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元エージェントが語るロシア連邦保安局FSB Part 1. ~海外における情報収集・犯罪スキーム~【スレッド翻訳】

今回のスレッド翻訳は、FSB告発文書(リークレター)を英訳してくださっているイゴールさんが、元FSBエージェントであった人物のインタビューを英訳(要約)してくださったものです。

(ロシア語動画→【イゴールさん英訳】→英語スレッド→【瀬道日本語訳】→本スレッド)

ツイッターで翻訳しつつ投稿していたものがこちら↓↓↓

ロシア語で公開されている元の動画がこちらです↓↓↓

インタビューを行っているのは、人権活動家でロシアからフランスに亡命し、多くのロシア兵やFSB職員の亡命も手助けしているウラジミール・オセチキンさん。(FSBからの告発文書を受け取っているのも彼です。)

そしてアメリカ国内から、夜間の野外でインタビューに答えているのが元FSBエージェントのパベル・ベロメストニクさん。

彼の経緯は以下の文章に書かれていますので、どうぞお読みください。

・見出しは瀬道が追加
・翻訳上の補足は()内
・瀬藤の解釈や補足は【】内

以下翻訳です。


(動画は)人権活動家ウラジミール・オセチキン氏が行った、米国に脱出した元FSBエージェントのパベル・ベロメストニク氏へのインタビュー。

FSBが、いかに欧米の身分証明書類の完璧な偽物を利用して、法執行機関を含む米国とカナダのエージェントを勧誘しているかを語っている。

ロシアを離れたFSBエージェント

(まずは)どのようにして青年がカナダからロシアに戻り、どのようにFSBが彼を勧誘しようとしたのかの経緯から説明する。

結果的には、彼がFSBの世界的な犯罪活動の危うい情報を山ほど持って逃げたため、FSBの目論見は裏目に出たことになった。

パベル氏が最初にオセチキン氏に連絡したのは、彼が今年初めにロシアから逃亡し、オーストリアのウィーンに到着したときだった。

彼はオセチキン氏に、公開してほしいFSB内部に関する情報をたくさん持っていることを伝えた。

(彼の持っている情報は、)オセチキン氏の団体Gulagu.netが行っている、国に認可されているロシアの刑務所内での人権侵害に関する調査を補うものだった。

この調査には、元受刑者であるベラルーシ人セルゲイ・サヴェリエフが収集したビデオの証拠も含まれている。(セルゲイ・サヴェリエフは、数テラバイトに及ぶ刑務所内の拷問の監視映像を持ってロシアを脱出し、フランスで政治亡命を果たした人物)

パベル氏はヨーロッパで政治亡命するつもりだったが、不審な人物が相次いでロシアからヨーロッパに到着していたり、FSBによって指示されたオセチキン氏の暗殺の試みがあったりなど、当時の状況は明らかに不穏だった

そのためパベル氏はヨーロッパを離れて、9月24日にアメリカに到着した。

(それ以前に)ヨーロッパに居た時は、(安全のために)ウィーン、オーストリア、パリ、フランス、スペインを渡り歩いた。

パベル氏はカナダで育ったので、アメリカは適応する必要もなく快適に暮らせている。今のところ、アメリカの国防関係者とはコンタクトを取っていない。仕事はドライバーをやっている。

どのようにFSBがパベル氏を勧誘したか

カナダで育ち、大学を卒業した後、パベル氏はロシアに移住して、貯金を使って自動車のビジネスを始めることにした。

しかし仕事を始めたほぼ直後、ロシア総務省との衝突があった。【いちゃもんつけられて運営妨害されたと認識】

そんなときに知り合いを通じてFSBに紹介され、それが政府との問題を解決する方法であると理解した。

(案の定)FSBは素早くパべル氏の問題を解決し、金銭も要求せず、パベル氏とはカジュアルな関係を保った。

(しかし)次第に会話の内容はカナダの自動車産業に関することに移り、その後はFSBに協力しないかというほのめかしや直接的な勧誘を受けるようになった。

パベル氏は絶えず、カナダとアメリカで何が起こっているのかを理解したがっている様々な人に紹介されていた。

(彼らが知りたがっていたのは、)例えば、北米の地下犯罪組織がどのように構成されているか、旧ソ連からの人物が何人関与しているか、旧ソ連から四散した人口のどれ程がロシアに反対しているか、どれ程がプーチンを支持しているか等。

パベル氏はまた、特定の種類の人物に彼らを紹介してもらえるかと聞かれたが、知り合いを通じてそのような人とも繋がりがあるが、紹介できるほどの信頼関係は無いと答えたとのこと。

最初にロシアに移住した際も、パベル氏はいつも最終的にはカナダに戻ることを考えていた。どちらの国のほうがより良い生活を送ることができるかは、 ロシアに到着してすぐに明白だったから。

それでもロシアでの生活の最初の6か月間は、パベル氏はまだロシアに対していくらかの理想主義を抱いていた。2つの国を比較して、ロシアの天然資源のことも考えると、なぜカナダはカナダのように暮らし、ロシアはロシアのように暮らしているのか理解できなかった。(生活水準について)

その後、パベル氏はその理由をはっきりと理解した。

FSBとのやり取りにより、それは非常にはっきりと明白になったのだ。【贈賄、買収などの汚職の実態を体験したため】

パベル氏は、(自分に対する扱いに関して)まるで自分が男性に求愛されている女性であるかのように感じたという。FSBや関連団体の様々な人物が彼に歩み寄ったが、そのやり方は非常に慎重だったからだ。

パベル氏は興味をそそられた。

ロシアが製造する偽造個人情報文書

何人かはカナダで詐欺を行って金を稼ぐ方法についてパベル氏に助けを求めた。

パベル氏は、それは可能だが、その場合偽造文書を無尽蔵に作成する必要があると答えた。

彼らが「それは問題にはならない」と訴えたので、パベル氏は必要になる偽造文書の膨大なリストを作成して提供した。すると後日、それまで会ったことのない人物にその書類を手渡された。

封筒には、リトアニア、ドイツ、フランス、イタリア、アメリカ、カナダなど、さまざまな国の一連の偽造文書が入っていた。それにはパスポート、運転免許証、出生証明書などが含まれていた。

アメリカの偽造社会保障カードと、カナダの偽造社会保険番号もだ。

パベル氏は偽造品の質と量に非常にショックを受けた。特に、偽造品が作成されるまでの時間が短いことを考えるとなおさらだった。

その後FSBは、彼により厳しい態度で、カナダの特定の連絡先を要求し始めた。

パベル氏は、一歩間違えば永遠にロシアに住むことになることを理解していた。ロシアを去ることが出来なくなるという未来には、惹かれはしなかった。

パベル氏が封筒で受け取った偽造文書には、カナダの実在の人物の身元が使用されていて、そこにパベル氏の写真と名前が埋め込まれていた。

FSBは、彼らに何が出来るかを、パベル氏に示したのである。

FSBには、世界中の国の最高品質の政府文書を偽造する能力があったのだ

(これを作成する)工場がどこにあるかは不明だが、パベル氏はモスクワにあるのではないかと疑っている。

パベル氏は、170セット以上の偽造された身分証明文書がFSBによってカナダに送られた事実を知っていて、その証拠も持っているとのこと。

犯罪者へ提供される偽造文書

偽造文書は、裏社会の犯罪者によってクレジットカードや保険の詐欺に利用されている。

FSBは特に、既に『汚れ』ていて、犯罪を犯しやすいと思われる個人に(これらの偽造文書を)提供していた。

そうすることで、FSBはこれらを使用して犯罪を犯した者を、強制的に勧誘することができるからだ。

FSBは、(自らが与えた)偽造文書の証拠を持って「カナダ政府にお前を投獄するよう訴えることができる」と犯罪者を脅迫するのである。

カナダ当局は、(これらの偽造文書を使った犯罪を検挙するために)『プラチナ計画』と呼ばれる作戦を実施している。その結果、武器、麻薬、偽造文書、および非常識な額の現金が見つかり、30人以上が逮捕された。(2020年)

これは、犯罪者同士の対立の結果として起こったものだ。日中に銃撃戦が起こり、オンタリオ州知事は「パーティーは終わった」と言って、この種の公然たる犯罪行為に終止符を打つことを願っていた。

しかし『プラチナ計画』において、カナダ当局は偽造された文書がどこから来たのかを把握できず、これらの犯罪と状況の全容にFSBを関連付けることは出来ていない。

彼らは、犯罪者自身を偽造に関連する容疑で脅かしてすらしている。

パベル氏によれば、カナダとアメリカの双方の法執行機関は、実際の犯罪スキームにおけるFSBの関与については全く無知であるようだと。

2月のウクライナ侵攻後、ロシア当局は、自分たちが今や北朝鮮レベルの『のけ者』であることに気付いた。

そのためニューヨークとシカゴにいるFSBエージェントは、偽造された身分証明書一式を1万ドルで、かなり公然と提供している。

戦前は、これはもっと静かに慎重に行われていた。

【出来るだけ戦争の資金を得るため(もしくは個人的に逃げるため)に、偽造文書を売りまくっていると認識してます】

カナダでは、(流通している)偽造文書の多さは法執行システムに深刻な衝撃を与えている。

しかし、カナダの法執行機関はあまり効果的とは言えない。

彼らは気づいていないが、パベル氏が知る限りでは、彼らが重要な情報提供者だと思っているある人物は、実はFSBによって偽造されたこれらの文書のカナダにおける主要な配布者なのだ。

その人物は、今この時もカナダ当局への情報提供者であり続けている。

カナダの安全保障(捜査)機関も全く効果的とは言えない。

彼らは殺人や麻薬密売を捜査する準備はできているが、21世紀の犯罪を捜査できる能力は持ち合わせていないのである。

偽造文書の利用方法

偽造された文書は、個人情報の窃取、クレジットカード口座の開設、銀行や保険の詐欺、そして強制的な勧誘や、隠れている人物を見つけ出すために使用される可能性がある。

そして、恐喝などの目的で個人の弱点を特定するためも利用できるのだ。

彼らの犯罪スキームはこうだ。

ひとたび社会保障番号や電話番号などの基本情報を取得してしまえば、その人の個人情報の大部分を手に入れるためにCIAやFBIに特別なコネを持っている必要は無い。

必要なのは、協力する意欲のある不動産業者または銀行員だ。それだけで個人情報の90%は得ることが出来る。

その人の社会保障番号などを使用した偽造文書が手に入れれば、その人の身元を引き継ぐことはかなり簡単だ。

ほとんどの州では写真による本人確認を必要としないため、住所変更を利用して運転免許証を受け取ることさえ可能だ。

銀行に行けば、その人の財務&借金状況を知ることができてしまう。

ある人が浮気をしているかどうか、ギャンブラーであるかどうか、2番目の家族がいるかどうかを効果的に調べることが可能なのだ。

このような要因は、FSBによる強制(脅迫)採用に最適だ。

このやり方で、カナダのある警察官はFSBに(強制)採用されている。FSBは米国でもこの方法で人を採用していると、パベル氏は確信を持っている。

盗んだ個人情報文書を利用して3万ドルが限度額のクレジットカード口座を開設することは、FSBが製造可能な偽造品を利用した詐欺では初歩的な部類だ。

このような偽造がもたらす真の力は、対象国の治安機関に所属する警察官やCIA職員などの中から、FSBが(エージェントとして)採用できる標的を特定できることにある。

こういったFSBとSVR(ロシア対外情報庁)の活動は、西洋と同様に北米中でも活発だ。

FSBはまず、対象国の犯罪者の代表にさまざまな経済犯罪を行うための高品質な偽造品を提供する。そして6か月、1年、さらには2年間と、そのような犯罪を行うのに十分な機会を彼らに与える。

その間ずっと、FSBは提供した偽造文書を使用して行われた犯罪の監視と証拠収集をしておくのだ。

そして、FSBはその犯罪を暴露するぞと犯罪者を脅迫し、SFB/SVRのために働くように強制的に勧誘するのである。

巧妙な方法で作り出す偽の個人情報

また、まったく新しい偽の個人情報を作成するための実証済みの方法もある。法に触れる内容となるため、パベル氏は詳細については語っていない。

この工程は、新しい、本物の戸籍を、本物のアメリカもしくはカナダの市民権付きで作り出す方法だ。

これは、(二つの国における)システムに存在する共通の脆弱性のおかげで可能となっている。その人は実生活を持つことが可能となり、ブラジルのように偽造パスポートを製造する必要もない。

但しこの工程には時間がかかる。数年かかることもあるが、最終的には実在の人物となるのだ。

オセチキン氏は、数か月前にはこの詳細をパベル氏から受け取っていた。【パベル氏の安全の確保のため今まで公表していなかった。】

このインタビューが欧米の様々な政府当局に影響を与え、ジャーナリストからの注目を集めることを願っている

標的の電話番号を知っていれば、地理位置情報や通話履歴を含んだ、犯罪者がアクセスできてしまうデータベースも存在する。

カナダでは、郵便物を別の住所に転送するよう手配するには、少なくとも身分証明書と書類を提供する必要がある。アメリカではこの必要はない。【それだけ詐欺を起こしやすいという指摘】

【以上は、ロシア語で公開された2時間のインタビュー(動画)の、最初の40分間の概要です。(Part 1)(Part 2は別スレッドへ)】


いかがだったでしょうか。

ロシアの海外における情報収集や資金調達の実態が具体的に語られていましたが、

・個人情報割り出して利用できそうな人物を精査
・偽の個人情報書類与えて犯罪行為をさせる
・その証拠を押さえておく
・その証拠でロシアに協力しろと脅す

といった手順は他の国でも行われているのではないかと想像できます。

このようなことが起こっているのだと、思えておきたいのと同時に、各国の行政がしかるべき対処をしていることを願います。

Part 2は明日翻訳予定です。

それではまた次回。

翻訳者、瀬道

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