20万円の前歯

飛行機代、保険料、VISA申請費用…次々と口座から大金が引き落とされていく。
お金の余裕は、心の余裕。
予定していた出費ではあるけれど、残高を確認してはナーバスになり、加速する円安（マックス1€=¥163.4）にはもはや苛立ちを覚え、ここ最近はどうもブルーな気持ちから抜け出せない。

ただでさえ落ち込み気味なところに、追い討ちをかける出来事が。

渡航準備の一環として、意を決して大嫌いな歯医者通いを再開し、治療中の上前歯2本。（1年半前に自転車の単独事故で欠けており、治療が途中のまま放置していた。）先日、ようやく型を取り、被せ物を作るところまで辿り着いた。

治療後の会計時に「次回、こちらの金額をご用意くださいね」と渡されたメモを見て、一瞬固まってしまった。

10万×2本＝20万

予算の倍である。以前、「5万×2本＝10万」と説明を受けたと記憶していたのだが、それが勘違いだったのか、メモにははっきりと税込220,000円と書いてある。

20万円あったらフィンランドで何か月生き延びられるだろう…。
そんな考えが頭をよぎるが、背に腹は変えられない。それに、中途半端な前歯で渡航して、万が一、現地で前歯が無くなったりしたら笑えない。わかってはいるが、このタイミングでの20万円の出費は痛い、痛すぎる。

一通り落ち込んだところで、落ち込んでいても仕方ないと、なんとか気を取り直した。

冷静に考えれば、渡航の不安要素は、ほぼお金の問題だけだ。言葉や厳しい気候ももちろん不安だが、多分、なんとかなる。
フィンランドで職に就ける見込みが限りなく薄いわたしは、出来る限り出費を抑えて乗り切ろうと考えていたが、考えが変わってきた。やっぱり働きたい！
せっかくフィンランドに住むことが叶うというのに、あまりにも縮こまって身動きが取れなくなるのはもったいないじゃないか。
また、収入ゼロの期間が長くなりすぎると、お金よりも先にメンタルの限界が来そうな気がする。

まずは、せめて前歯にかかった20万円をユーロで取り戻すことを目標にしよう。