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光る君へ(29)天才ファーストサマーウイカが演じるききょうのスゴさについて考えてみた・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック
大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。今回は第29回の学びポイントです。
歴史の知識や「源氏物語」については一切触れませんので、予めご了承ください。
今回の学び:ききょうのスゴさ
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突然ですが、皆さんは「まひろ派」ですか?「ききょう派」ですか?
私は圧倒的に「ききょう派」です。
ききょうというキャラクターは、「光る君へ」の中で唯一無二であり、魅力という点で、主人公であるまひろを圧倒していると思います。
どういうことか、詳しく説明します。
「母として」ではなく…
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ちょっとひねくれた見方ですが、ききょうのスゴさは、今回のタイトルにあらわれています。
なぜなら、主要な女性登場人物の中で、ききょう唯ひとりが、「母として」というタイトルに背を向けているからです。
「母として」というタイトルは、まひろだけでなく、他の女性登場人物の思いや行動もまとめて指し示しています。
まひろは娘・賢子の将来を案じ、道長の申し出を断った父・為時に、強く翻意を促します。
道長の正妻・倫子は、娘・彰子が帝に愛されるよう、何かと心を砕きます。
道長の妾・明子は、帝の前で舞う息子を見て、満足気に微笑みます。
帝の母・詮子は、病の穢が移ることを恐れ、帝が心配して触れようとするのを制止します。
唯一、ききょうの振る舞いだけが、「母として」というタイトルとは無縁です。
今は亡き皇后・定子のすばらしさが語り継がれるようにと「枕草子」を書き上げたききょうは、宮中に広めてほしいと言って、それを伊周に託します。
息子を捨てた母
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第14回で、ききょうはまひろにこう言いました。
「私は私の志のために、夫を捨てようと思いますの」
「息子も夫に押っ付けてしまうつもりです」
「私は私のために生きたいのです」
つまり、ききょうは自らの志のために、息子を捨て、「母として」生きることをやめたわけです。
このセリフは大変薄情で自分勝手なように聞こえます。
しかし、ききょう以外の「母たち」が、子への愛情と献身のみで生きているかというと、必ずしもそうではありませんよね。
倫子は道長に追従して、政のいけにえとして彰子を入内させました。
明子は道長の愛を得るために息子を利用しています。女院・詮子は円融天皇に愛されなかった怨念を、息子である一条天皇で晴らそうとしてきました。
皆、子供を自分のために利用しています。
まひろに至っては、民を救うだのなんの言っていた「志」はどこへやら、道長がその権力を使って父・為時や夫・宣孝に何かと便宜を図ることに何の疑問も抱いていないように見えます。
それに比べて、ききょうの生き方のなんと潔いことか。
定子への献身的な愛、一貫して理想を追い求め続ける意志の強さ、そういった観点で見れば、ききょうというのは本当にカッコいいキャラクターです。
主人公とヒーロー
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まあしかし、身も蓋もないことを言ってしまえば、ききょうがカッコいいのは、「主人公ではない」からですよね。
映画やドラマの主人公は基本的に、見ている我々が感情移入できるよう、我々と同じような「弱さ」を持っている必要があります。
まひろがヌルくてウジウジしていなかったら、我々は彼女に自分を投影することが出来ません。
一方で我々は、自分とはまったく違う理想のヒーローに憧れます。ききょうはそれですね。
誰もがききょうのような「強さ」に憧れますが、彼女のように生きることはまず不可能です。
ちなみに、同じようなことは、道長と彼の父・兼家にも言えます。兼家はいわば「悪のヒーロー」であり、「父のようにはなりたくない」という道長は、まひろ同様、我々に近い存在です。
ききょうと兼家の類似については、第14回の動画でも分析していますので、よろしければ是非ご覧ください。
天才・ファーストサマーウイカ
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最後に、ききょうのスゴさを語るうえで、それを演じているファーストサマーウイカさんの好演を無視することはできませんよね。控え目に言っても、彼女はある種の天才だと思います。
それから、ききょうの鬢が前にハネているというアイディアも素晴らしいですよね。ききょうの「強さ」を、史実を逸脱せず上手く表現していますし、ファーストサマーウイカさんにとても似合っていると思います。
ききょうの今後の活躍が楽しみでなりません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99
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