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#2 管理栄養士の仕事を可視化する ~可視化するはデザイン!?~

2021/5/11加筆

日本医療デザインセンターの医療デザイン勉強会は毎月1回を目標に開催されることになりました。

今回のテーマは『栄養 × 医療 × デザイン』で、 専門家からみた「課題」と「ギャップ」を可視化してみました。

ゲストには
管理栄養士でNutrition Laboratory主催者の斎藤さん(@NLab2020
PT×グラフィックレコーダーの豊原さん(@ryoko_PT)
にお越しいただきました。

この記事では、記念すべき第1回の模様をまとめつつ、勝手に感想や意見を追加しました。勉強会の動画はこちらです。

20210421イリョデ勉強会グラレ

管理栄養士ってどんな人?

最初に斎藤さんから管理栄養士について簡単なお話を頂きました。
斎藤さんは病院で働いている管理栄養士っていうと
よく
・料理を作っているひとでしょ?
・献立を作っているひとでしょ?
・栄養指導しているひとでしょ?
って言われるそうです。

実際は以下の2つが大きな業務だそうです。

①給食業務
入院患者さんに提供する食事の献立作成など
※外部委託している病院もある

②臨床業務
病態に応じた栄養管理、栄養指導、NST業務など

余談①:管理栄養士になるには管理栄養士のなり方は専門学校などの栄養士養成施設を卒業して栄養士の資格を得たのち実務経験を積む、または、4年制の大学や専門学校の管理栄養士養成課程を卒業して、管理栄養士国家試験の受験資格を得てこれに合格するとなれるようです。
▼参考サイト▼
https://shingakunet.com/bunnya/w0036/x0444/
そんな病院管理栄養士からみた医療現場の課題とは・・・・

課題① 人員不足

・給食だけで大変、他に手が回らない:
HACCP(はさっぷ)という、宇宙食に用いられているような厳しい衛生管理基準で給食を管理している。そういった厳しい給食業務を行っているので、(調理員さんや、栄養士さんもいるけど)厨房入ることもあるし、そうすると臨床業務に避ける余裕がなくなってくるそうです。そのような中で個別管理(病態によって職種を変える、アレルギーなどの対応)が細分化されてきて大変だそうです。

・病院で働く管理栄養士が絶対的に少ない:
管理栄養士さんの就職先は病院だけではないということもその原因の一つです。また、雇えるだけの十分な診療報酬が得られないという病院の経営の仕組みの問題もありそうです。

余談②:管理栄養士の就職先
管理栄養士は必ずしも病院に行くわけではない
病院がだいたい3分の1くらいが病院だそうです。
▼参考サイト▼
https://www.eiyo.or.jp/about.html

給食業務は委託にしているところもあるらしいですね。また、栄養管理に対する診療報酬は最近見直されつつあるけどまだそんなに高くないみたいです。

課題② 管理栄養士の地位向上


管理栄養士が活躍する様になれば価値や地位が高まるのでは?
今のところ、病院にとって収入が増えるような資格(NST専門療法士など)を取っても給料増えないようです。今後は資格を取ったり加算を取れるようになったりしたら給料に反映されるといいな、専門特化していけるといいかなとおっしゃっていました。

余談③ 管理栄養士の技術料
管理栄養士の技術料は診療報酬という形で保険により定められています。医師も含めた保険診療を行っている病院の報酬はお国が決めています。追加で病院が患者さんからいただけるのは個室料金とかくらいです。それ以外は保険の範囲内でしか収入を得ることができません。

そんな中、ICUにおける早期栄養加算という比較的大きな診療報酬改定がありました(今度勉強会を行います:YouTube Live配信)。管理栄養士(NST
)が頑張ると病院経営はよくなるし、国の医療費も削減できるのは明らかになりつつあります。栄養療法により治療成績向上やコスト削減がなせれば国も病院経営者も管理栄養士の価値を見直さざるを得ないです。

こんなツイートを見かけました。活躍の場が多いは逆に強みなのかもしれませんね。


課題③ 多職種とのコミュニケーション

近年、管理栄養士が病棟に出ようとしている段階になってきました。ただ、そのような黎明期なので管理栄養士も病棟でまだどうしていいかわらない。そして、周り(看護師など)もどうしていいかわからない。そういった他職種とのコミュニケーションに悩んでおられるそうです。お互いが、話しかけるタイミングがわからない。管理栄養士も、医師・看護師も忙しい中でどうコミュニケーションをとったらいいのでしょうか?

そのあたりを細かくみていくと、
・職種間での共通言語の違いがある
・管理栄養士の役割が知られていない
・管理栄養士さんも他職種の役割を知らない
・なんなら患者さんにも知られていない
というのが明らかになりました。これらは垣根が高いと感じる要因なのかもしれません。

私の意見としては『タイミングがわからないなら作ってしまえばいい』が解決策の一つになるのでは?と思いました。
多職種カンファで管理栄養士が確実に話をする時間が取れるように思えます。私の病院でも科によっては行われていたそのようなカンファを、基本的には各病棟で管理栄養士を含むカンファにするようにしてきました。

医師との間にある壁

ここで耳の痛いお話を伺いました。医師の周りには他職種が話しかけにくい高い壁があるみたいです。職場の雰囲気とか文化にもよるのでしょうけど、こういった壁は取り除いた方がいいと思います。

この記事を書いていて考えたことだけれど、病院(医療現場)でしか働けない(わけではないけど)職種と、医療現場以外でも働ける職種の間には溝がありそうだなってこと。どういう事かっていうと、栄養って扱ってるものが”食品”で薬とか人体とかではなく、みんなが扱える物。けれど、その扱い方は無茶苦茶プロなわけです。例えば絵具とか筆は誰しも小学校で扱うけれど画家ともなるとやはりその作品の価値は全然違う、その完成物を世に出すために積んだ修練というものに価値があるってこと。

私は外科医だから患者さんにメスを入れることができて、それは特別に制限された権利でもあるわけです。そういった資格によって立場が形成されている職種と、そうでない職種の間には大小さまざまなハードルがありそうだなって思いました。

私は管理栄養士の人たちとNSTというチームを組んで仕事をしているから、彼女たちの仕事内容や考え方をある程度分かっていて、だからこそ感謝もしていますし、リスペクトもしています。病態に応じた栄養管理ってとても難しいし重要だと思っているのです。

お互い、というか医師がほかの業種の業務内容や考え方などに触れる機会が増えればきっとこの壁はいつかベルリンの壁のようになるよね。

課題④ フードロスのジレンマ

SDGsとは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことです。社会のさまざまな問題の解決を目指すSDGsの達成には医療や病院の果たすべき役割は多きものと思います。SDGsの一つにはフードロスの削減という目標があります。

しかしながら、多くの病院がSDGs、フードロスという問題に取り組めていないのではないかと思います。安全基準や個別対応を頑張れば頑張るほどにフードロスにつながっています。大量調理ではない個別対応の献立、アレルギーとか禁食とか、刻一刻と変わる患者さんの病態。食べたいものを注文してくれる飲食店よりはフードロスが生じやすい現場かもしれません。

そうはいっても頻繁に残される(栄養面は素晴らしいのだけれども、お世辞にもおいしくない)メニューが延々と提供されるなど、PDCAサイクルの欠如が原因とも思える事例もあります。

今回の勉強会ではこういったグローバルな事柄も問題提起されました。こちらは社会的にも重要ですので何らかのアクションを当センターとしても起こせたらいいなと思いました。

課題のマッピング

とまあ、いろいろ課題を上げ話し合ってきたわけですけれど、その間に裏方だったクワハタ代表がマッピング?してくれました。
ホワイトボードや模造紙にポストイット張っていくのと同じ要領ですね!
オンラインでもGoogleスライドとか利用すればできそうです!

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これを見た感想をまとめると、

・(われわれ医療従事者は)職種間の立ち位置のズレに気づいてない。だからコミュニケーションが成り立たない。そのズレ気付きがあるような関係性のデザインができると、コミュニケーションが改善するなあ。こうやって、会話がマッピングされて分解されてわかりやすくなった。

・コミュニケーションに関しては、手法として更に分解していくことができる領域ではないか?

ワンポイントアドバイス
コミュニケーションといっても視覚的なコミュニケーションであったり、情報の整理をしたり、色・カタチだったり、チラシを作ってツールに落とし込むなどデザインが生きてくる分野である。これらを分解してアイデアに落とし込んでいくと言う手法がデザインではよく用いられる。

・フードロスはソーシャルアクションとの親和性が高そうだから、そう言った方々と話をするとみえてくる。

といった意見が出ました。

”可視化する”はデザイン!?

デザインとは可視化すること

マッピングはデザインの視覚化表現の一つです。見える形で課題をリストアップしていくと会話だけでは気づかなかったものに気付くことがあります。また、全く違うカテゴリーに並べ替え見ると新しいアイデアが出てきたり、新たな発見があったりします。

20210421イリョデ勉強会グラレ

それと似て非なるものにグラフィックレコーディング(グラレコ)があります(上図)。グラレコは、会話を絵と図と文字で視覚化することです。グラレコにすると理解のしやすさが違うし言葉に乗せられなかった情報が入ってきます。その結果、コミュニケーションが厚くなるので描きながら伝えるというのは有益です。

ホワイトボードでもメモでもなんでもいいんで!!




この記事の元動画はこちらになります。ご興味のある方はぜひ。


====< 次回告知 >=====​
【医療の課題をデザインで紐解く勉強会】『リハビリ、小児整形(仮)』編​
5/20(木)19:00-20:00​
https://youtu.be/KlVt69tuBTQ

★リハビリ × 医療 × デザイン ★​
小児整形外科医の「現場の声」を聴きながら、医療課題として区分し可視化します。​

中川将吾(ゲストスピーカー )​
https://note.com/famireha





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