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進化する編集②補助線としての中沢新一『レンマ学』/一日一微発見421

編集は実践の術だ。
僕は編集のことを、出版で仕事をしている編集者の独占物としても、職人的なスキルに限定しても考えていない。

情報が万人にとり生きていく生活環境になり、コンピュータやSNS、まして本格的にAIと共生しながら人々が生きていかざるを得ない文明を迎えた今、編集する力は、よく生きるための不可欠でのものになっていると思っているのだ。

社会のパラダイムがシフトする時に、避けられない作業は、それまでの社会的を作ってきた支配的な価値観、思想、方法、システム、分脈などを、時には破壊し、再編・再生・新生するということだ。

僕は、世の中では「編集者」と呼ばれてはいないクリエイターやアーティスト、建築家、音楽家、デザイナー、思想家、キュレイターなどの中にこそ、矮小化されていない「イノベイティブな編集」が存在していることを、繰り返し書いてきたし、レクチャーでも取り上げてきた。

ブライアン・イーノやバックミンスター・フラー、チャールズ&レイ・イームズに始まり、ハンス・ウルリッヒ・オブリストのような現役のキュレーション実践者に至るまで、彼らの特筆すべき編集力を再考して、今を生きる我々自身のためにフィードバックすることを、考え実装して来たのである。

そのような僕の編集への取り組みは、世界の流動性が高まり続けている中で人は何をすべきかという切迫意識からきていると思う。

「後藤さんにとって編集者ってなんですか?」と訊かれたらどう言うか。それをまず、暫定的な、かつ簡単に整理して書いておいたほうが、今後の話のために、いいかもしれない。

①編集とは、情報を「力」と「価値生成」に変え、かつ磁場をつくるものである

②編集とは、次代を作る才能を組織する作業である

③編集とは、様々な人が担う「仕事」を活性化するための仕組み、メディア、プラットフォームを作り出す作業である

④編集とは、高速で流動化し続ける世界の中で、上手く生きるため。なりたい自分になるため。生活や人生を創造的に構築する、サバイバルし続けるための戦略的なスキルである

どうだろう。
これらを読むと分かってもらえると思うが、僕がずいぶん「古い編集」から拡張、逸脱、進化したものと考えていることが伝わると思う。

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