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わかってくれとは言わないが

病院の待合室。左隣に座るおっさんが、ずいぶん足を広げて座っている。
しかも、その足を前方に伸ばしているものだから、通路が狭くなっている。
ずっと左右にゆらゆら揺れながら、スマートフォンを見ているおっさん。
「足が長いです自慢はいいからさ、引っ込めろよ」なんて言えない私は、そっと右側の壁にもたれかかり、おっさんを視界に入れないようにすることしかできない。

子どもがギャンギャンと騒いでいるのに対して、何も言わずにスマートフォンを見つめるママ。
子どもはじっとしていられないし、静かにする方が難しい年齢でもあるから、ある程度は許容できる人が多いと思う。
けれどあまりに騒ぐので、周りの人もちらちらと視線を送っている。
病院はどこかしら具合が悪い人が来るのであって、できれば静かに自分の順番が来るのを待ちたい。
「ママ、形だけでもいいからさ、静かにしてねって注意しなよ…。」と、心の中で思う。

市営バスの車内。斜め前に座るお爺さんが、延々と貧乏ゆすりをしている。
しかも、通路に足がはみ出ている。混んできても、足を閉じる様子がない。
吊り革を掴む人が、脚の踏み場が無さそうで困っている顔をしている。

2人掛けの座席に、ドカッという効果音でもつきそうなくらいの勢いで座るおっさん。
大きい荷物もなにも持っていないのに、足を広げて座席を占領する。

車内が混雑しているのに、膝に乗せられるくらいの荷物なのに、2人掛けの座席を維持でも譲らないおばさん。

お年寄りがどんどん乗ってくる。
優先席の前に、おばあちゃん、おじいちゃんが手すりにつかまって立っている。
それなのに、優先席に座ったまま、イヤホンをしてスマートフォンから目を離さない若者。
「その座席、指定席なんですか?あなたの所有物なんですか?」と、問いただしたくなる。

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おい待て、と。
色々と、もの申したいことがあります。
けれど言ったら言ったで、その場が火の海になる可能性が大いにあるので、そっと心の中にしまっておくのです。
心の中でその人を軽蔑し、自分はそうならないようにしようと反面教師にします。
そして、イライラして不快な気持ちになっている自分に気づき、できれば別の、何か楽しいことを考えるようにします。
ざらざらとした心を、水で洗い流す想像をして、なんとか気持ちを整えていきます。
思うところはあるけれど、それにいちいちイライラして自分を削っていたら、疲れてしまいます。
ちょっとそれどうなの、という行動をする人たちに、「わかってくれ」とは言いません。
しかし、どうしてもやるせない気持ちになってしまうのでした。おしまい。

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