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30~40代からの筋肉講座(アスリートにも応用可能!)

この記事では筋肉の重要性と、筋肉を増やすために必要な栄養と運動(おもに栄養)について解説します。
※本文は8000文字強でスライドがタイトル入れて47枚です。参考文献が50あるのでそれなりの文字数になっています。

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今日皆さんにお伝えしたいことは、たったの三つです。

今から筋肉を蓄えておくことが重要であること
タンパク質を適切にとること
③いわゆる筋トレが重要であること
(トレーニング・運動の種類はたくさんありますが、しっかりと筋肉に負荷をかけた運動です。レジスタンストレーニングとも言います)

ヒトは歳をとる、衰える
~「自分にはまだ関係ないや」って思ってる?~

まずは加齢の話です。ヒトは必ず歳をとる、衰える生き物です。少なくとも年をとることは絶対に避けられません。「自分にはまだ関係ないや」って思っている方も多いと思います。

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こちらはH28のデータ[1]ですけれど、平均寿命、健康寿命は男女ともに伸びています。しかしながら、何らかの介護を要する不健康期間というものが男性で9年、女性で12年もあります。少しずつこの差は縮まってはいますがまだまだ長いのが現状です。健康寿命をさらに延ばすことでこれらの期間を短縮できたらいいわけです。

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H30年のデータ[2]ですが、この約10年に及ぶ不健康期間つまり要介護の原因は、最近1位になった認知症、次いで脳血管疾患、いわゆるフレイル、骨折・転倒、関節疾患、心疾患になります。
フレイル、骨折・転倒、関節疾患は筋肉の衰えに関係しており、実に三分の一を占めています。老後という観点から、いかに筋肉が重要なものかお解りいただけると思います。

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握力は全身の筋肉量を反映する簡便な指標で、サルコペニアの診療でも使われています。この握力が5kg低下すると死亡率が16%増加するというデータがあります[3]。筋肉が少ないと長生きできないのです。

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こちらはアジア人高齢者を10年間追跡調査した報告です[4]。サルコペニア肥満(太っていて筋肉の少ない人)の死亡リスクが高く、次いでサルコペニアの死亡リスクが高いという結果でした。

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興味深いことに、太っていても筋肉がある人は、痩せの筋肉が少ないサルコペニアより死亡リスクが低かったのです。つまり、太っている人が目指すべきは痩せることではなく、筋肉を増やしてのマッチョなデブなのです!

とはいえ、ここまで話で、危機感を持った方はあまり多くないと思います。

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とはいっても何もしなければ加齢とともに筋肉は減少していきます。30代以降徐々に筋肉量は減少していきます。上半身に比べ下半身の筋肉の減りが大きいです[5]。

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別の報告[6]でも、40代以降徐々に減少しています。男性では上半身と下半身ともに、女性では下半身中心に筋肉量が減少しています。今回、タイトルを30~40代からのとしたのはこのようなデータからです。

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ヒトは歳をとる、衰える。筋肉は遠慮なく減少していきます。「自分にはまだ関係ないや」って思ってますか?
おそらくこの記事をご覧のほとんどの方が、もう十分に当事者だと思います。

コロナが追い打ち、運動不足に筋肉不足
~どうやって筋肉を増やせばいい?~

最近は新型コロナウイルス対策としてのステイホームなど、運動不足になる要素がたくさんあります。そこで、この章では運動不足やそれに伴う悪影響についてお話します。また筋肉がどうやったら増えるのかについてもお話していきます。

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コロナ以前よりわれわれ日本人は運動不足です。
座位行動とは座りっぱなしのことで、座っていたり横になっている状態のことをいいます。寝てない時間のうち、座位行動してる時間を座位時間といいますが、その時間が世界一なのです。誇らしくない一番ですね。

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長時間座り続けると下肢の筋肉の代謝や血流が低下します。その結果、総死亡リスクや心血管死亡リスク[8]、がんによる死亡リスク[9]、糖尿病・肥満リスク[10]、認知機能低下[11]など健康に様々な害を及ぼすことが分かっています。運動不足は深刻な問題です。こまめに立ち上がって運動する必要があります。

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コロナ禍によるロックダウン、ステイホームが各国で行われておりました。この自粛の影響がどこまで運動不足を引き起こしたのかをオンライン調査した海外の論文[12]があります。高強度、中強度の運動、ウォーキングともに自粛前にくらべ自粛中は30%程度減少し、その一方で座位時間が30%増加しました。やはり自粛により運動不足が引き起こされています。

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国内のアンケート調査[13]でもコロナ自粛により「階段が昇りづらくなった」、「速く歩けなくなった」、「つまづきやすくなった」といった項目でで影響(特に40代以降)が出ています。

ただでさえ座りっぱなしとかで運動不足なのにこれ以上活動の機会が減ってしまい大変です。きっと筋肉にも影響が出ているのではないでしょうか?
実際わたくしもコロナで少し運動不足気味な1年でした。ジムはやめましたし、競技場に行って練習することもなくなりました。そんな活動量が減ったわたくしの1年前のとつい先日の体組成を公開します。

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何が怖いかって1キロしか増えてないですが・・・・そうなんです筋肉が1キロ減って、脂肪が2キロ増えているのです。「運動不足で1キロ太った」は「1キロ脂肪がついた」ではないのです。

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こういった運動不足、不活動が筋肉にどのような影響を与えるのでしょうか?
例えば、高齢者(平均年齢72歳)に活動量を減らすようにした研究[14]では、歩数が約6000歩から1400歩に減少した結果、下肢の筋肉量が3.9%減少しました。
また2週間の床上安静を指示した研究[15]では高齢者で7.3%(1日当たり約0.5%)、若年者では5.7%(1日当たり0.4%)の筋肉が失われることが明らかになりました。
長期臥床では筋力は1日当たり1~1.5%失われるとも言われています[16]。
つまりただでさえ運動不足なのに、コロナの影響で活動量がぐんと減ってしまい我々の筋肉はピンチに陥っているのです。

では、筋肉の増やしたり減らしたりする要因は何なのでしょうか?

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筋肉は常に紅組で表現しました分解チーム(異化とも言います)と緑ですが白組で表現した合成チーム(同化とも言います)で綱引きをしています。我々の行動がどちらに加勢するかで筋肉の増減が決まります。つまり、紅組(分解チーム)に加勢すれば減り、白組(合成チーム)に加勢すれば増えるのです。そう我々の行動にかかっているのです。

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普段はどのような綱引きのバランスなのでしょうか?
ポイントは食事です。食事をして栄養が入ってくると筋肉は合成に傾き、そうでなければどんどん分解されていきます[16]。

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安静・絶食では筋肉は分解されてしまいます。アミノ酸(≒タンパク質)を摂ることで筋肉は合成されます。筋トレだけでは筋肉は増えず(分解を抑える効果はある)、タンパク質の摂取と合わせて最大の効果を発揮します。つまり、筋肉を増やすために重要な要素それはタンパク質(≒アミノ酸)と筋トレなわけです[17]。

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紅組つまり筋肉を分解しようとするのメンバーはたくさんいます。白組のメンバーはほんのわずかです。いかに紅組のメンバーを排除して白組にたくさんの助っ人を送り込むか、これが筋肉をふや重要です。

これら紅組白組のメンバーが活躍するとホルモンが分泌されます[18]。
筋肉を分解する異化ホルモンには、コルチゾール、グルカゴン、アドレナリン、その他のカテコールアミンがあります。
筋肉の合成ホルモンには成長ホルモン、IGF-1(インスリン様成長因子)、インスリン、テストステロン、エストロゲンなどがあります。

この記事の後半では白組の重要メンバーである栄養(特にタンパク質)と運動について解説していきます。

筋肉を増やすための栄養~とりあえず肉でも食べときゃいいんじゃないの?~

ここからは筋肉を増やすための栄養について解説していきます。前章で筋肉を増やすにはタンパク質が重要と述べました。この章ではタンパク質の効果的な摂取方法について解説していきたいと思います。「とりあえず肉を食べておけばいいんじゃないの?」っていう考え方は・・・・間違ってますよ。

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1日〇g?、1回〇g?、1日〇回?、間隔は〇時間?、タンパク質の種類は?といった疑問をエビデンスをもってお答えしたいと思います。

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