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ジョセフ・クーデルカ「Josef Koudelka. IKONAR: Archival Constellations」/目は旅をする066(人間の秘密)

ジョセフ・クーデルカ
「Josef Koudelka. IKONAR: Archival Constellations」
(Photo Elysée / Les Éditions Noir sur Blanc)

最初に好きになった写真家はジョセフ・クーデルカだった。そして、その気持ちは今も変わらない。
ロベール・デルピールが編集した写真集シリーズ「Photo Poche」で買ったのもクーデルカが最初だったし、いや、その前に、中学2年生の時にソ連のチェコ侵攻があり、なぜか衝撃を受けて、新聞をスクラップした時の、多くの写真がクーデルカが撮影したものだった。

それから随分後だが、沢山の写真家と一緒に仕事をするようになった90年代に、クーデルカの肉声に出会った。フランスの写真家フランク・ホォーヴァットの本『写真の真実』である。そこにクーデルカの印象深いインタビューが載っていた。

チェコからパリに亡命し、寝袋一つで暮らすこと。決してお金のために仕事を引き受けないこと。自分がやっているのはドキュメンタリーなどではなく「写真」であること。ジプシーを撮影した彼の写真集がバラバラにされジプシーたちがそれを家に飾りクーデルカのことを「イコナール」(「イコンの製作者」)と呼んでいること。写真はあらかじめ考えがあって撮るものでないこと。そして、彼がコトバを信じていないこと。
それらが、鋭く、直裁に語られていて、忘れがたかった。

彼の存在はもはや神話的な写真家であり、会って話を聞くなどあり得ないとずっと思っていた。ところが1997年に、東京都写真美術館でクーデルカがなんと「スチール写真」を担当したテオ・アンゲロプロス監督の映画『ユリシーズの瞳』の上映にあわせて、その写真51点が展示されることになったのだ。それに合わせて、クーデルカが来日し、講演もあると言う。

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