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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第11話

第11話 「僕の将来」


青い光に日は落ちて、
対岸の姿が
少しずつ見えなくなっていく。

「しかし、惜しかったよなぁ」

「まあ言うなよ。
みんな、がんばったんだし」

船の中で、
みんなは、
ナッツ酒を飲みながら、
おしゃべりしている。

僕は、
船の一番後ろに腰掛け、
ナッツジュースを飲む。

「やっぱり5回裏だよな。
ピッチャー、ピートくん、
大ピンチの二死満塁でさ」

「バッターは、
トラヒゲのゲイリーさん」

「カキーン!
ホームラン!
だもんなぁ」

「ピートくん、
がっかりしてたよね」

「レイじいさん、
しっかりサイン出したんだろうね?
名キャッチャーとして」

「ん?
まあ・・・
ハハハ・・・」

「頼りないなあ。
ハハハ・・・」

僕たちは、
船で一時間程の隣の島、
グレートナッツ島の
グレートタイガーズと
野球の親善試合をした。

結果は負けだったけれど、
島の人々はとても愉快で、
みんな、
すっかり陽気になっている。

もちろん僕も。

グレートタイガーズのキャプテン、
ゲイリーさんは、
見掛けは怖そうだけれど、
とても優しかったし。

奥さんのコリンさんも
女の子のプリラちゃんも
親切にしてくれた。

このナッツジュースと
ナッツ酒は
コリンさんの手作りなんだ。

・・・だけど・・・

「ピートくんは筋がいいなぁ。
私の息子にしたいくらいだ。
野球やらないかい?」
とゲイリーさんに言われた時は、
驚いた。

僕は、
「修行しているので・・・」
と断ったけど。

「ピートくん、
サンドイッチはどうかね?」

レイじいさんが
僕の肩にコートを掛けた。

そして、
僕のからっぽのグラスに
赤いハンカチをかけ、
エイヤッと念じる。

すると僕のグラスには、
あったかいナッツジュースが満たされ、
僕とレイじいさんは、
ニッと笑った。

ゲイリーさんに
「何の修行?」
と聞かれた時、
僕は言った。

「魔法を使わない
魔法の修行です」

僕たちは、
固い握手をした。

「残念だ。けど、また会おう」


To be continued. 



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