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外国人枠拡大が各チームに与える影響

昨日このようなニュースが飛び込んできました。来る6月17日に開幕するプロ野球は3か月弱開幕が遅れたことにより、過密日程になることが想定されます。それに対する特別措置として、1軍外国人枠の拡大が為されるといったところでしょう。おおまかな決まりとしては、

・通常1軍に登録できる外国人選手は4人だが、今期は5人に拡大
・試合に出場できる人数は変わらず4人まで(途中交代含む?)
・投手、野手ともに登録上限は3人まで(投手4:野手1は不可)

といった感じでしょうか。出場できる人数は変わりませんが、登録はしておけるため、外国人選手を先発させたとしても、翌日に抹消することなく他の4人の外国人選手を起用することが可能になります。

今回は、この拡大措置がなされたことによって、各チームにどんな影響が与えられるのかをチーム毎に見てみたいと思います。

1.セ・リーグ編

1-1.読売ジャイアンツ

現在巨人に在籍している外国人選手は、 
投手:サンチェス、メルセデス、ビエイラ、デラロサ、ディプラン
野手:パーラ、モタ
の6名です。現状としては
当確:パーラ、デラロサ(サンチェス)
有力:メルセデス、ビエイラ、モタ

といった感じでしょうか。昨年までなら外国人選手の登録は4人までのため、パーラ、デラロサ、サンチェス、メルセデスといった野手1:投手3の構成になっていたと思われますが、今年はこれに加えモタも同時に登録できます。モタは主にレフトを守ることになると思いますが、巨人の両翼候補はパーラ、陽、亀井などベテランに差し掛かる選手、あるいはケガが多い選手が多い印象です。このモタがいることによって、上手く外野を回して疲労を溜めず、離脱者を出しにくい起用が可能になるのではないでしょうか。

開幕予想:デラロサ、メルセデス、サンチェス、パーラ、モタ

1-2.横浜DeNAベイスターズ

横浜に在籍している外国人選手は
投手:エスコバー、パットン、ピープルズ
野手:ソト、ロペス、オースティン
の3:3構成です。おそらくエスコバー、ソト、ロペスは当確でしょう。オースティンも実戦を見る限り上々で、前評判で見られた強引さもそこまで見られません。残り1枠をリリーフのパットンと先発タイプのピープルズで争うことになりそうです。他の投手との兼ね合いも入ってきそうですが、どのみち投手2:野手3の構成になる可能性が高いです。野手3人を起用したいと考えると、投手は1試合につき1人しか起用できないことになるので、この制度の旨味を完全に享受できるとは言い難いかと思います(ピープルズ先発→エスコバー登板不可、パットンとエスコバーの同時起用不可)。

開幕予想:ロペス、オースティン、ソト、ピープルズ、エスコバー

1-3.阪神タイガース

阪神に所属している外国人選手は
投手:ガンケル、エドワーズ、スアレス、ガルシア
野手:ボーア、マルテ、サンズ
の7人です。攻撃面にウィークポイントを持つ阪神としては野手は3人とも起用していきたいところですが、ポジション被りが痛い所。現実的には投手3:野手2の構成になるでしょう。野手はマルテ。ボーア、投手はリリーフのエドワーズが有力で、ガンケル、スアレス、ガルシアで2枠を争うことと思います。高橋遥人が開幕アウトになったことにより、先発で計算できるガンケル、ガルシアが入ることになるのではないでしょうか。しかしスアレスも層の厚いソフトバンクにおいては埋もれてしまっただけで、十分な馬力は備えています。そのスアレスが下に控えていて、言ってしまえば「替えが利く」ことも新たな阪神投手陣の強みになりえるでしょう。

開幕予想:ガンケル、ガルシア、エドワーズ、ボーア、マルテ

1-4.広島カープ

広島に在籍している外国人選手は
投手:ジョンソン、フランスア、スコット、DJジョンソン、モンティージャ
野手:メヒア、ピレラ
の7人。野手が2人なので、自動的に投手3:野手2の構成になるでしょう。投手陣は先発のジョンソンは有力、残り2枠を3人で争うことになるでしょう。フランスアもほぼ確定かと思っていましたがあまり状態が芳しくないようです。ここ最近の実戦での結果や来日前の映像を見ても、スコットはゴロを多く生産するピッチングでやってくれるかと思います。残り1枠をフランスア、DJジョンソンで争うことになるでしょう。短縮シーズンで1試合の重要性が増し、過密日程でリリーフの負担増が懸念される中、外国人リリーバ―の替えが利くということも阪神と同様に+に働く可能性は大いにあるのではないでしょうか。

1-5.中日ドラゴンズ

現在中日に在籍する外国人選手は、
投手:ロメロ、R.マルティネス、ゴンザレス
野手:ビシエド、アルモンテ、シエラ
の6人です。本当ならシエラを除いた5人で回したかったところですが、ロメロは故障で長期離脱が決定的。ポジション的にもシエラとアルモンテの併用は現実的ではなく、せっかくの制度のメリットをほぼ享受できないのは痛手と言わざるを得ません。

開幕予想:マルティネス、ゴンザレス、ビシエド、アルモンテ、シエラ

1-6.東京ヤクルトスワローズ

ヤクルトに現在在籍している外国人選手は
投手:マクガフ、イノーア、クック、スアレス
野手:エスコバー
の5人。野手がエスコバー1人なので、5人登録することすら叶わず投手3:野手1の構成になるでしょう。リリーフで活躍したマクガフ、先発として計算できるイノーアは有力で、残り1枠にクック、スアレスのどちらかが入ります。映像を見た限りだと、カッターやチェンジアップも含めた安定感はクック、ストレートの球威の面ではスアレスといった感じでしょうか。クックは先発、スアレスは比較的先発、リリーフともこなせるタイプという印象を受けたので、調子に加えて投手陣全体の兼ね合いも加味しての選択になるでしょう。

2.パ・リーグ編

2-1.埼玉西武ライオンズ

西武に所属する外国人選手は、
投手:ニール、ノリン、ギャレット
野手:メヒア、スパンジェンバーグ
の5人。自動的に全員登録可能になります。ノリンは先発、ギャレットはおそらく先発、リリーフともこなせます。そしてメヒアが往年の実力を発揮できれば秋山祥吾が抜けた打線の穴を少なからず埋めることも期待できます。5人登録可能になることに加え、これらの選手の活躍次第では戦力の穴を埋める可能性も多いにある陣容であると言えそうです。

2-2.福岡ソフトバンクホークス

現在ソフトバンクに所属する外国人選手は、
投手:サファテ、モイネロ、バンデンハーク、ムーア、C.スチュワート
野手:デスパイネ、グラシアル、バレンティン

の8人。なんといってもバレンティンを日本人枠で起用できるのが大きすぎます。残る野手2人はほぼ当確で、来日、調整が完了し次第登録されるでしょう。投手陣では現時点ではモイネロ、バンデン、ムーアの可能性が大かと思われますが、サファテの1軍復帰は勿論、スチュワートも来日2年目で1軍デビューがあってもおかしくありません。外国人枠をめぐる生き残り合戦からも、球界最強の戦力を誇るソフトバンクの力が窺えます

開幕予想:ムーア、モイネロ、バンデンハーク

2-3.東北楽天ゴールデンイーグルス

現在楽天に所属する外国人選手は、
投手:シャギワ、ブセニッツ、宋
野手:ブラッシュ、ウィーラー、フェルナンド、ロメロ
の7人。投手3人とブラッシュはほぼ確定で、残る1枠をロメロとウィーラーで争うことになると思いますが、個人的にはロメロかと思っています。今年はFAで鈴木大地が加入したことにより、銀次、浅村、茂木、そして鈴木。更に藤田らがバックアップに控えるという攻守に隙がない内野陣を形成できます。なので単純にウィーラーよりもロメロを外野/DHで起用した方が攻撃力は増すことでしょう。外国人枠の拡大によって、ブラッシュとロメロという主軸を張れる打者2人を起用できるのは、明らかに強みであり他球団の脅威にも間違いなくなるでしょう。

開幕予想:ブセニッツ、宋、シャギワ、ブラッシュ、ロメロ

2-4.千葉ロッテマリーンズ

現在ロッテに所属する外国人選手は、
投手:ハーマン、チェン、ジャクソン
野手:レアード、マーティン
の5人。自動的に全員登録可能になります。この陣容ですと5人目として滑り込むのはおそらくチェンになります。チェンはワンポイントからロングリリーフまでこなせるいわゆる「便利屋」ですが、1試合の重みが増し落とせない試合が増える今シーズンではそうした存在はかなり大きいはず。国際大会での「第2先発」のように、先発を早めに見切りその後を継いでチェンを投入するという作戦も可能になり、戦略的な幅が広がります。そうした選手を登録できることもシーズンを勝ち切る上では重要となってくるのではないでしょうか。

2-5.北海道日本ハムファイターズ

現在日本ハムに所属する外国人選手は、
投手:マルティネス、バーヘイゲン、ロドリゲス
野手:王、ビヤヌエバ
の5人。こちらも同様に全員登録が可能になります。マルティネスは先発、バーヘイゲンは先発タイプ。日本ハムは昨年ショートスターター等の作戦を駆使しましたが、それは長いイニングを投げ切れる先発が多くない、という弱点の裏返しとも言えます。そこで有原と並び計算できる先発として2人が計算できればもっと戦いは楽になるはず。ロドリゲスも先発、リリーフの両方をこなせる力を持っているのでやはり貴重な存在であることに違いありません。枠の拡大によって、投手運用が昨シーズンよりも楽になる可能性は大いにあると言えそうです。

2-6.オリックス・バファローズ

現在オリックスに所属する外国人選手は、
投手:ディクソン、アルバース、ヒギンズ
野手:モヤ、ジョーンズ、ロドリゲス
の6人。投手陣はディクソン、野手はロドリゲス、ジョーンズは有力と言えそうです。残り2枠をアルバース、ヒギンズ、モヤで争うこととなりそうですが、他の選手との兼ね合いでモヤが微妙かというところでしょうか。ロドリゲスは1B/DHでモヤが残った場合はロドリゲスとの併用という形になります。しかし、同じ1BではT-岡田や中川、勝俣等も起用されており完全に2人で回すという線は薄い気がしています。そんな状況に外国人枠を1つ割くよりも、投手陣に1つ割きたいという考えに至るのではないでしょうか。何より野手3人出場体制だと投手は試合の中で1人しか起用できないので、投手運用の面でも難しくなるような気がしています。

開幕予想:ディクソン、アルバース、ヒギンス、ジョーンズ、ロドリゲス

総括

今回の特別ルールは、登録は5人まで可能ですが、1試合において出場できるのは昨年までと変わらず4人までとなります。よって、理想的な構成としては投手3:野手2になるかと思います。理由は単純で、投手2野手3の構成になると、野手3人をスタメンで起用した場合、投手の片方は確実に起用不可になってしまうからです。こうなるとせっかくのルール改正もメリットをほぼなくします。

そして、その中でも先発投手1リリーバー2野手2が最も良いのではないでしょうか?今年は調整が困難だったことにより、先発陣が安定して長い回を投げきれない可能性も出てきます。そうなると自動的にブルペンの重要性も上がり、高い出力、馬力を誇る外国人リリーバーを複数抱えられることは大きなアドバンテージになります。また、今年はセ・リーグはクライマックスシリーズがありません。そうなると優勝しか意味がなくなり、接戦をいかに落とさず勝ちきるか、また勝てなくても10回の引き分けに持ち込めるかが重要になります。それを勘案しても、リリーフの層を厚くすることは全球団にとって至上命題となるはずです。

終わりに:特別ルールによってメリットを得られるチームはどこか


まとめると、投手3野手2の構成を組めて外国人リリーバーを複数抱えるチームはこの制度のメリットを大きく享受出来るといって良さそうです。
例:巨人、広島、阪神、ソフトバンク、楽天、ロッテ、オリックス


反対に、野手3投手2のチームや、そもそも野手を1人しか抱えていないチームは制度のメリットを享受出来ない、または運用面での制約を強いられるといったところでしょうか。
例:DeNA、中日、ヤクルト

というのが個人的な見解です。こうした制度を利用した運用もシーズンを勝ち抜く上では重要になるはずなので、注目して見ていきたいと思います。

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