見出し画像

まひろは何故さわの訃報で結婚を決断するのか考えてみた・光る君へ(24)で学ぶ脚本テクニック

大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。今回は第24回の学びポイントです。
歴史の知識や「源氏物語」については一切触れませんので、予めご了承ください。


今回の学び:むなしい気分

まひろに結婚を決断させたのは、なんと「さわの訃報」でした。
さわの死を知って「むなしい気分」になったまひろは、父・為時に、宣孝と結婚するという意志を告げます。

まさかここで「さわの訃報」がカット・インするとは、まひろだけでなく視聴者にも予測不能でした。だからこそ、両者に与えるインパクトは絶大だったといえます。

人生の岐路で決断するとき、最後に人の背中を押すのは「理屈」ではない
この展開には、そんなメッセージが込められていたように思います。

まずは詳しく振り返ってみましょう。

シーン振り返り

まひろは手紙でさわの死を知ります。

「さわさんが亡くなられたそうでございます」

手紙には まひろに会いたい心情を綴った歌が添えられていました
それを見た為時が言います。

「お前にまた会いたいと思いながら亡くなったのだな…」

続くシーンで、まひろは結婚の意志を明かします。

「都に戻って、宣孝様の妻になろうかと思います」

突然の告白に驚く為時に、まひろは言います。

「さわさんのことを知って、ますます生きているのもむなしい気分で…」

動機≠決断

今回は、まひろが結婚を決断するに至るまでのプロセスを描く回でした。
まひろが結婚するには「動機」、つまり「まひろはなぜ結婚するのか」という理由が必要です。

宣孝の決め台詞「ありのままのお前を丸ごと引き受ける」も、周明の捨て台詞「宋はお前が夢に描いているような国ではない」も、まひろが結婚するための動機を作るためのものです。

宣孝に求められ、周明に幻滅したまひろの気持ちは当然、結婚に傾きます。しかし、だからといって、結婚を「決断」するかどうかは、また別の話です。

なぜなら、決断とは理屈や気持ちを超えたものだからです。
今回のまひろの描き方を見て、このことを再認識させられました。

キャラクターの行動には動機が必要ですが、それを踏まえたうえでキャラクターがどう判断し行動するかは、また別の問題です。その判断や行動を通じて、我々はキャラクターの内面や性格 つまりキャラを感じ取ります。

今回、まひろはさわの訃報によって「むなしい気分」を強く感じ、それが結婚を決断する最後の引き金となりました。
この流れは、まひろのキャラを何より雄弁に語っていると思います。

心が受ける衝撃

脚本的にに言えば、まひろの決断を描くために、さわの訃報シーンが導入されたということです。

ですから、手紙が誰からのもので、死因は何であったのかは、視聴者には一切示されません。まひろの心が受ける衝撃にだけフォーカスするためでしょう。

明るく元気で、一時は姉妹のように暮らした友人の訃報。

「私は何があっても病にはならない頑丈な体なのですが」

という第十七回のさわのセリフが頭をよぎります。

シンプルな描写だからこそ、まひろが感じた「むなしい気分」が強く表現されていたと思います。

「忘れえぬ人」

今回のタイトル「忘れえぬ人」は、まひろにとっての道長だけでなく、他のキャラクターにとっての「忘れえぬ人」も含むニュアンスがあると思います。

今回唐突に、まひろは乙丸妻帯しない理由を問います。
乙丸は答えて言います。
まひろの母が殺されたとき、自分は何もできなかった。だからせめて、まひろだけは守ろうと誓った。自分の身はひとつなので、それだけで精一杯だと。

考えようによっては、まひろの母・ちやはが、乙丸にとっての「忘れえぬ人」です。その「忘れえぬ人」の記憶が、乙丸の人生から選択の可能性を奪っている、そう解釈することも可能でしょう。

さわの訃報で人生のはかなさを感じたまひろは、「忘れえぬ人」道長への思いが選択の可能性を奪っていることを、改めて意識したのかもしれませんね。

それが「私ももうよい年ですし」「子供も産んでみとうございますし」というセリフに表れているように思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99

動画


この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,700件

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!