見出し画像

#27 【女性】PMSよ、こんにちは


あなたは気付かぬうちに私の背後にピッタリとつき、肩を、腰を、鉛に変えていく。
そして、右の後頭部に小さな起爆スイッチを仕込む。
忘れた頃にズキン、と発動するやつ。

食欲なんかも悪戯にめちゃめちゃにする。いつも何がガリガリ齧ってないといけないように。食べ始めたら止まらなくするように。そのくせ、胃腸の調子もおかしくしていくから、なんだか常に胸がつっかえたようで気分が悪い。それをなんとかしたくて、またお煎餅か何かを投入する。

そう言っている間に、また右後頭部でズキンと発動する。

なんといっても極め付けは、そう、これも、気付かぬ間に、私のメンタルを薄暗い沼に引き摺り落とす。
朝は気分良く、子供の抵抗や理不尽にも耐え、週明け月曜なのに幸先良く仕事に取り掛かれていたのに、気付けば手足がずぶずぶと、そのうち頭も身体も心もずぶずぶと、薄暗い沼に沈んでいた。
何を考えても、自分がしでかした些細な失敗をとんでもなく致命的な大打撃に見せかけ、私を苦しめる。
罪悪感と自己否定と孤独感をいとも簡単に増幅し、私をこの世に必要とされていない、誰の役にも立たない存在にでっち上げる。
私は、その幻影にいとも簡単に打ちのめされる。

そしてまたズキン。

悲しい。
寂しい。
圧倒的虚無感。

底無しかと思われた沼の底まで沈んでいく。ふと気づくと底からフワリと離れる。その瞬間、あぁ、なんだ、いつもの彼奴の所為か、と我に返る。

毎月のように彼奴が来るのをどうしてもなんとかしたくて、市販薬を飲み始めて9ヶ月目、すっかりなりを潜めて平和がある程度担保されるようになっていたのに。久しぶりにひどいやつがやって来て、なす術もなくされるがままである。

そしてズキン。

PMSよ、招かれざる客よ、こんにちは。

早くとっとと帰っておくれ。

もし記事を気に入っていただいたり、役に立ったと思っていただけたら、サポートいただけると嬉しいです。