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華金にて

「明日仕事が休み」という事実だけで、エネルギーが湧いてくるから不思議だ。
島に来て、約2週間が経った。
島での暮らしも少しずつ慣れてきて、お決まりのルーティンも出来てきた今日この頃だ。
明日は仕事が休みなので、今日の朝から気持ちは軽かった。
大好きになりつつあるセイコーマートオリジナルのお酒を飲む、という楽しみも用意して、今日も張り切って働いた。

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仕事にも少しずつだが慣れてきた。
住み込みで働かせてもらっているので、ご夫婦とはある意味朝から晩までずっと一緒だ。
通勤は0分な訳だが共用部分が多いので、このような生活抵抗がある人もいるかもしれない。
しかしご夫婦はとても優しいので、不便だと思うこともなく、綺麗な洗面所や広いお風呂を使わせてもらっている。(もちろん部屋は個室だ。)
夜ご飯も、奥さんが手作りしてくれたバラエティ豊かなおかずたちが出てくる。
私は夜に米を食べないので心配されたが、休日たくさん食べるので、普段は節制しているだけである。
島の美味しいものを美味しく食べるためにも、メリハリをつけるのが大切だ。
健康診断で脂質異常症と診断されている私は、食べるもの、食べる量には自分なりのルールがある。
そもそも仕事のある日は、腹八分目くらい、少なめに食べる方が身体がよく動く。
こうして、身体に気を遣う平日、好きなものを思い切り食べる休日とメリハリをつけることで、健康や体型維持をすることができるのである。

働かせてもらっているお店が忙しい日には、近くのホテルからヘルプで派遣さんがやってくる。
私と同様、リゾートバイトとして島に来ている若い人たちである。
何回か一緒に働いて、歳が近いこともありすぐに打ち解けることができた。
栃木や大阪など、住んでいるところは様々だった。
島の人を始め、派遣さんたちの言葉のイントネーションがバラバラなのが面白い。
私は青森だから津軽弁。
栃木から来た子は綺麗な標準語で、大阪から来た子は関西弁。
同じく住み込みで働く女の子は福岡訛りであった。
島の人は、津軽弁ほどではないが東北の訛りに近い気がした。
話していて違和感を感じないのである。
そして、お客さんは日本人だけでなく、台湾人も多くやってくる。
声が大きくて食べ方もワイルドだが、みんな気さくでにこやかで楽しい。
日本の島のご飯が口に合うか毎回心配になるが、ご飯のおかわりの要望をたくさん受けることが多く、嬉しくなった。
日本という異文化の、しかも島という特殊な場所に来てくれたのだから、目一杯楽しんで帰ってほしいものだ。

働いていて気づいたことがいくつかある。
その中で1番大きい気付きは、「接客が向いている」ということだ。
私は人からも、よく接客に向いていると言ってもらえることがあった。
しかし以前の自分は、自分を犠牲にして、無理をして接客をしていたから辛いことも多かった。
けれど、様々なお店で経験を積み、自分への理解も深まったことで、「自分なりの接客」というものを掴めた気がした。
私が接客で輝けるかどうかの分かれ道は、「スピード」にある。
スピードをあまりにも求められすぎると、思考停止してしまう。
誰でもそうかもしれないが、私は極端にそうなのだ。
お客さん1人1人に時間をかけてあげたいし、丁寧に料理を提供したい。
食べ物の説明や、美味しく食べる方法など、必要ならば惜しみなくお客さんにサービスしたい。
忙しすぎると雑になってしまいがちだし、余裕がなくなるとミスもしてしまうだろう。
私はとてももどかしい。
島の美味しいものを提供しているのに、料理に感嘆の声をあげるお客さんが目の前にいるのに、次々と仕事をこなさなければならない状況。
これはなんていうものなの?と声をかけてくれるお客さんに、ゆっくりと対応していると後が詰まってくる。
料理を待っている、お腹を空かせたお客さんがいる。
焦る。ああ、どうしよう。でもな…と葛藤する。
もう少し穏やかで、1人1人のお客さんに時間を割けるお店ならば、間違いなく私の接客スキルは活きてくる。そんな自信がある。

お客さんと目と目を合わせて話すのが楽しい。
おかわりを頼まれた時、笑顔で対応する。
「お姉さんありがと!」とにっこりとした表情のお客さんを見ることができるだけで、嬉しいのだ。
美味しい美味しいとご飯を食べて、帰り際に私たち従業員にお礼の言葉をかけてから帰られるお客さん。
ああ、やっぱり接客が好きだなあと思う。
もちろん大変なこともたくさんある。
けれど、たった1人のお客さんの笑顔、一言、それだけで全てが救われる時がある。
だから私は、接客ばかり選んできたんだ。
2度と接客なんてやるもんか、そう思った時もあった。
けれど、その時の私と今の私は全然違う。
自分の扱い方、機嫌の取り方、ストレス発散方法、メンタルヘルスの知識。
たくさん得てきた。
これからの人生、きっと大変なことが多くあるかもしれないけれど、柔軟に、私なら上手いことやっていけるんじゃないかと思うのだ。
だから、青森に帰って探す仕事はきっと、人と関わる仕事なのだろうと思う。
地元青森で「居場所作り」をするという目標を掲げた私は、島に来て接客の楽しさを再認識することができた。これは本当に良かった。
私はやっぱり、人が好きなのだ。

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セイコーマートにて、焼きししゃもとゆずハイボールを買ってきた。
目の前の海を眺めながら、1人で乾杯。
店員さんの「良かったら温めましょうか?」の一言が嬉しかった。
明日は休み。
島が舞台となった映画が上映されるので、その完成披露上映会が行われる。
カフェの奥さんからチラシをいただいて、シフトを確認したら運良く休みだった。
明日はそのカフェに行って朝ごはんを食べて、映画を観に行こうと思う。
明日は思い切り楽しんで、心のエネルギーチャージをしたいと思う。
そして、貴重な島での暮らしを、1日1日噛み締めていきたい。

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