36才SEの転職日記 vol.5 最終回
ふとしたきっかけで転職活動を始めた36才システムエンジニアの日記。
妻子は里帰り育児をしており、転職を機に妻の実家のある島根県への移住を目論む男の日々の苦悩を綴ります。
時折出てくるアマデウスは我が家のねこの名前です。
2022/3/8 → 3/14のつづきです。
3/14時点の選考結果
A社 : プログラマでの選考辞退 → プロジェクトマネージャで最終結果待ち
B社 : スクラムマスターとしては不合格 → 別のロールで内定
C社 : 内定辞退
D社 : プロジェクトマネージャで内定
2022/3/15 → 3/22
3/15
朝早く出社してコソコソと退職届を書く。
まだ周知されていないのでそそくさと印刷した。
最近、現職の知人から紹介された、クランボルツのその幸運は偶然ではないんです!を読んでいる。
雑に要約すると、キャリアプランなんて立てようがない。人生は予期せぬ偶然に導かれる。ただその偶然を招き幸運に変えるのは日々の積み重ねなので行動したり発信したりしましょう。ってな内容だ。
計画的偶発性理論と言うらしい。僕はこの手の本が苦手だが、紹介されたら基本的に読むことにしている。
面白いほど現在の自分と合致した。この本に出合えてよかった。
知人は中途入社組で年齢も近い。皆これからのキャリアで悩む年頃なのかもしれない。知人には退職のことを伝えていないので純粋にお薦めしてくれたんだろう。なんにせよびっくりした。
もう一人自分の口から辞意を伝えたい方がいるので、可愛がっていただいていたのにすみませんと連絡を入れる。上位の立場の方なので、もう耳に入っているだろうとメッセージを送った。
聞いてないよ!?午後から時間をくれ!!と返信がある。
まじか…。気が重い。
予想以上の強烈な引き留めを受ける。ここまで引き留めてくださる方は初めてなので胸が熱くなった。今までもそうだったが、本当に僕のことを大切にしてくれていたんだとわかる。
ただ、想いに応えることはできません。としか言えない。
押し問答の末に、もう一度話す場を設けさせてくれと言われた。他にも一緒に話したい人がいると。最終的には、別の会社に行ったとしても僕個人に対して仕事を依頼できないのか?とまで言ってくれた。
断り切れず、後日話すことになった。
A社から内定の連絡と雇用条件通知書が届く。
嬉しい。希望額も守って下さった。ありがたい。
色々あったが結果として全ての会社から内定をいただけた。驚きだ。
夜、とある内定先企業の知人に連絡した。
実際のところどう?みたいなことを聞く。すごくいい環境っぽい。
できれば一緒に働きたいと言ってくれた。この方が勉強会で話しているのを聞き、あまりの衝撃に社内の業務改善を決意した。
恩人だ。人の縁って不思議だ。
妻に連絡を入れる。すごいねと褒めてくれた。
風来のシレンで遊ぶ。原始に続く穴を30階まで潜ってから寝た。
3/16
引き留め作戦が動いているらしい。ちょっと困った。とりあえず明日、社内の尖っている人達と話すことになった。
D社との条件すり合わせ。
十分な提示金額だ。プロジェクトマネージャと合わせて、組織マネジメント的なことにも興味はないか?と聞かれる。もちろん興味があると答えた。
わからんが多分そっちの方が向いている気がする。
気付いたことがある。
お給料は伝えた希望額がわりとそのまま提示されるということだ。僕が有能ではないからかもしれないが、うわー!こんなにくれるの!?嬉しい!ってことは起きなかった。
多分、目標金額があればしっかり伝える必要がある。
明らかに給与レートが高い企業ではない場合、よっぽどのことがないと、期待を込めてさらに百万円上乗せだ!ってことはない気がする。収入については、まあ下がらなけりゃいいやーくらいの気持ちでいたので、あんまり考えてなかった。
お金の話をするのが個人的に苦手なので再度交渉はあまりしたくない。どこを選んでも収入面での不満はない。
ひとまず全ての条件が出そろった。あとは決めるだけだ。
夜、ITコミュニティの友人に呼ばれたので食事をした。
ヘッドハンティングのお誘いだった。
転職活動が終わった旨を伝え、お断りした。人生のモテ期だ。
情シスの課長をしているが、採用で苦労しているみたいだ。僕がオープンセミナー岡山で登壇しているのを見て、色々と考えるきっかけになったと言ってくれた。こんなに嬉しいことはない。
三時間ばかし話し続けた。とても楽しかった。
3/17
引き留め会議に出た。
社内の中でも社外の世界やITコミュニティに強い関心をもつメンバーが、先日話した方を筆頭に集まった。
新規プロジェクトに参加してほしいこと、せめてあと一年やってから考えてほしいこと。僕にはとても期待していたということ。様々な想いを伝えていただいた。社内でも見ていてくれる人がいたんだってことを再認識した。
申し訳ないが、出ていくつもりだと。本当に僕の力が必要な時は、副業が可能なので発注してくださいと伝えた。
とても重くて長い一時間を過ごした。
俺はまだナカミチと一緒に仕事をすることを諦めていない、って言葉が嬉しくも心苦しい。いつか出戻ってくることを待っていると。
退職することが公になった。
個別にいくつかのメッセージが届く。
陰ながら応援していたこと。日々社内掲示板に書き込んでいたことに刺激を受けていたこと。一緒に働いてみたかった等。陰ながらではなく、僕が孤独な想いを抱えていた時に声をかけてくれていたらなぁ、とか思う。
全て決まった後ではどうしようもないんだ。
内定先の採用担当と条件の再確認をする。
担当者は緊張した面持ちだ。画面越しでもわかる。
ちょっと話がしたいと雑なアポの取り方をしたため、変な想像をさせたと反省した。こちらとしては条件にについて軽く話がしたかっただけだ。
緊張する採用担当を見て気がついた。この人は今までの僕だ。今度は企業側が選んでもらう立場になったんだと。
転職活動は求職者だけではなく、皆同じように不安を抱えている。
夜、師匠であるミトさんに会った。
物流業のシステム設計について話したいと先日連絡が入った。僕の現状についても報告しよう。
職業訓練時代の先生であり、プログラミングをはじめエンジニアの生き方について山ほど教えを与えてくれた恩師だ。不思議なもので、現在では僕が師匠に発注する側の立場になった。
出会ってから約十年。環境は変われど仲良くさせていただいている。
転職についてはびっくりされたが、新しい世界で揉まれてこいと力強い言葉をいただいた。また、副業がしたけりゃうちに所属してうちの口座を使ってもいいよとも言ってくれた。ありがたい。
師匠のおかげで僕はこの業界で生きてこられた。
転職以外にもシステム設計やDDDについて話した。楽しすぎた。
3/18
子どもの誕生日プレゼントを買いに行った。もうすぐ一才だ。
私の友人が勤めている、子ども向けセレクトショップ的なお店だ。
先日このお店のホームページが乗っ取りにあい、トップページが改ざんされた。友人から緊急連絡を受けて僕と井上さんでなんとか対応したこともあり、一度お邪魔したいと思っていた。
素敵なおもちゃがたくさんあった。そして結構高くて驚いた。
大歓迎された手前それなりのものを買わなくては引っ込みがつかず、それなりのものを購入した。子どものおもちゃ高え!
買い物袋の中にはお礼の商品券が入っていた。また来よう。
その後、街をプラプラする。
丸善のエレベーターで七階まで昇っている時、ふと、ITコミュニティでやってきたことや今まで出会ってきた人が浮かぶ。この三年間がつながる。
なんとなく参加し、衝撃を受け、ただ楽しいから続けていたことがここまで僕を連れてきてくれた。泣いちまいそうになる。
夜、妻がバレンタインに送ってくれた日本酒を飲んだ。双子の名前が一文字ずつ入った、仁勇という銘柄。
転職活動が終わったら乾杯しようととっておいた。
美味しい。
感慨に浸った。
3/19
二ヶ月ぶりに妻の実家に行った。
核家族で過ごしていた頃に比べて、妻の表情は明るく、健康的な肉付きになっていた。実家に帰ってもらって正解だったと思う。
子育てはコミュニティで行った方がいいと。核家族での子育ては可能であれば避けた方がいいと痛感している。僕の選択はきっと間違っていないはずだ。
3/20
妻と話し合い、進む企業を決めた。
あなたの好きなようにしたらいいよ、と言ってくれた。妻には感謝しかない。
子どもたちとくたくたになるまで遊んだ。
誕生日プレゼントに対して強烈な食いつきを見せてくれたので嬉しい。
もう歩きそうだ。二人の成長には本当に驚かされる。
3/21
妻と話し、島根に住むことに決めた。妻は僕の実家と迷っていたが、やはり過ごしやすい島根を選択した。助成金制度をうまく使って仕事部屋を借りようと思う。完全なマスオさんになるのはちょっとしんどい。
なんにせよ、これから始まる日々がとても楽しみだ。家族で過ごす時間を大切にしたい。
島根から広島に戻る。高速バスでの山道は辛い。
夜、炎上プロジェクトを共にした協力会社の方と会った。
遅かれ早かれ出ていくと思っていたよ。と言われた。僕の評価が皆そんな感じなので、よっぽど浮いていたのだろう。
大変な仕事を乗り越えた仲間との間には不思議な絆が生まれる。戦友とでもいうのだろうか。話が尽きない。
とても楽しい時間を過ごした。
ここ最近、導かれるようにお世話になった方々と会っている。この数年をおさらいしている気分になる。
感謝を伝える人がこれほど沢山いる。幸せだ。
二泊三日のお留守番をしたアマデウスの怒りは頂点に達している。
絶え間なくニャアニャアと僕の周りをうろうろする。離れると不安がるので、仕方なしに扉を開けてお風呂に入った。
3/22
それぞれ、御社で働かせてほしい旨と、内定辞退の連絡を入れた。
どこも素敵な企業なので、メールを打つ手が進まなかった。とても心苦しい。全ての企業で働けたらと思う。
どの企業を選択したか、ここには書かない。
僕が一番求められている環境を選んだつもりだ。
この後は淡々と事務手続きを行うことになる。
今日も何故かリファラル採用のDMが届いた。
オープンセミナー岡山で僕を知ってくれた方だ。アマデウスがJavaの本を匂っている写真を最近SNSで見かけ、こいつJavaに興味あるやんけ!と声をかけて下さったらしい。
何がきっかけになるかわからない。実に計画的偶発性理論だ。
転職の面談についてはもちろんお断りした。
一月から続いた転職活動が終わった。
転職日記もこれで最後になる。
夜、妻からもらった仁勇を飲んだ。美味い。
アマデウスはご飯を求めてないている。
これまで出会った素晴らしい方々と、最後まで読んでくれた皆様に感謝する。
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