CPAPハイスクール1〜無呼吸指数46.3回/時
私は生まれて初めて医者との会話を録音した。
断りを入れてないので盗聴と言われても仕方ないが、人生の節目に医者からの重大な診断を聞き逃すまいとした真っ当な行為であり、悪用するつもりはない。
会話の冒頭、スマホから流れ出てくるのは
「それでどうします?やりますか?」
という決断を迫る言葉。
医者はまくし立てた。
「1時間に20回以上でもうCPAP治療の適応なんですよね。1時間に20回というのはね。およそ3分に1回呼吸が止まっているという事なんですよ。46回ってことは、恐ろしいんですけど、1分30秒に1回いちょうさんの呼吸が止まっているということなんです。
これほっとくとね。
将来50、60代になった時にこれらの病気などが必発しますので」
医者はトントンと両指で冊子の注意書きの箇所を叩き
厚めのフォントで書かれた心不全、脳卒中、高血圧、二型糖尿病の文字がユラユラ泳ぎ始めた。
「睡眠時の呼吸ができてないと、糖尿病にもなるんですか?」
「そういう場合もありますし、元々の体質の可能性もあります」
すでに健康診断で糖尿の数値が再検査に扱いになっていた私は恐る恐る医者に血液検査の結果を見せると、医者は渋い顔を頷かせながら言った。
「断定はできませんが、平常時にこの数値は糖尿と疑われても仕方がないですね」
(それはもはや断定であろう…)
「CPAPの適用は、あり過ぎるってぐらいありますね」
長野県のとある農家の裏庭で、友人のツネさんとその親友のヒトミちゃんの3人で煙草を吹かしながらスマホに録った録音を聞いた。
「あたし必発なんて言葉を医者が言うの初めて聞いたわ」
「タバコも辞めなきゃだね」
「そうだろうねえ」
録音テープの中の私は医者の前で笑い飛ばしなら聞いていたのだが、それを聞く3人は笑えなくなっていた。
焼却用に置いてあるドラム缶に、枯れ草を入れライターで火をつけた。
勢いよく燃える炎に吸殻を投げ入れ、立ち上る煙を3人で見つめる。
「年内は吸うよ。沖縄帰ってCPAP始めたら辞める」
どうやら私の身体は夜な夜な死にたがっているらしい。
「よかったじゃん!今わかってさ」
閉鎖性睡眠時無呼吸(重症)
今わかってよかった。
そう思う他ないから、そう思うことにした。
参考記事↑ ごとうなゆこ氏
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