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9. 歯科衛生士さんの登竜門?!

抜歯を乗り越えた夫は順調に歯医者に通っていた。
今は、上下3箇所に分けての細かな歯石除去の途中だ。

「今日はちょっと痛かったな。麻酔を追加してもらったよ」
商談終わりの会社員よろしく、クールに話す夫。
なんともこうもスムーズに通院ができると思っていなかった私は
少し拍子抜けしていた。


なにせ10年も歯医者に行かなかった夫だ。

今まで度々通院を促しても、「そのうち行くから」「分かってるって!」「俺の気持ちがわかんないんだよ」の繰り返しだった。
今回奇跡とも言える突然の思し召しで、通院が叶ったが
妻としては、何かのタイミングで「行かない」とゴネ出すことを覚悟していたのである。


それが、
「今日は○○さんが担当してくれたよ。前回の人より上手だったな」
「今日の人はちょっと痛かったな」
と、毎回おこがましくも歯科衛生士さんの感想まで述べるようになったのだ。

初診時のカルテで「歯医者にトラウマがある。怖い思いをしたことがある」と正直に書いていた夫。
最初の方こそ、ベテランの衛生士さんが付いていてくれていたようだが
あの試練の抜歯を耐えた(実際、麻酔を二度ほど追加したらしい。。)からか、他の衛生士さんも付いてくれるようになったようだ。


「そういえば今日は、多分、新人さんだったと思う」
歩きながら夫はそう言った。

「歯石を削るのも痛かったし、水を吸う機械は喉の奥に当たって嗚咽しそうになったし、、。終いには治療後に『ありがとうございました』とお礼まで言われたよ。俺、多分、新人の登竜門にされてるね」

なんとも誇らしいではないか。笑

きっと珍しい...いや、はっきり言うと「まぁまぁ酷いね」と先生に言わしめた口腔内だから、勉強のために見ておきなさい、とでも言われているんだろうなぁと思いながら
「俺の担当に付く衛生士さん、一周りしたよ」と
なんだか嬉しそうにも話すので
「良かったじゃん」と答えた。

夫の頑張りは本当に誇らしいし、歯科医院の対応にも感謝感謝である。


そう、なんだかんだ言って、夫はもう歯医者を楽しみにしてしまっているのだった。


(続く)

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