思想

あなたの思想はどのように形成されてきましたか?

渡辺公三氏の著書『レヴィ=ストロース 構造』を読了。本著は、社会人類学や民俗学、構造主義などで著名なレヴィ=ストロース氏の生涯を、年代順に記述された内容になっている。レヴィ=ストロースは、一般向けの哲学本で何度か名前は見かけていたものの、今回初めて概要について知ることが出来た。構造主義者と言われているが、中にはそれと感じさせないような思想も含まれており、奥深さを感じる内容であった。

本著で面白かったのは、一人の哲学者の人生に焦点を当てて、時系列に説明が加えられている点だった。その中には、思想の変遷はもちろんのことではあるが、その背景にどのような行動を取り、どんな出会いがあり、誰とどんな議論をしたのか等のエピソードが盛り込まれていることだ。若い頃のフィールドワークや政治活動、教職などを経て、最終的に教授職を得ることで著名になっていくのだが、若い頃の経験が思想形成に大きく影響を受けている様も描かれている。

初期の頃は家族に焦点が当てられているが、そこから社会、言語、神話、自然、歴史など様々な対象に対しても構造的な考察がなされてきている。老成するにつれて視座が高まり、視野も広がって、それが世界観を形成しているように感じた。また、その過程で同世代の様々な哲学者との語らいや批判合戦なども行われながら、思想が深まっている様も感じられた。一つの専門分野にのみ留まるのではなく、幅広い分野から自身の体験をもとに思想を深めていく姿には感銘を受けた。

レヴィ=ストロース自体の思想は、難しくて理解できなかった部分も多々あるが、それでも面白く読めたのはヒストリーが感じられたからかもしれない。そして、思想を通して社会に大切なものを訴えかけようという想いを感じられたこともあるだろう。

過去の哲学者達が、情報が瞬時に手に入る現代社会で成長したとしたら、どのような思想形成をして、どんな結論に辿り着いたのだろう。そのような妄想もしながら、それは自分が人生の中で考え続けることで、少しは分かってくるのかもしれない。多様性の世の中で、色々な視点を取り込みながら、自分の考えが変わっていく様を楽しめる人生にしていければと思う。

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