまで重く考えてたらキリがないと思いますけど、せめて大切な友達相手であれば僕はそうやって誠実に向き合っていきたいなと思います。
ちなみにこの時期、「誰にも警戒されたくない」「男性という立場に見られたくないし強要されたくない」僕は女装し始めます。(まあ趣味もありますけどまだ自分のジェンダーの自覚が定まってません)
その不安定さとかも主人公には盛り込んでいて、結構繊細な作品に仕上がってると思います。
この作品は販売しているの良ければ読んでみてください。


第4夢公演『明時に僕らは青を謳う』 〜いつか誰かに届けばいい〜

これ以降は劇団員ののりのりが制作

公演期間 2022年2月25日〜27日
公演会場 王子小劇場

STORY
拝啓□□□□へ
僕はあなたたちの顔も声も知りません。
けれどずっとあなたたちのことを大切に思っていました。
いつも逢いに来てくれた人。
これから出会うかもしれなかった人。
今まで支えてきてくれてありがとう。
そして「さよなら」です。
僕は明日この顔と名前を捨てなければなりません。
理由は敢えて言いません。
でも必ず生まれ変わって、そして今日と同じように歌います。
だからいつか僕のことを見つけてください。
その時はまた
「初めまして」
と言葉を交わしましょう。

2022年2月25日22:23 Twitter for Android
このアカウントは存在していません。


・公演について
代表作です。
今の所、zzZ°の代名詞的作品でございます。
簡単に言って仕舞えば歌い手が熱愛発覚で炎上する話です。
当時、公演一週間前くらいに歌い手とVtuberの熱愛発覚で大騒動になってて、正直リアルタイムすぎてビビりました。
そんな余談は置いておいて内容の話ですね。

この物語は言って仕舞えば、SNSが当たり前の時代でさまざまな形で『夢』と言うものと向き合う若者たちの群像劇です。
・武道館ライブを目指す歌配信(主人公)とその彼女
・騒音に悩まされる配信者の隣人とシェアハウスしている友人
・ネットの活動者を炎上させる配信で生計を立てる配信者とその相方
・配信をよく見るミーハーな二人の女子大生
・進路に迷う軽音楽部の男子高校生(裏主人公)とその親友
そしてこの五つの世界線を結ぶ郵便配達員。
この郵便配達員というキャラはかなり特殊で、SNSと言う媒体そのものに人格を与えた感じで、それぞれの世界線で出された言葉をまた別の世界線に運び届けると言う演劇ならではの役割を担ってます。
ちなみに歌い手が炎上するシーンではこの郵便配達員が大量の手紙を舞台中にばら撒くというかなり面白い演出があるので、もしよろしければ映像で見てみてください。

この舞台はコロナの波乱がまだ残っている時期で、僕らの進路についてもかなり影響していたと思います。そんな中で自分のやりたいことをやるのか、現実的な道を選ぶのか、やりたいことをやっても反発の声が簡単に届いてしまう世界で生き抜けるのか。そんな等身大の葛藤と、その過程を乗り越えてきた先人たちへのリスペクトを込めた作品になっています。

作品もそうですがオリジナルの劇中曲がいい!
ほんとにいい!
初めて作詞やったけど、ここまで作詞の意図を読み取って曲作ってもらえると思わなかった!!!!

てことで劇団zzZ°『現段階』の代表作。
よかったら購入してみてください。



第5夢公演 『 i 』 〜嘘でも幸せです、きっと〜

撮影スポット探すの大変でした

公演期間 2022年12月16日〜18日
公演会場 北池袋新生館シアター

STORY
「あなたが人間であることを証明してください」
「手段は問いません」
「息をしている」
「血が流れている」
「感情がある」
「じゃあもしそれがそのようにプログラムされているだけなら?」
「あなたが本物のあなたである証明をしてください」
「あの」
「なんでしょう」
「僕はあなたが本物じゃなくても、あなたが大切だと思ってますよ」


・公演について
最初に言っておきます。
タイトルの『 i 』は虚数を意味してます。
この公演のテーマは「AI」です。はい、旗揚げ公演と同じですね。
世界観も旗揚げ公演のものをより具体的に作り直してます。
ただ違うのは、旗揚げ公演は「AIがある時代で私たちはどう生きるか」であり、この公演は「AIがある時代で私たちが人間でいる意味」についての話です。
覚えているでしょうか、AIイラストレーターやチャットGDPって2022年の冬あたりに出始めたんですよ。
これまで仕事はAIがやる、だったのが創作の世界にまで図々しく侵食してきやがったんです。これはもう大事件でしたよ。
旗揚げ公演は芸術に生きること、私が生きてきたことを形にしていく、が一つの答えだったのにこれじゃダメやんってなって筆を取った次第です。

今回の舞台もゲームの世界です。
ただ少し違うのはゲーム世界に人間そっくりのBOT(人間のプレイを模倣するプログラム)がいるとう言うことが劇中で判明します。
つまり、今目の前で仲良くしている人、ひいては自分もプログラムされたBOTなのでは?と言う疑いが広がっていくんです。
これはよく耳にする「スワンプマン」や「テセウスの船」などの思考実験をベースに構想を練りました。頭が痛くなりそうでした。
旗揚げ公演『白を描いても0』と似た流れではあるんですけど、同じ「生きていく」と言う答えでも全く違う性質の答えを出せたと思うのでもしよろしければ脚本だけでも読んでみてください。


長くなりましたね。
以上で全6回、劇団zzZ°のこれまでの紹介になります。
結構長いのに最後まで読んで頂いてありがとうありがとうございます。
もし、面白そうな公演をするなって思っていただけたら下にあるSNSの方チェックしていただけると幸いです。(だいぶ前に更新が止まってますが)
現段階では第6回、第7回公演の準備をしていまして、第6回公演は2月頭の方に再始動公演を企画しております。
テーマは「選挙」です(また、際どいところを……)
再度申しますが、気に入っていただけたら今後のzzZ°の活動を見届けていただきたく思います。

それでは今回も閲覧ありがとうございます。
今日はここまで。
おやすみなさい。

劇団zzZ° 佐藤陽



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