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行きたい気持ちに従え|#忘れられない旅

「趣味は旅行です」
と言う人ほど、

頻繁に旅に出るわけでもないし、
訪れた場所が格段に多い訳でもない。

でも、
旅行は好きだ。

今の旅の目的は、
何より家族との思い出をつくることで。
美味しいものを食べて、美味しいね、と笑い合うこと。


独身の頃は少し違って。

沸々と湧き上がってくる「変化を欲する」心が、
ある日突然爆発して、

そうしてよく旅に出ていた。


初めて一人で旅した場所はニューヨーク。

一人でイタリア旅行をしたと話す友人に憧れて
「私も海外に行きたい!」
と強く思い、周りの友だちに声をかけるものの誰もイエスと言ってくれず。

それでも自分の中の衝動を抑えきれなかった私は、
「一人で行こう」
と決意したその日その足で、
銀行でお金を下ろし、そのまま旅行会社へ行き、キャンセル料を払わなければ無かったことに出来ない2週間後の予約をした。

当時、二十歳。
まだ海外携帯でないと通話出来ないような時代で。
帰ってそのことを話すと両親にこっぴどく叱られた。
でも、頑なに自分の意思を通した。


田舎暮らしの私は、飛行機の乗り換えも分からず。

事前に旅行会社の人に話を聞いて、
『はじめての海外旅行』という本だけを頼りにニューヨークへと旅立った。


美術科の学生だった私。

ニューヨーク行きの主な目的は、
メトロポリタン美術館とMOMAに行くこと。

あとは、ブロードウェイミュージカルを観て。
現地で世界のご飯を食べる。


楽しみにしていた美術館は、
なんだか記録に残すことばかりを意識してしまい、写真ばかり撮っていた。

せっかくの、あんなに素晴らしいアートの数々に触れる機会だったのに。
写真なんて要らないから。
もっと心で感じる時間にすれば良かったのに。

でもまぁ、それもいい思い出。


ニューヨークで一番心に残っているのは、
ブロードウェイで観た『ヘアスプレー』のミュージカル。

初日に入れていた半日オプションツアーで、
東京の舞台関係で働く三人組の優しいお兄さんお姉さんと仲良くなり。

その方がくれたチケットがものすごく舞台に近い良い席で。
前に背が高くて頭の大きな人が居ることを除けば、最高の席。

初めて観るミュージカルがブロードウェイなんて、なんて贅沢なんだろう。

クライマックスで響きわたる歌声に、私は文字通り鳥肌が立ち、感動して自然に涙が溢れた。
そして、観客席ではスタンディングオベーション。

演じてる最中でも歓声が上がり観客が立ち上がる様は日本で見たことがなく。

あぁ、こうして素晴らしいものを体感して感動したことを素直に表現できるなんて、すごく素敵な文化だな、
と感じた。


そして、もうひとつのニューヨークでの思い出。

それは、
ものの見事に迷子になったこと。

『地球を歩こう』に載っていた有名なベーグル屋さんに行こうと地下鉄に乗る。

いっぱいあってわからない。
英語も読めない、話せない。

なんかコレっぽい、という電車に乗ってみると、

あれ?
なんかおかしいぞ。

10分くらいで着くはずなのに、
いっこうに停車する気配がない。

よく見ると、
なんだか乗っている人の顔ぶれも黒人さんが多め?

あれ…?
あれあれ……?

間違えたことに気づき出した私は、
近くにいたアジア系の人に尋ねてみる。

でも、なんか通じない。
通じない上に、なんか路線図でさらにおかしなところを指さしてくる。

いやいや、ヤバい。
この人も分かってない人だわ。

そう勘づいた私は、最初に着いた駅で急いで降車。
降り立って、街に出てみると。

高いビルも雑然とした街並みもなく。
道がすごく広くて建物も急に低くなって。

あ、、、
ヤバい、私死んだかも…。

ガイドブックで見た治安の悪いエリアに来てしまった。
帰り道もわからない…!!


結局私は、間違えて特急電車に乗っていたのだ。
マンハッタンから出てしまっていた。

駅に急いで戻って、
優しそうで髪が長くてスラッと背の高い女性に、そのとき話せるありったけの英語で声をかけた。

「I want to go Manhattan!! Where?!!」

必死の形相で謎の英語を話す私に、優しく「Eの改札よ」と教えてくれたあの時のお姉さんに心から感謝したい。



初めて行った一人での海外旅行は、
とても予定通りとはいかなかった。

英語が分からず、行く先々でため息をつかれ苛立たれ。
迷子になるから目的地に着くまでに倍の時間がかかり。

そんな失敗続きの旅だったけど。

行こうと自分で決めて、
自分で調べて、
そして無事に帰ってきた。

勇気と勢いで、えいやっ!と飛び込んだこの経験は、
この後私が生きていく上でとても大きな自信になった。

息子たちには、ぜひ若いうちに海外に行って欲しいと思っている。

日本とは違う考え方や価値観に触れて、
カルチャーショックをたくさん受けて欲しい。
それが、その先の人生の大きな糧になると、
私自身が身をもって体感したから。



旅は行くたびに、いろいろな経験をくれる。

どの旅も私にとっては忘れられないものだけれど、
このニューヨーク旅行は、今でも私に勇気をくれる忘れられない思い出だ。

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