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気持ちの悪いプロット屋さん

 佐和田梨花は18歳になるまで、林隆俊と一緒に暮らしていた。梨花が小学5年生だったころ、帰り道にふと道端の花が気になりしゃがみこんだその瞬間、隆俊の車に連れ込まれ誘拐されたのだった。その日から9年間、梨花は一歩も外に出ることは許されなかった。『行方不明女児』としてテレビやマスコミは梨花の名前を大々的に報道した。母親はショックのあまり入院。父親はカメラの前で大げさに泣いた。異様な大声で泣きじゃくる父親に対し、「父親が怪しいのでは」という声もあった。
 隆俊と梨花の生活は、郊外の一軒家を中心としていた。驚くべきことに隆俊は両親と同居。両親は隆俊の部屋がある2階には決してあがってこず、また梨花の存在にも気が付かなかったのだという。9年目にして母親が梨花を目撃したことから事件は発覚。世間はその異様な生活様式に震撼した。
 『行方不明女児』として扱われた少女の突然の帰還。もちろん梨花の両親は歓喜した。18歳になった梨花は痩せ細り、青白い姿の女性に成長していた。

 事件から20年経った今も梨花の傷は癒えていない。事件以前の自分に戻れることはもう2度とないと思っている。そして、その傷を癒すために自身を傷つけることをやめられない。「ダークネット」と呼ばれるインターネット空間で、動物虐待や人間の惨殺動画を繰り返し見ている。見れば見るほど、自分が何度も罰を受け、死んでいくような気がした。中でもJ1という投稿者の動画は凄惨なものが多く、食い入るように眺めていた。
 梨花は昼間、細々とカフェで働いているが、夜になると時折立ちんぼのようなことをして売春行為を繰り返す。それもまた自傷の一種であるということを自分でもわかっていた。
 袖の短い薄汚れた服を着て適当な場所で立つ。「お姉さん、ここ誰の縄張りかわかってんの」強い言葉とは裏腹に人懐こい笑顔をした少女が話しかけてきた。少女はだらしなく太っていて、不自然なツインテールをしている。名前は新井みどり。ほんの数歩離れた場所にいる少年は千代田翔と名乗った。2人はカップルでありながら共謀してインターネットを使って売春行為をしているのだという。お互いにお互いを「一番大切な恋人」と称しながら、このような関係性が成立していることが梨花にはどうにも解せず、強い怒りを覚えた。
 みどりは舌足らずな喋り方で、「バカだからわかんなぁい」というのが口癖だった。翔曰く、2人とも軽度知的障害を持っているらしい。「バカな俺たちが生きていくには売春しかない」というのが、2人のたどり着いた結論だった。2人は常に、短絡的であり衝動的だ。翔の方はみどりの客に度々暴力をふるっている。その日1日を生きること以外には何も考えていないという様子だった。更に、少年少女だと思っていた彼らは実は20代も後半にさしかかっていた。極端に幼い容姿だと梨花は感じる。その日から、3人の奇妙な関係が始まった。美人局、大麻、万引き、J1と名乗る人物との接触。一般的には犯罪行為と呼ばれる事柄を経て、少しずつ心を開いていく両者。
 やがて、梨花を誘拐、監禁した隆俊が出所してくるという噂が耳に入った。梨花は自傷行為を止めるために、隆俊を殺したいと2人に打ち明ける。
 翔は梨花からの依頼で、隆俊の尾行を始めた。数日間尾行してわかったのは、隆俊と梨花がよく似ているということだった。

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 っていうプロット考えたんですけど、「異世界転生」と「もうすぐ死ぬ系彼女」に勝てる気がしないので諦めます。どなたか使ってください。隆俊を殺したところから書いたらミステリーになると思います。
 私は神に魂を売るべく「2週間後に自殺する彼女」を書きます。

 こういう感じのプロットならいくらでも思いつくのですがプロット屋さんという職業はないのでしょうか。

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  マザー・コンプレックスを抱えた者たちの悲しいミステリー。

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