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好きな言葉は「替え玉無料」です。 感想:『花束みたいな恋をした。』

めちゃくちゃ面白かった。
死ぬほど良かったです。それしか言えない。
菅田将暉演じる山根麦と有村架純演じる八谷絹の20代前半の5年間を共に過ごしたラブストーリー。
脚本家が坂本裕二で監督が土井裕泰とカルテットのコンビだったということと、テレビ東京の佐久間宣行さんが、試写会でみたら、めちゃくちゃ良かったと言っていたので、観にいった。

5年間のという前置きから、もうすでに何故か見る前から、「きっとこの映画は好きになるだろうな」と思っていた。結果、やられました。
二人とも音楽や本、映像が大好きで、魔女の宅急便の実写版を語る人に冷めてしまうタイプ。そして、ふたりとも、コンバースのジャックパーセルを履いて、JAXAのトートバッグを使って、文庫本を持ち歩いている。麦の家にいった絹が、本棚をみて、「ほぼわたしの本棚じゃん笑」というのが、最高だった。似ているもの同士が惹かれるのには時間はかからず、二人は付き合う。
劇中に出てくる本で穂村弘やいしいしんじ、今村夏子、ゴールデンカムイとか出てきて、カラオケのシーンでは、きのこ帝国のクロノスタシスを歌っていて、「わかる!わかる!」とめちゃくちゃニヤニヤしながら頷いてみていた。

多分、この映画をみた一定数の人は、自分自身を重ね合わすと思う。
自分も好きな言葉や苦手なものを考えたし、自分だけ考えている普通の人が飲み込めないものを思い出していた。
絹が、定期的に読んでいたブログとかも、みんながずっと追っている、自分だけの言葉の先導者を思い描いていたはず。
andymoriが解散したね、西加奈子のサラバ、一気に読んじゃったよ。響は読んだ?新海誠はやっぱり言の葉の庭が面白いよね。なんて自分も話していたはず。

ただ、映画の予告で言っていたように、これは5年間の二人の物語だ。
終盤に向かって、恋の終わりが見えてくる。
映画の中でふたりが離れていってしまうのは、簡単に言ってしまえば、すれ違いだし、どちらかが悪人でもない。作品的に麦の方が、絹のことをみれていない要素が多めに描かれている。
けど麦も、クリエーター仲間の先輩の海人が、海人の彼女を水商売で働かせているのをみて、絹にそういうことを自分が強要しないためにイラストレーターの夢を一旦諦めて就職をする。
その一旦がずっとになって、仕事に責任感を感じる麦は、仕事優先になってしまう。

別れることは、仕方ないこと。仕方ないことと言いつつもどこかでやり直しができたんじゃないか。あの時にちゃんと向き合っていれば。ふたりがよくいっていたファミレスで別れ際になって、別れられない麦が苦しくてたまらない。

この映画は観ているときは、観客で他者の視点からみていて、          感想はみんな当事者になってこの映画を話すんじゃないかなと思う。

劇中に出てきた、本をまた読みたくなった。
良い映画でした。

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