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父親の関与に関する積み木

積み木1:父親が子どもに与える有利なスタート方法の真価を認める

アメリカ合衆国 健康および人的サービス省
子どもと家族のための運営
子ども、青年および家族のための運営
ヘッドスタート事務局
2004年6月

概要

 約30年前、先駆的な児童心理学者ミシェル・E・ラムは、子どもの発育に寄与する父親の役割が蔑ろにされていると述べた1。それ以来、子どもの健康的な成長にユニークな形で寄与する父親の手法を探るため、多数の研究が実施された。今、学者は次のことを知っている。母親と同じくらい父親が関与して育った娘や息子は、優れた認知能力、運動能力を持ち、高レベルの肉体的精神的健康を楽しみ、問題解決能力に優れ、自信、好奇心、共感力に富む。更に、道徳的感性、自制心においても優れている。
 父親が十分に関与した子どもは、その成長過程において、若年齢で性的なことに関与することや、未婚の母になること、犯罪行為や暴力行為に関わることは実質的に殆どないようだ。寧ろ、学校によく通い、そこでの成績も良く、大学に進学するようだ。
 ヘッドスタート・プログラムを実践することで、父親は一層子どもの学業成績にプラスとなる効果をあげることができる。ヘッドスタート・プログラムは養育に対する父母の協力を強め、父親が子どもの生活に関与することで効果的に恩恵を得ることができる。
 全5冊の「父親の関与に関する積み木」は、ヘッドスタート・プログラムが父親の関与を促進する際の手助けとなる。1冊目「積み木1」では、父親が子どもの健全な成長に果たす基本的な役割について、最新の調査を紹介する。
 ヘッドスタートのスタッフと両親が養育の協力の重要性と、なぜ父親は子どもの健全な育成に欠くことができないのかを理解することは重要である。これらを知ることで、家族と子どもが求めるものに応じることができる。

 父親は、アメリカの子どもの生活における、たった1つの未開発資源だ。自然で、再生可能で、概して無毒だ。父親はアメリカの子どもにとって健全な状態で機能しえなかった。我々は父親をこのままの状態にしおいてはいけない。
-カイル・D・プルーエット,医学博士,イェール大学医学大学院

父親の関与が発達させる子どものウェルビーイング

 父親の関与は、認知力の発達、学業成績、数学と音楽を含めた子どもの成果に対し、行動障害と同等の比類のない影響を与える。子どもの利益が父親の関与に影響されるという事実は、これらのリソースを持っていない人に懸念を引き起こすに違いない。
-W・ジーン・イェン,社会学者,ペンシルバニア大学

 父親が子どもの生活にもたらすプラスの利益を書きとめている研究文献はかなり存在する。1980年以降に出版された父親の関与と子どものウェルビーイングに関する研究を再調査したところ、これらの研究の82%が積極的な父親の関与と子どものウェルビーイングには密接な関係があることを示していた2。
 親子関係を取り上げた100を超える研究の分析から、子どもの幸福、ウェルビーイング、そして社会的、学問上の成功にとって、母親から愛情と養育を受けるのと同様に、父親の愛情と養育を受けることが重要であることが分かった。いくつかの研究は、父親の愛情が、重要でプラスになる子どもの健全性の産物に著しく寄与していたことを指摘している3。「父性:次位の親の神話」の中で、ワインラブは、「父親が子どもの成長に著しく寄与していることに疑いはない。特に、父親は子どもが性の役割、認知能力、成功への動機付けを発達させるのに多大な影響を与える」と述べている4。

就学準備性(School Readiness)と行動
 小さい頃から父親が関与している子どもは、学校で学ぶのに必要とする多くの特性を備えている。彼らはより我慢強く、好奇心があり、自信をもっている。彼らは自分の椅子に止まって、先生が来るのを我慢して待ち、自分のワークに興味を持ち続けることができる5。
 教育心理学者ポール・アマトは、父親の関与で得た就学児童の高い自制心は、一般生活スキル、自己評価のような多くの健康特性に関連し、社会技能をより高めていく、と説明している6。
 カイル・プルーエットは「父親の必要性」の中で、以下の事象と積極的な父親関与との連動について科学的に分析した主要な研究を報告している。
 ・破壊的な行動、行動化(acting out)、憂うつ、そして虚言が、より低いレベルにある
 ・両親に従い、他人に親切、責任感を有している
 ・少年に行動障害が殆どない
 ・少女は幸せを感じ、自信を持って新しいことを試す意志を有している
プルーエットは「積極的な父親のケアは、少年少女の全てのプラスとなる向社会的(pro-social)な、道徳的な行動に関連している」と結論づけている7。

 過去40年の間に、父親不在が非常に大きな社会問題の1つとして現出した。私たちは、父親なしで育った子どもが永続するダメージに侵されることを知った。ある者は貧しい生活を送り、或いは学校を止め、薬物の常用者になり、未婚で子どもを作り、或いは囚人になる。これらは父親不在だけが原因ではないが、父親不在が1つの主な要因であることは認めざるを得ない。
-ジョージ・W・ブッシュ,アメリカ大統領,2001年6月

認知能力、運動能力、そして言語発達
 精神学者エレン・ビンは、父性がどれほど子どもの健康に影響を与えるかを調べた最初の学者の1人である。1960年代初頭に、彼女は定期的に父親に本を読み聞かせている子どもは、多くの認知力の範疇において父親が本を読み聞かせていない子どもより優れているようだと気付いた。興味深いことに、最も強い利益の1つは娘の言語技能がかなり発達したことだった8。
 約10年後に「発達する心理学」に公表された研究で父親が関与した少年少女ともに、父親がいない、或いは、威圧的な父親を持つ子どもに比較し、言語スキルが上達しているのを見出した9。
 ロス・パークの研究は、子どもの人生の最初の数カ月において父親が子どもに関与すると、子どもの知性、運動能力、そして肉体的発達が改善することを示した10。
 著名な父性研究者のヘンリー・ビラーは、父親が関与した子どもは複雑な数学や論理的なパズルを解く際に、より自信を持っており、より成功することを何度も見出した。これは父親が分析問題に精通し、高い興味を持つ傾向にあるからかもしれない。ノーマ・ラディンは父親の関与が多いほど、若い娘の数学能力に寄与することを見出した11。
 マイケル・ヨーグマンは、早産の影響を克服するのに果たす父親の役割の研究をラテン系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、そして他のインナーシティの住民で実施した。3年後、これらの未熟児をフォローしたところ、ヨーグマンは父親が関与した子どもは父親が関与しなかった子どもに比べかなり認知能力が高いをことを見出した12。
 ミシェル・ラムは、父親が関与した未就学児は、標準化した知的査定において、より高い知的能力を備えていることを見出した13。

 私達の社会におけるたった1つの最も大きな社会問題は、父親のいない家で子どもが育つことかもしれない。というのは、それは多くの社会問題の一因になっているからである。指針を示している父親なしで、世話をしてくれる父親なしで、少年に大人の男のありようを教え、少女に男に尊敬を期待することを教える父親なしでは、向社会的な子どもが育つのは困難である。
-ビル・クリントン,アメリカ大統領,1995年10月

安心、自信、そして愛着
 生まれてから8カ月~24カ月の間に、その生活に父親が関与した乳幼児は、父親が親しく接したり、関与することのなかった乳幼児に比べ、不安を感じることなく、増えていく感激と好奇心で自分のまわりの世界を探検したいようだ。父親の行動的遊びとゆったりとした反応は、欲求不満状態にある子どもに対し問題解決能力と独立心の発達を促進する14。

賢明な人生を選ばせる
 ペンシルバニア大学の研究から、次のことが見出された。父親に親しさや温かみを感じる子どもは、そうでない子どもに比べて大学進学率が2倍である。彼らの75%が10代の年齢で子どもを作らない、80%が警察のやっかいにならない、50%だけが多様な憂うつのサインを示す15。
 「恵まれた環境で育った10代の白人の少女が10代で母親になる可能性は、シングルマザーに育てられた場合、血の繋がった両親に養われた場合の5倍になる」16。
 若い男が犯罪行為に結び付く可能性は、父親が子どもの成長に関与していた場合を基準にすると、父親なしで育てられたなら2倍、加えて近隣に父親のいない家庭が高密度で集中しているなら3倍となる17。
 「少年の反社会的攻撃を最も抑制できる人は、血の繋がった父親である。これは調査から絶対的に明らかである」18。

 少年の反社会的攻撃を最も抑制できる人は、血の繋がった父親である。これは調査から絶対的に明らかである。
-ショーン・ジョンストン,犯罪心理学者

共感の発達
 1950年代に開始した長期間にわたる研究から、生まれて数年間の子どもに対する温かな父親の関与が、成人期に子どもが共感力を持つ上で、最も重要な因子であることが分かった19。
 26年にわたる研究で、研究者は、子どもの時に共感を発達させる一番大きな因子は父親の関与であることを見出した。規則的に子どもとだけ時間を過ごす父親は、子どもを情け深い大人になる子どもに変えていった20。
 カイル・プルーエットは、父親の関与と子どもの発達に関する調査を再検討した後、次のように結論づけている。「これらの発見は疑問の余地なく、次のことを教えてくれる。父親は重要で置き換える事の出来ない役割を健康な子どもの発達に演じている」彼は付け加えた。「父親と子どもの関係が密になるほど、彼ら両方が今も将来も良い暮らしをしている」21。

父親不在の問題

 積極的な父親の関与が与える多くの恩恵が立証されるにつれ、父親不在による子どもへの影響とそれがもたらすマイナスの結果が調査により明らかになっている。

アメリカには父親不在の子どもは何人いるのか
・アメリカ合衆国は父親不在家族の数では世界のリーダーである22。
・今夜、2400万の子ども(全ての子どもの約34%)が父親不在の家で暮らしている23。
・父親不在の子どもの40%近くが過去1年間父親と全く会っていない24。
・父親と一緒に暮らしていない子どもの半分以上は父親の家にいったことがない25。

血の繋がった父親と別れて住んでいる子どものパーセンテージは(人種別に)以下の通り27。
  アフリカ系アメリカ人の子ども   66パーセント
  ヒスパニックの子ども       35パーセント
  白人の子ども           27パーセント

・片親家庭の84%で、シングルマザーが主な監護者になっている26。

10年間にわたる父親不在家庭の数
・1960年から1996年までに、父親や継父が不在の家庭の子どもの数は、700万から約2000万に増えた。しかし、1990年代中頃から、父親不在の子どもの数は横這いになった28。
・シングルマザーに育てられた子どもの数は1960年と2000年の間で3倍以上(510万から1620万)になった29。
・1960年にはシングルマザーのたった4%が結婚していなかった。2000年ではこの数字は41%になった30。

 父親不在は人種、民族、階級が交差するアメリカの問題の1つだ。アメリカ全土で、父親が子どもの生活から静かに消滅している。
-ブラック・アメリカの父親不在は危機を脱しつつある
 アフリカ系アメリカ人の父親のモアハウス会議からのステートメント

良いニュース
 母親だけで育てた18歳未満の子どものパーセンテージは、1985年から1900年の間、変わらなかった。この数字は1995年から2000年の間で8%減少した31。

父親と父親不在に対する意見
・アメリカ人の64%が片親家庭の増加は大変問題であると信じている32。
・1999年に実施した世論調査では、アメリカ人の77%が離婚の急増と片親養育が家族の結束を弱めたと感じている33。
 ・「あなたが尊敬し崇める人」の名前を問われた時に、片親家庭の子どもはたった20%しか父親の名前を挙げなかったのに対し、両親が揃った家庭の子どもは52%だった34。
 ・7割の大人は子どもが幸せに成長するには父親と母親の両方と暮らすのが必要と信じている35。

父親と母親の愛情の違いと違う理由

 父親と母親の養育は異なっていて、この違いによって子どもは最大の恩恵を受ける。

 父性は母性と全く同じように健全な子どもの発達の基礎となる。専門誌「一般的な心理学のレビュー」は、「子どもの発達における父親の愛情の効果は母親の愛情の効果と同じ、時にはそれ以上であることは、証拠から明らかである」と述べている36。父性の専門家カイル・プルーエット博士は書物「父親の必要性:なぜ父親の子どもに対するケアが母親のそれと同様に必要不可欠なのか?」で「父親は母親になれない」と述べている37。「今日の心理学」は「結局、父性は子どもの感情的、知性的成長に関する大きな成果を伴なう複雑でユニークな現象であることが分かる」と述べている38。児童心理学の世界におけるパイオニアであるエリック・エリクソンは、父親の愛と母親の愛は質的に異なる種類の愛情である。父親は「危険なほど愛する」。エリクソンは続ける。「というのは、父親の愛は、母親の愛よりも子どもの将来を意識した、より実用的な愛だからである39」。父親というものは、オスの生物学的な親として、だれも用意することのできない、唯一無二の養育への貢献をもたらすのである。

 父親の関与が子どもの人生にユニークでプラスとなる相違点をもたらす理由のいくつかを、納得のいく形でこれから説明する。

父親は母親とは異なる子育てをする
 父親と母親の相違により、子どもは重要な多様性のある経験をする。プルーエット博士は、父親は厳格な形式のコミュニケーションと意思の疎通を行うと説明する。8週齢まで、乳児は父親と母親の意思疎通における差異を識別できる。この多様性により、ただ一人の親に育てられた子どもと比較し、より広く、より富んだ対照的な関係の意思疎通を子どもは経験する。子どもが理解するか否かに関わらず、子どもは小さい時の経験を通して、男性と女性は違っていて、違った方法で人生や他の大人、子どもを扱うことを学んでいる。

 今日アメリカ合衆国で生まれた子どもの半分以上が、仮に現在の傾向が続くならば、血の繋がった両親のうちの一人、通常は父親、と成人になるまで離れて生活することになる。
-サラ・マクラナハン,プリンストン大学

父親は母親とは異なる遊びをする
 母親と父親の両方が子どもと接触がある間、父親はその方法が母親とは典型的に異なる。父親は子どもと遊ぶ傾向があるが、母親は子どもの世話をする傾向にある。
 一般的に言って、父親は沢山くすぐったり、レスリングをしたり、(母親がそんなに高くしては駄目と注意している間に)子どもを宙に投げたりする。父親は子どもと追いかけっこをして、時には怖い怪獣の役になりきって行う。母親が静かにしている間、父親は遊びで声をあげる。母親は赤ちゃんを抱き締め、父親は赤ちゃんを揺さぶる。母親が大人しくしている間、父親は大騒ぎする。父親は競争を奨励し、母親は公平を奨励する。父親は独立を奨励し、母親は安全を奨励する。
 ファザーリングの専門家ジョン・スナレイは、父親と大騒ぎする子どもは、噛みつき、蹴り、その他の体を傷つける行為をしてはいけないとを学んでいることに気付いた40。子どもは、「もう沢山だ!」、「落ち着いて!」と告げられる時に自制心を学ぶ。父親は、臆病と攻撃的の間のちょうど良いバランスを少年少女に教える。子どもは母親の優しさが必要なのと同じく父親の乱暴さが必要である。その両方が心と体のコミュニケーションを通してそれぞれの方法で子どもに安心感と自信をもたらすのである。

父親は子どもに自信を与える
 遊び場に行って、そこにいる両親に次のように聞いてみて下さい。子どもにブランコや少し高いのぼり棒や、少し早い自転車に乗ったり、少し難しい物投げを時々薦めるのは誰ですか?子どもに注意するよう勧めているのは誰ですか?父親が子どもに限界に挑むのを薦める間、母親は注意を払う傾向にある。これらの育児方法のどちらか一方だけでは不健全である。一方が結果を考慮することなくリスクを奨励してばかりいる。もう一方はリスクを避け、その結果、独立心、自信を築けず、発育が遅れる。両親が一緒に遊びに加われば、子どもはそれぞれのバンラスをとって、経験を広め、自信をつけながら安全に遊ぶことができる。

父親は母親とは異なるコミュニケーションをする
 主要な研究は、両親が子どもに語りかける時、母親と父親で相違があることを示している41。母親は典型的には自分の言葉を単純化し、子どものレベルで話をする。父親は子どものために自分の言葉を修正する傾向は見られない。
 母親の方法はその時点のコミュニケーションを促進する。父親の方法は、学問上の成功をする上で基礎となる、語彙の拡大、言語技術の発達を促す。
 父親の話はより短く、直接的で、要点を絞る傾向にある。顔の表情と微妙なボディランゲージも、より多く使用する。母親はより描写的で、個人的で、言語での励ましを行う傾向にある。両方の会話のスタイルを理解し使用する方法を学んでいない子どもは将来不利を被るだろう。なぜなら、両方のスタイルを学んでいない子どもは、彼らが大人の世界に入ってから両方のスタイルを経験することになるからである。

父親は母親とは異なる躾けをする
 教育心理学者キャロル・ギリガンは、次のように述べた。父親は正義、公正、そして義務(規則に基づいた)を重視する42。一方、母親は同情、世話と援助(人間関係に基づいた)を重視する。父親は規律を体系的に厳格に遵守し、強制する。子どもに客観性と正誤の結果を教える。母親は上品と同情を重視し、望みを持って中庸を取る傾向にある。繰り返しになるが、これらはどちらか一方だけでは拙いが、一緒ならば健全で適切なバランスを生みだすのである。

父親は子どもが実社会に出るための準備をする
 一般的に言って、父親は子どもを世界のその他地域に関連付けて見る傾向にある。一方、母親は世界のその他地域を子どもに関連付けて見る傾向にある。例えば、母親はしばしば子どもを傷つけるかもしれない外の世界からの事(例えば、暴力、稲妻、事故、疾病、変わった人、犬や猫)に大変注意を払う。父親は、これらのことに無関心の間は、子どもが世界で出くわすかもしれない何かについて準備するか否か、するならどんな方法かに焦点を置く傾向にある。
 父親は、往々にして自分の執る態度や動作によって得られる結果が変わることをどもに教える。例えば、父親は、もし自分の子どもが他の子を良く思っていないなら、その子は自分の子どもと遊びたくはないだろう、若しくは、もしこどもが学校で良い成績をとれないなら、子どもは大学に行けず、よい就職口にも就けないだろう、と子どもに告げようとする。一般的に言うと、父親は子どもに実社会の現実と過酷さに挑む準備をし、母親は現実と過酷さから身を守る手助けをする。子どもが成長し大人になるには、両方が必要である。

父親は男の世界に目を向けさせる
 男性と女性は違う。違うものを食べ、違う服を着て、違う匂いがする。違う方法で人生に対処する。ありふれた表現だが、父親は「男のこと」をし、母親は「女のこと」をする。
 父親と一緒に成長した少年少女は、男性の世界に親しみと安心感を持つ。父親が関与した少女は、若い時は少年と、大人になったら男性と、健全で自信を持った関係を持つことができる。これは、少女が男性は女性に対してどのように振舞うのかを父親から学ぶ機会が大変多いからである。少女はどんな行動が不穏当であるかを経験から学ぶ。また、父親の関与で育てられた少女は、男性の世界に健全な親近感を持つ。彼女らは男性の顔の無精ひげの感触や、強い腕でハグされるようなことを不思議には思わない。この知識が感情面で安心感を築き、女性を襲う行為に対する安全の確保に役立つ。

 多くの研究が、父親が強く関与した子どもは、父親と殆ど関与しなかった子どもと比較すると、より認識的、且つ社会的に有能で、極端なジェンダーに傾かず、より共感力を持ち、心理学的により適応力がある、と結論付けている。
-一般心理学のレビュー,2001年

 父親と一緒に成長した少年は乱暴にはならない。彼らは自身の男らしさを確信し、父親から男らしさと強さを正しい方面に向ける方法を学んでいる。父親は少年に対し、相応の女性に関する性的知識、衛生、年齢相当の行為を理解する手助けをする。母親がこれらの事を少年に教えるのは難しいだろう。

父親は他方の性を尊敬することを教えることができる
 研究は首尾一貫して、結婚した父親は原則的に結婚していない男より妻や子どもを虐待しない傾向にあると述べている43。これは、結婚した父親と同居している少年少女は、男性は女性をどのように扱うべきかを観察することによって多くを学ぶことを意味する。
 それゆえ、父親が関与した少女は、全候補者を判定するための参考となるモデルをもっているので、良いボーイフレンドと夫を選ぶ。父親は悪い候補を払いのけるのにも役立つ。父と一緒に育った少年は、父の強さを見習い、父の欠点から学ぶので、良い夫になる。
 「社会学のアメリカンジャーナル」は次のように述べている。「子どもの社会化に父親が関与することがある社会は、父親が関与しない社会よりも公共活動から女性を排除する傾向が少ない男性を生み出す」44。

父親は子どもと求人市場を結び付ける
 人生における重要なポイントは、経済的に依存したままか独立するかの移行期である。これは普通、16歳から22歳の期間で徐々に進んでいく。父親は子ども、特に、少年を自分達が成人した時にそうしたように求人市場と結びつけることができる。父親の持つ多様なコミュニティのコネは、しばしば、青年が初仕事を得るのに必要な支援に役立つ。父親が近くにいない時は、少年は夏休み中のバイト仕事を見つけるのに必要なコネとやる気を手に入れることが難しいかもしれない。

 父親はもはや家庭における単なる「次位の大人」以上の存在である。子どもの成長に関与した父親、特に血の繋がった父親は、他の誰もがもたらすことができないようなプラスの利益を子どもにもたらす。父親は保護と経済的な支援、そして男性のロールモデルを用意する。父親は母親のそれとは著しく異なる養育スタイルを持っている。そして、その相違は子どもの健全な発育にとって重要なものである。
-デビッド・ポペノエ,社会学者,ラトガース大学

結論
 著名な社会学者デビッド・ポペノエは次のように述べている。「父親はもはや家庭における単なる『次位の大人』以上の存在である。子どもの成長に関与した父親、特に血の繋がった父親は子どもに他の誰もがもたらすことができないようなプラスの利益をもたらす」。父親は必要不可欠な恩恵を子どもの人生に与える。子どもは父親の愛が奪われると次第に駄目になってしまう。
 「一般心理学のレビュー」は述べている。「多くの研究が、父親が強く関与した子どもは、父親と殆ど関与しなかった子どもと比較すると、より認識的、且つ社会的に有能で、極端なジェンダーに傾かず、より共感力を持ち、心理学的により適応力がある、と結論付けている」。
 父親はヘッドスタート・プログラムが行う全ての成果を子どもが手に入れるのを手助けする。父親はヘッドスタート・プログラムがより効果をあげるように手助けをする。ヘッドスタート・プログラムは父親が子どもの生活をより良くするよう手助けをする。冊子「積み木2~5」が、ヘッドスタート・プログラムの準備、計画、そしてキーマンとなって使命を果たす父親を元気づけるのに役立つだろう。

お父さんはどこにいるの?お父さんはどこにいるべきなの?お父さん、お父さんは私たち子どものところにいるべきだよ。
-ハーマン・A・サンダース,お父さん、私達は今あなたを必要としています,アフリカ系アメリカ人男性の社会化における入門書,1996年

責任ある父性の促進は、福祉の再形成における緊要な次の局面にきている。そして、我々が子どもの貧因を減らすためにできる最も重要なことの1つである。
-アメリカ前副大統領 アル・ゴア,2000年6月

(了)

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