ミッション

あなたのミッションは何ですか?

『ビジョナリーカンパニーZERO』を完読。本著はビジョナリーカンパニーシリーズ①~④の原点ともなった『ビヨンドアントレプレナーシップ』の内容に、著者のこれまでの経験を大幅加筆した内容となっており、考察には①~④に出てきた内容も盛り込まれている。

ビジョナリーカンパニーは凡そ10年ほど前に①~④を一気読みした。ちょうど韓国の現地法人に駐在をしている頃で、当時は本体では非管理職ではあったものの、現地法人では管理職扱いだった。そのため、実質的に初めてマネージメントに携わった(日本でも研究で5~6名程度の小グループを主導した経験はあったけれど)。初めてのマネージメントが価値観も異なる海外ということもあり、とにかく勉強が必要だと感じ、手当たり次第読書をしては実践をしていた。よくあるHow to本や、グロービスのシリーズ本、ドラッカー関連の本なども読んだが、当時一番共感を覚えたのがビジョナリーカンパニーだったように思う。この現地法人のありたい姿は何なのか、ミッションは何なのか。そういったことを他の駐在員や現地社員と、時には酒も交えながら語り合っていた。当時は感情制御も下手くそだったし、コミュニケーションスキルも無かったので、時には感情をぶつけ合いながら、怒鳴りあったりもしたけれど、それも今となっては良い思い出であるし、貴重な経験にもなっている。

当時、自分がうまく出来たとは全く思っていないけれど、しっかりと将来について仲間と語り合い、目標を一緒に作ることで、個々が規律をもって動くようになったことは実感できた。ミッションとしては、現地R&Dが、顧客にも営業にも本体にもしっかり認知し信頼されることを目標に、研究も育成も手探りしながらやったけれど、辛い中でも仕事としてのやりがいは感じられていた気がする。

さて、冒頭の本著を読んでの感想は、内容としての真新しさはそれほど感じなかったけれど、こうやって過去読んだ時の気持ちを思い出せたことが一番大きな収穫だったかもしれない。そして、当時と比較して今の自分はどうなのか?情熱やがむしゃらさという意味では当時の方が圧倒的にあったけれど、今は仲間を観察して強みを確認し、コーチングや指導を適宜しながら、チームが規律のある動きをすることを、時には失敗も許容しながら、信頼して見守る。その中でコミットしたミッションや、現実の問題からは目をそらさず、仲間が顧客に価値提供できるところまで伴走する。そのようなスタンスなので、仕事の楽しみ方が、自分が動くことから、仲間のプロセスや成長を見守ることに変わったんだろうと改めて感じる。だから、日々の刺激という意味では物足りない日も多いけれど、長周期かつ持続的な達成感を得られやすくなったかもしれない。

一方で、ミッションとして完全に腹落ちが出来ていない部分があるとしたら、我々が提供する素材を使って、最終的に顧客が創り上げるテクノロジーそのものが、社会や人間の幸福にとって善なのか悪なのか。スマホ、通信、AIなど、使い方次第ではどちらにでもなってしまう技術開発に対して、素材を売ることで対価をもらうことが正しいことなのかどうなのか。あまりに多様な世の中で、資本主義自体の問題を考えてしまったり、その中での企業の在り方を考えたり。哲学的な問いを持ちつつも、決断をしていくことは重要だから、まずはミッションを遂行する。でも、こういう葛藤があるからこそ成長できる訳でもあるので、問いは心の中に持ち続けながら、自分なりに納得のできる考え方を模索はしていきたい。


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