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【芸大卒制までの道】論理的思考とデザイン思考について考えたこと

今まで、自分の背景として、「医療」「公衆衛生・疫学統計」を学んできたことから、「論理的思考」のトレーニングは積んできたが、デザイン思考は何が違うのか釈然としていなかったので、自分なりに整理してみた。

まず、科学研究をする際の研究デザイン方法として、「PICO」「FIRMNESS」を意識して研究を組み立てる。「PICO」は、Participants(対象者)、Intervention(介入)、Comparison(比較群、無介入)、Outocome(結果)の構造で作られ、いかに「比較群」を作るか、介入と比較群の属性を揃えるためにランダム化比較試験のデザインを作るよう、もし倫理的に作られない場合には、観察研究として統計手法で調整することに力点が当てられる。さらに、結果が客観的に測定可能であること、介入も標準化され、誰がやっても同じように再現できるよう組み立てることが重要視される。さらに、「FIRMNESS」を満たすことが重要で、Feasible(実現可能), Interesting(面白い), Relevant(妥当性がある), Measurable(測定可能), Novel(新奇性がある), Ethical(倫理的), Specific(限定的), Structured(構造化している) であるよう気をつけて作られる。
いわゆる一般的にデザイン思考は、対象者をよく観察することが重要視されており、論理的思考は過去のエビデンスに基づいた思考をすると言われるが、実際には科学論文も、研究の発想の源は、対象への詳細な観察から出てくるし、デザイン思考も様々な過去の前例をみてストックにするという点では大きな違いがないのではないか、と考える。
私自身として考える論理的思考とデザイン思考の違いは、デザイン思考は研究デザインでいうIntervention(介入)の内容を非常によく考えて練られていて、対象者が「面白い」「楽しい」というポジティブな面が引き出されるような仕掛けを、観察によってよく考えられており、行動経済学でいうNudgeの要素が大きいように考える。一方で、科学的研究の介入は、健康教育からもよくみられるように、提供者が知ってほしいことが主眼に置かれているため、説教くさく、対象者が面白く感じられないため、脱落者が多くなっているように思う。一方で、デザイン思考の考え方で作られるデザインや広報などは、魅力的にし、広く知られることを目的にしているため、比較群(知らさない)を置くことは難しいため、効果の測定は非常に難しいように考える。また、FIRMNESSの視点から言うと、Feasible(実現可能), Interesting(面白い) Novel(新奇性がある), Ethical(倫理的)であることが目指されていることは論理的思考もデザイン思考も同じだが、Relevant(妥当性がある), Measurable(測定可能)Specific(限定的), Structured(構造化している) は重要視されていないと考える。
どこに力点を置くかによるが、自分の専門分野である公衆衛生研究に必要なことは、「介入」の内容を、いかに対象者にとって魅力的で面白い内容にするかをデザイン思考を使って考えることだと感じる。いずれにしても、「対象者をよく観察すること」は、論理的思考にもデザイン思考にも重要なことであると改めて感じた。