志賀理江子 東京都現代美術館におけるTCAA受賞記念展「さばかれえぬ私へ」モノグラフ『SHIGA Lieko』/目は旅をする064
志賀理江子 東京都現代美術館におけるTCAA受賞記念展「さばかれえぬ私へ」モノグラフ『SHIGA Lieko』(公益財団法人東京都歴史文化財団東京都現代美術館トーキョーアーツアンドスペース事業課発行)
展覧会のフライヤーの解説にはこう書かれていた。
「第3回受賞者の志賀理江子と竹内公太による本展には、「さばかれえぬ私へ / Waiting for the Wind」という言葉を冠しました。この言葉は、TCAA授賞式から始まった志賀と竹内の対話から生み出された、いわば本展で唯一の共同作品と言えるものであり、人々が抱える内面世界への呼びかけでもあります。
2011年の被災後、突如始まったあらゆる分野での復興計画に圧倒された経験を、人間が歩く営みとして捉え直した志賀、第二次世界大戦時の兵器「風船爆弾」のリサーチにもとづき、過去の出来事-鑑賞者の憑依の連鎖による新作を発表する竹内。東日本大震災の爪痕が大きく残された宮城、福島をそれぞれの拠点として活動する両者の作品は、その方向性は違えども、対話の中で見出された共通の認識を持ち、ある部分では作品が重なり合うように展示空間を構成します」
エスカレーターを上がって最上階まで行くと、暗闇の中、いきなり壁全体にプロジェクションされた映像が目に入ってくる。志賀理江子の作品だ。壁全体が映像の連続体として構成されている。左に赤い波が寄せていて、右にはどうやら堤防を列をなして行進している若者たちがいて、彼らに話しかける男がいる。声が闇の中に響いている。いくつもの映像も声も同時に物語られる。そう、同時だ。夢なのか?いや夢だって終わりがある。ここに出現した世界は、エンドレスに語り続けてくるから、夢などと言う生優しいものではない。ああ。どこに迷い込んだのか?
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目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション
ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をす…
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