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思い出の場所

赤羽駅での再会を果たした後、横浜への買い出しに行ったが、それからも連絡を頻繁に取り合い、一緒に食事をしたり、自宅で料理を作ってもらったりと付き合いを続けていた。

2016年11月3日(金)
この日も、六本木の東京ミッドタウンで、仕事後に会う約束をしていた。
東京ミッドタウンでは、紅葉のライトアップが施されており、多くの人で賑わいを見せていた。

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夜になると少し肌寒く、羽織が必要な時期になっていたが、夜風が心地良い時期でもあった。

この日、私は東京タワーの近くに、ディナーのお店を予約していた。

アクセスを調べてみると、意外にも、六本木から東京タワーまで徒歩15分程度の距離にあったため、2人で歩いて向かった。

地下にあるお店のため、「東京タワーを眺めながらの食事」なんてことはできなかったが、お忍び感のある、こじんまりとしたバーレストラン的な雰囲気なお店で、カウンターに並んで座った。

彼女は、「ベリーニ」というカクテルが何かを僕に聞き、学生の頃、バーで働く経験があった僕は、「ピーチネクターをスパークリングで割ったもの」だと説明した。

「美味しそう!」と興味を持った彼女はそれを注文した。

程よくお酒を口にしながら食事をした後、そこから徒歩で東京タワーに向かった。

東京タワーは近くになるほど大きく見え、どちらに向かえば辿り着くかあまりにも明快だったが、僕はぐるぐると彼女を連れ回した。

人通りも少なめで、かつ東京タワーが一望できる、どうもしっくり来る場所が見つからなかったのだ。

最終的には、東京タワーの麓に落ち着き、ようやく2人で腰掛けた。

そう、この晩、私は彼女に交際を申し込もうとしていたのだ。

かつて10年前に出会った時は、彼女は4歳年上で社会人で店長を勤め、一方、僕は20歳の学生アルバイト。好意を抱く対象というよりは憧れという方が正しかった。

しかし、再会した今はその時とは大きく状況が違っていた。

僕も社会人になり4年目。それなりに会社にも慣れてきた頃。
同じ4歳の差なのに、10年前とは大きく違って感じていた。

この日、東京タワーに見守られながら、ベタベタのシチュエーションの中で、交際は無事に受け入れられ、昨晩中に用意していた私の自宅の合鍵を渡した。

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大学生の頃、どハマりしていたフジテレビの「プライド」というキムタクのドラマの真似だったが、彼女はこの事実を4年後に、偶然このドラマの再放送を一緒に見ていた時に気づくことになる。

散々、告白するためのシチュエーション選びに苦戦したが、結局、麓に辿り着き、2016年11月3日(金)22時、ここが2人にとっても『思い出の場所』となった。



この時、どうすれば彼女に気づけただろうか。
私の30年の人生の生き方がどう違っていれば、彼女を救うことができたのか。

ゴメンね。俺がこの時、もっとしっかりしていれば。

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