6.神聖なる…

【登場人物】

高木 秀才(たかぎ ひでとし)、原 春(はら はる)、原 秋(はら あき)→『1.これが生徒会』参照。

島田(しまだ)、上里(かみさと)→『2.俺も生徒会』参照。

白鳥 沙月(しらとり さつき)→『3.謁見』参照。

水谷 広子(みずたに ひろこ)→生徒会副顧問。教師一年目で国語科担当。まだクラスは持っていない。幼い頃見たドラマの教師にキラキラとした憧れを持ち教師になった。

以前の物語はマガジン『これが生徒会!』
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神聖なる…

ナレーション:金曜。今日は今年度初の生徒会役員会議がある。

秀才:むむむ…もう給食だが緊張して食欲が…

島田:日直〜、「いただきます」やって~。

日直(2人):はい。(前に出て)いただきます。

クラス一同:いただきます。

皆食べ始めるが腕を組んだまま動かない秀才。

生徒1:せんせー、学級委員っていつ決めるんですか?

島田:うん、この後5時間目に決めなきゃね。

生徒1:お前やれよ。

生徒2:えー、やだ。

ワイワイしている教室。

生徒3:高木とか良いんじゃないの?

生徒2:あ、そうだよ。行事とか真面目だし「皆の者!我に従え!」的な感じで仕切ってくれるよ(笑)

秀才:なぬ!?ダメだ!俺には生徒会としての任務がッ…!

生徒3:任務(笑)お前キモいよな。

秀才:き、キモい…だと…?

島田:そういう事言わない。

生徒1:えー、だって変だし。

島田:個性的だけどね、だからってイジメて良いわけじゃないよ。

生徒3:別にイジメてないし。

生徒2:浮いてるのは確かでしょ。

秋:まあまあ、確かに変な奴だけど面白くて良い奴だよ。困ってたら助けてくれるし!

生徒2:お前高木と付き合ってんの?

生徒1:マジ!?ウケる!

秋:まあ、よく遊ぶけど…

生徒4:付き合うってカレカノとかそういうさ。

秋:え!?えええええ!?

島田:別に誰が誰とお付き合いしようといいでしょ。

秋:いや、違います。なんて言うか家族みたいなもんなんで、そういう意味で気持ち悪いです(笑)

無言の秀才。

生徒4:あれ?高木…?結構傷ついてたりする?

からかっていた生徒達へ対して視線を向ける他の生徒達。

生徒3:え、何?俺ら悪いの?

ナレ:静まる教室。しかし秀才の心はそもそもここにあらずであった。


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ここまでの秀才視点。

秀才:なぬ!?ダメだ!俺には生徒会としての任務がッ…!

生徒3:任務(笑)お前キモいよな。

秀才:き、キモい…だと…?

秀才(独白):「キモい」この言葉は今までもいくらか言われてきている。しかし、皆軽々しく使う言葉故、本気で傷ついた事はない。だがしかーし!この言葉で深く傷つく者もおろう。中学生…まだまだ世の中を学んでいる身だ。悪意なく罪を犯してしまう者もいる。清く正しい生徒の姿こそ良き学園の姿そのもの。俺は一生徒として、生徒会役員として、皆の手本とならねばな。

秋:まあまあ、確かに変な奴だけど面白くて良い奴だよ。困ってたら助けてくれるし!

秀才(独白):うむ。そして今日は会議なわけだが。食が進まぬ…ぐぬぬ…!だが食わねば!戦に勝てぬと言うしな。俺の欠点はこの余裕の無さ。落ち着け、落ち着くのだ。生徒会長になるのだろう?白鳥会長も落ち着いた見事な風格であった。今日からしっかり学ばせてもらわねば。

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生徒4:あれ?高木…?結構傷ついてたりする?

生徒3:え、何?俺ら悪いの?

島田:まったく。だからね、やってる方はちょっとイジってるだけだと思ってても、やられた方は本当につらいと思う事はあるんだよ。そういうのが、イジメになるわけ。

静まる教室。

生徒1:えっと…なんか…

島田:なんか何?

秀才(独白):さて、まずは腹ごしらえだな。体を整える事は心を整える事へ繋がるのだ。逆も然り。テレビでもそう言っていた。

生徒1:…すみません。

島田:先生じゃなくて本人に謝るんじゃないの?

秀才、一口食べる。

秀才:う、うまい…!

生徒2:高木、ごめん。

秀才(独白):うまい!今までも食べていた給食だが、改めてうまさに気付いたぞ!これは給食のおばさん達…いや、おば様方の努力の結晶!!!食欲の無さなど忘れる!

秀才:皆!改めて気付いた!給食はうまい!これは力になる!感謝して頂こう!

生徒4:は?どした?

島田:高木君、大丈夫?

秀才:大丈夫とは?

島田:いや…みんながふざけて色々言ってたからさ。つらかったかなと。

秀才:そうでしたか。しかし、僕はしばし考え事をしていたもので周りが見えていませんでした。お気遣い頂いた所申し訳ない…

島田:え?あ、そう。気にしてないなら、まあ…よかったけど。でも、みんな、安易に人をからかったりしないように。

生徒達:はーい。

秋:あれが秀なんだよ。

生徒4:あれが…ねぇ。


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5時間目。

島田:じゃ、とりあえず日直、前に出て仕切って。

日直(2人):はい。

日直1:学級委員やりたい人いますか?

シーーン。

島田:ちょっとちょっと、誰かやりたい人は?

日直2:やりたい人ー

シーーン

島田:えー、みんな積極的にやろうよ!内申とか気にならない?来年受験だよ。

秀才(独白):皆、萎縮しているのか?クラスを取り仕切るという大役に怯えているのだろうか。

生徒1:原、やれば?

秋:なんで?そういうのなんかなー

生徒1:小学生の時やったことあるじゃん。

秋:5年の時でしょ?出番なんてほとんどなかったじゃん。

日直1:じゃ、原さんでいいですか?

秋:え?

秀才:秋なら適任。意義なし!

生徒2:家族が言うなら間違いなしじゃん!

生徒1:確かに!意義なし!(笑)

秋:いや、家族みたいとは言ったけど

日直2:はい、じゃ、あと1人は誰にしますか?

秋:え?あたし決まり?

島田:元気よくクラスを引っ張ってってくれそうなのでお願いします。

秀才:うむ。秋、頼んだぞ。

秋:えーーー!

ナレ:その後もう1人もなんとなーくで決まった。そして、放課後。


秋:秀、適当に任命したでしょ。

秀才:何を言うか。秋は明るく人気も高い。クラスのリーダーたる素質があると思ってだな。

秋:まぁ、学級委員って内申書に書けるとか言うし、良いか。毎日何かする訳でもないし。

秀才:いいや、日々クラスの皆の様子を見守り、時に助け、共に成長するという使命が

秋:はいはい。あ、生徒会の会議でしょ?遅れるよ。じゃ、先帰るね!

秀才:な…なぬ…ッ!忘れておった!

ナレ:秀才はつくづく浅はかである。ストレートに言えば…そう、馬鹿である。

生徒会室前

秀才:こ、こここ、ここが生徒会室ッ!あ、開けても良いのだろうか!?

背後に白鳥。

白鳥:ねぇ、入るなら早く入ってよ。

秀才:か!会長!

白鳥:え、会長って呼び方すんの何?

秀才:いや、会長ですし!

白鳥:確かに生徒会長だけど、会長って呼ぶ人いないよ。白鳥先輩でしょ、普通。

さっさと入室する白鳥。

秀才:失礼であったのか…?

集まった生徒会メンバーと顧問達。

上里:それじゃ皆さん集まりましたね。白鳥さん始めてください。

秀才(独白):き、来た!白鳥会長の凛々しいご挨拶が…!

白鳥:はい。えーっと、生徒会長の白鳥沙月です。よろしくお願いします。

間。

上里:…ほら、会長が次進めて。

白鳥:はい。えっと、次は副会長…です?

上里:はいはい、じゃ、こう、時計回りに挨拶してって。

秀才(独白):ぬ…ぬるっとしている……ッ!ご挨拶はもっとこう…とにかく凛々しいものと言うか!

役職と名前だけを言う自己紹介が回ってくる。

上里:高木さん?最後は高木さんですよ。

秀才(独白):白鳥会長がこんなにもグダグダだとは…!しかも教師が仕切っている!!!!

上里:高木さん?

秀才:あ、はい、庶務の高木秀才です。よろしく…

秀才(独白):いや、待て。ここで俺が示してやらねばならないのではないか。学園を導く生徒会役員たるもの、ここで意気込みの一つくらい!

秀才:えと、僕は庶務として

上里:はい、皆さんよろしくお願いします。

秀才:あ…

上里:ああ、あと私達も挨拶しとこうね。顧問の上里です。

水谷:えー…副顧問の水谷です。よろしくお願いします。

上里:水谷先生は先生1年生だから、みんなも支えてあげてね。あらま、先生1年生って何か変ね(笑)

水谷:あ、ははは…

上里:あ、じゃ、ここからは水谷先生よろしくね。私見てるから。

水谷:え、え、どうしたら

秀才(独白):水谷先生…教師一年目にして生徒会の副顧問か。さぞ緊張しているのだろうな。

水谷:はい、それじゃ、来週の金曜は生徒総会があるので、生徒会長白鳥さん、概要を発表してください。…で良いのかな。

白鳥:はい。プリントを見てください。来週の水曜の学級活動で各クラスの皆さんに学校への要望を提出してもらいます(棒読み)

秀才(独白):教師が仕切り、会長は書いてある事を読み上げるだけ…これが生徒会役員会議…!

ナレ:期待した方が馬鹿だったのである。