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~第101回~「絵馬の話」

桜も開花し、参道や杜に春の息吹を感じられる季節となりました。
受験シーズンも終わり、新生活に期待を膨らませている方も多いことと思いますが、神社の春の風物詩として「絵馬」が頭に浮かぶ方もいるでしょう。
絵馬は参拝者が祈願をする際に、願い事を書いて神仏に奉納するものです。

武蔵一宮氷川神社では通常の木製の祈願絵馬の他、全10色からなる「ふくろ絵馬」も授与しております。
これは個人情報保護への意識が高まっていることを受け、令和元年(2019)から新たに始めたもので、木の板の代わりに絵馬型の厚紙に願いを書き、ちりめんの巾着に入れて奉納するものです。
さまざまな色の巾着が並んだ納め所の景色を記念に撮影する参拝者も多く見られます。

そもそも絵馬の歴史は古く、古代にまでさかのぼります。
古来日本では生きた馬を神々に奉納する習俗があり、やがて馬の代わりに馬形(土馬、木馬など)を献上するようになり、その後、簡略化され馬の絵を板に描く絵馬が出来たと言われております。

現存最古の絵馬は、平成11年(1999)に大阪市の難波宮跡から出土した飛鳥時代(7世紀中頃)のものです。
また『本朝文粋』によると「絵馬」という言葉は、寛弘9年(1012)に大江匡房が北野天満宮に奉納した品の目録に「色紙絵馬三疋」と書いてあるのが最初です。
江戸時代の書物『神道名目類聚抄』には、神馬を献上出来ない人が木製馬形をつくるようになり、それも献上出来ない人が、馬の絵を描いて献上するようになったという記述も見られます。

そのような絵馬ですが、氷川神社では通常の木製絵馬の場合、干支の絵が描かれた絵馬もございます(本年は寅)。
そして、最近は自分のためのお願い事を書かない絵馬も見受けられるようになりました。
氷川神社の「氷」から、応援しているフィギュアスケーターの成功を祈るものや、昨今の世界情勢を鑑みての世界平和を祈ってのものなど、、、誰かのため無欲に祈る心の温かさを、皆様の木製絵馬は教えてくれます。

昔も今も、神社は祈りの心のための場所なのです。

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〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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