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ヴィヴィアン・サッセン『Venus & Mercury 』/目は旅をする051(天国と地獄)

ヴィヴィアン・サッセン『Venus & Mercury 』
(Aperture刊)

アムステルダムを活動拠点とするヴィヴィアン・サッセンと知り合って、この10年の間に、東京のG/Pgalleryでの2度の個展、そして2冊の写真集をG/P+abpから出版してきた。

1冊めの『LEXICON』は、2014年のヴェニス・ビエンナーレにヴィヴィアンが出たときに出版したもので、収録された31点の写真は、ビエンナーレのディレクターのマッシミリアーノ・ジオーニと共同で選んだものだった。

そして2冊目は、2017年の『Of Mud and Lotus』(このタイトルは「泥なきところに蓮華は咲かぬ」ということわざから取られている)である。これは妊娠、出産による女性の身体の変化やキノコなどのイメージが遊戯的にコラージュされていたり、写真の上に絵の具やインクで彩色されていた。
そこには、アブジェクション(ジュリア・クリステヴァ言うところの「おぞましさ」)の感覚が溢れていた。美と醜、実在と影、記号と潜在意識など、真逆な感覚の同居がヴィヴィアンの写真の魅力を生成している。それをシャーロット・コットンがしたように「シュルレアリズムの再生」と位置づけてもよいかもしれない。
以前、資生堂の企業文化誌『花椿』誌の表紙写真をヴィヴィアンに1年間にわたり撮影してもらい、撮影現場に同行することが何度かあった。彼女の写真がどのように生成するのか。それは実に密やかな錬金術の現場であった。

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