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ヴィジョナリーよ出でよ!! トム・ヨークとドンウッドのコラボを巡って/一日一微発見399

最近よく思うのは、今、この世界の中で、「劣化」しないのは、優れたアーティストが生み出すヴィジョンなのではないかということ。
あまりにパーソナルで、しかもあまりにも孤独な。

しかし、アーティストのことをヴィジョナリーと呼ぶことは、定着していないだろう。あいかわらずアーティストを、視覚芸術の「絵描き」に限定してとらえようとする保守的な見方が大半だろう。

「アート思考」のことを、本当の意味で既成の価値観をシフトさせるためのハイパーなもの、メタなものととらえるのは、未来に向けた序奏ねようなものに、未だとどまっているかもしれない。

先日、所用があり、ひさしぶりに青山の岡本太郎記念館を訪問した。その時に、平野暁臣館長が「岡本太郎は死んでいないんですよ」と言っていたことには、本当に心打たれた。ヴィジョナリーとしてのアーティストは等身大のものではないから、アーティストの価値は、岡本太郎が物理的にはこの世を去ったとしても、「死んでから」どのように「生きるか」が問題となるということだ。

岡本太郎は、マルセル・モースの人類学の薫陶をうけた人だったし、宇宙における人類のあり様、人類文化の行く末のヴィジョンをもち、その中においてみずからの創作を行ったから、先駆的な、ヴィジョナリーだったと僕は思っている。
これは来るべきアーティストの先駆的なモデルに違いない。

さて前おきが長くなったが、こんなことを書き出したのは、音楽グループ Radioheadのリーダーのトム・ヨークと彼と並走し、Radioheadのヴィジュアルワークを30年にわたっててかけているスタンリー・ドンウッドがコラボレーションした絵画展がつい先日、ロンドンのクリスティーズで行われたのに触発されたからだ。

彼らほど孤独で、しかし絶大な影響力をもつアーティスト、ヴィジョナリーはいない。

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