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ソウルフィルド・シャングリラ あらすじと簡易用語集

 科学技術が突如消失してしまう『技術的発散〈テクノロジカル・ダイバージェンシー〉』と呼ばれる災厄より一世紀。人々は唯一消失しなかった、既存のものとは異なる科学――即ち『魂魄制御技術』を以って洋上に巨大な都市を築き、『発散』の恐怖から逃げるようにそこに閉じこもり蓋をした。
 以来100年、再び災厄が起こらぬように自らの技術を縛りながらも、人々は平和裡に永らえてきた。
 都市の名は、澄崎。
 天宮〈あまのみや〉総合技術開発公社と、空宮〈そらのみや〉文明維持財団という二大巨頭が統べる街。
 天宮に全てを奪われ復讐を誓う少年、引瀬護留〈ひきせまもる〉は、天宮のエージェントを名乗る男からとんでもない依頼を受ける。
『我々の姫を、貴方に弑〈しい〉して頂きたい』
 一方、その暗殺対象である天宮の姫、悠理〈ゆうり〉も、自らの中に存在するもう一人の人格〈じぶん〉を狙った両親の陰謀により友人を失ってしまう。だがそんな仕打ちをした父は言う。
『次の祭りで、貴女を次期当主としてお披露目する』、と。
 時は西暦2199年。盛大に開幕する澄崎市市政100周年記念祭。その中で、二人は運命的な出会いを果たす。
 背後に蠢く陰謀。『Azrael〈アズライール〉』なる存在を用いて都市を救うという『プロジェクト・アズライール』。
 既定の運命に絡め取られた二人が行き着く先は、救済かそれとも破滅か――。

・天宮〈あまのみや〉
 天宮総合技術開発公社。その名の通り、澄崎における種々の技術開発を行う組織。関連企業や子会社を含めると澄崎市におけるシェアは7割にも達する。世襲制であり、親族はおおよそ政敵以上でも以下でもない。

・空宮〈そらのみや〉
 空宮文化維持財団。技術の発散が起こったのは過当な開発競争に対する天罰であるという思想のもと、現状維持こそを至上とする教条主義者。新規開発された技術を審査し、現状にそぐわないと判断すれば『失効テクノロジー』として封印してしまうため、天宮とはすこぶる仲が悪い。

・澄崎市〈すみざきし〉
 洋上テラフロート上に築かれた、自給自足を可能とする閉鎖都市。ALICEネットと呼ばれるネットワークシステムにより、住民は理論上は飢えもせずに安穏と暮らせる。だがもちろんそれは建前であり、正規市民〈ハイアー〉・低級市民〈ロウアー〉・非市民〈ノーバディ〉と格付けがされ、下にいくほどALICEネットの恩恵は少なく、明日も知れない生活を強いられている。人口はおよそ800万人。

・天宮悠理〈あまのみやゆうり〉
 
物語のヒロイン。天宮家当主継承権序列第壱位保持者。10歳の時、両親の陰謀に巻き込まれ友人を喪う。以降、表向きは親に恭順を装い生きてきた。
 白い髪に赤い瞳、白皙の美貌の持ち主。頭脳も優秀で15歳現在、公社の開発室の副室長にまで実力で上り詰めた。
 あやとりと黒い服が好き。

・天宮理生〈あまのみやりお〉
 天宮家現当主。悠理の父。『プロジェクト・アズライール』を強引に推し進める。その目的は不明。

・己條〈きじょう〉
 紹介屋。相手が天宮だろうがゾンビだろうが仕事を紹介する。口が固く有能。

・屑代〈くずしろ〉
 天宮総合技術開発公社情報部部長。

・引瀬護留〈ひきせまもる〉
 物語の主人公。負死者。10歳の時、『Azrael-02』という存在が覚醒し、それ以前の記憶を失った。異常な再生能力と戦闘能力を持つ。
 灰色の髪の毛に、薄紅色の瞳の持ち主。ALICEネットを利用できないため最底辺の暮らしを送ってきた。天宮に対して強い敵対心を抱く。

・引瀬眞由美〈ひきせまゆみ〉
 天宮悠理の侍女で、友達だった。あやとりなどの古い遊びに詳しい。理生たちの手にかかり命を落とす。

・引瀬由美子〈ひきせゆみこ〉
 かつてプロジェクト・ライラと呼ばれる計画に携わり、後にはプロジェクト・アズライールの研究も行っていた女性。護留と姓が一致しているが現時点で関係性は不明である。

・グリムリーパー
 徴魂吏。2194年より突如市税局が運用を開始した死神。手に持つリヴサイズと呼ばれる白い鎌で税金を払えない市民から魂を取り立てる。

・魂魄制御技術〈こんぱくせいぎょぎじゅつ〉
 文字通り、魂を操る技術。『発散』を防ぐとされる。ALICEネットを作り上げた技術である。

・身体改造〈サイバネティクス〉
 澄崎市における身体改造は主に、半有機半機械のサイバネティクスパーツに置換するものと、後天的遺伝変異を誘発させて異形を得る2通りが存在する。100年前に発散したものをサルベージした技術であり、失効テクノロジー認定されることはないとみなされているため、独自の発展を遂げた。

・プロジェクト・アズライール
 澄崎市救済計画。計画の指揮を執るのは天宮理生だが、実際の運用は引瀬由美子博士に一任されている、らしい。天宮総合技術開発公社の資産のおよそ3割が用いられており、さらには空宮までもが参画している。その最終目的は不明。

・ALICEネット〈ありすねっと〉
 
Artificial Large Intelligence Crowd Engine Network。澄崎市全域に張り巡らされているシステム。市から認可された魂の持ち主であれば誰でも使用可能。あらゆる公共サービスだけでなく、人が生きるのに必要なエネルギーの供給や人格のバックアップまでもが可能。

・Azrael〈あずらいーる〉
 アズライール。イスラム教において死を司る天使。アズラエル、アズリエル、イズライールとも呼ばれる。
 片手に全ての生者の名が記された書物を持ち、人が死ぬとそこから名が消える。全身に無数の目と口と舌を持つ異形の姿をしており、人の罪を見、語り、裁くといわれる。また民間伝承にはアズライールが天使の中で唯一アダム創造に成功したとある。これは、アズライールが魂と肉体を上手く管理し区別できたからである。その能力は生者に対するよりは死者に用いるべきだとして、神から告死の役割を与えられた。

・E2M3混合溶液〈いーつーえむすりーこんごうようえき〉
 Ether&Elixir‐Mercurial Micro Machine Cocktail。ヘルメスの水銀とも呼ばれる、ナノマシン群体の液相。擬似魂魄との接続により主に刃物として成型され、医療行為などに用いられる。天宮によって厳重に管理されている。ナノマシンなのに名称がマイクロマシンなのは、失効テクノロジー回避のための法的な言い逃れのため。

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