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日本の美術をアップデートする ⑥京の日本画(下) 橋本関雪/一日一微発見374

日本画家・橋本関雪の大回顧展が始まった。生誕140年という、数字的には「中途半端」な年にもかかわらず、死後最大の回顧展である。

先に述べておくと、橋本関雪は、前回の木島櫻谷について加藤一雄が述べた「無思想」の「京都の日本画」とは、ある意味で対極的な存在だ。彼は「思想」ゆえに異質なのだ。

京都画壇の中心的存在だった竹内栖鳳門下でありながら、国画創作協会的な革新性へ向かうのではなく、最終的には「聖戦画」へと向かう神国日本 (オリエンタリズム)もふくまれる「思想」がこもった日本画を描き、成功の絶頂(絶頂はつねに崩落をともなう)で死んだのであった。

僕は学生時代に、銀閣寺近くの浄土寺に住んでいたこともあり、関雪の自宅・アトリエの1つだった白沙村荘や、その一部を洋館を改装したレストランカフェNOANOAに行き、彼の残されたアトリエをよく見てまわっていた。

しかしだからとはいえ関雪については、長い間、何も知らないに等しかった。

京都の「やっかい」で「面白い」ところは、乱世の戦乱で膨大な死者の歴史が地下の地層を構成しているにもかかわらず、人々は、呑気に地表で暮らしているところにある。
京都は、美しい表面の世界で生き延び、ことさら真実を暴かない知恵で出来ているのだ。

さて、橋本関雪展は3館同時に行われているが、まずは関雪の遺香が、いまだ強く漂う白沙村荘に行った。
久しぶりに園内に入る

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