頑張りすぎちゃうキミとお昼寝がしたい



ねこって、自由気ままで媚びなくて、いつも日当たりの良い縁側であくびをしているような生き物だと思ってた。

しかし先日わたしの実家にやってきたねこは、どうも様子が違っている。


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少し前に父が仕事先から白黒の仔猫をもらってきた。

「飼わないかと言われたから」と言い訳しつつも嬉しそうな顔でねこを抱く父に、それまでは動物と戯れているのさえ見たことがなかったのにと驚きつつも、ねこ好きのわたしはしめしめと思っていた。

実家にねこがいるなら、もう近所の野良猫を懐かせようとチュール片手に散歩しなくても良いし、ねこカフェに入り浸って散財しなくても良い。

喜び勇んで訪れたわたしを、新しい小さな家族は歓迎してくれた。

くりくりとまあるい目で見上げ、すりすりと近寄ってくる人懐っこいねこは、どこを撫でてもちっとも怒らない。父が100円均一で買ってきたねこじゃらしにも全力で反応してくれる。仔猫なのに日がな一日眠っているということもない。

これは動物好きでない父もめろめろになるはずだ。わたしも例の如くめろめろになりながらその日は別れた。玄関越しにみゃーみゃー鳴く声を聞いたときには独り暮らしをやめようかとすら思った。


それから日を開けずにまた遊びに行った。相変わらず可愛らしくてお出迎えしてくれるねこは耳をへちょんと少し傾けていたが、遊びモードに入るとぴんと立てて見せる。毛足の長いしなやかな身体を惜しげもなく使ってじゃれてきた。

ねこだけど、犬みたい。こんなに人間に構ってくれるねこもいるんだなぁと思って遊んでいると、座椅子に腰掛けた父が言った。

「今日は全然眠らないなぁ」

100円のねこじゃらしが宙を跳ねる。それに合わせて仔猫もぴょいーんと空を飛ぶ。

上手に着地したかと思うと、そのままぺったりと畳の床に身体を投げ出していた。まるでヘトヘトになった人間みたいに。

「人間がいると楽しくて遊んじゃうんだ。ほんとうは眠いのに」

そう父とわたしが話している間にも、ねこは手足をのびーっと身体を長細くしていた。まあるい目もとろんと三日月になり、うとうとして気持ちよさそうだ。

本来仔猫は一日のほとんどを眠って過ごすこともあるくらいロングスリーパー。そうやって大きくなっていくものらしい。

そうなの、お前、ほんと眠いのに頑張ってくれてたの。

ねこじゃらしをそーっとし仕舞うときも黒いしっぽがひょんひょんと反応してたけど、やっぱり疲れていたのかひんやりマットにハチワレ頭を擦り付けて眠ってしまった。真っ白なお腹がふかふか動くのを触りたかったけど、今は我慢。


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ねこって、自由気ままで媚びなくて、いつも日当たりの良い縁側であくびをしているような生き物だと思ってた。

でも、違うこともあるよね。人間の血液型占いや星座占いが当たらないように、「ねこ」だって一括りされちゃたまらないよね。

自由に眠れない子もいれば、人間好きの子もいる。縁側で丸くなるよりねこじゃらしで遊ぶのが好きすぎる子もいる。

ねこ、じゃなくて、我が家に来たのは白黒ハチワレの可愛い「れお」だ。それを忘れちゃいけなかった。




次くるときには君のことを決めつけたりしないから、いつか一緒にお昼寝しようね。れおくん。

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