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月刊 撚り糸

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毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたらと思っています。3月のテーマは『その角を曲がったところに』です。
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2022年1月の記事一覧

#月刊撚り糸 1月のテーマ『お元気ですか』公開しました。

毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたら…

七屋 糸
2年前
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#月刊撚り糸『お元気ですか?』 思い出せたらほんとにいいのに。

 初夢の中に昔の知り合いがいた。  たくさんの知らない人たちの中にそっと混じり込んで。 …

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サヨナラまでの距離 #月刊撚り糸 (2022.1.7)

「別れようと思うの」 「え? 蓮くんと?」 少し驚いたように、綾は私の顔を見つめた。 「…

百瀬七海
2年前
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お元気ですか #月刊撚り糸 第714話・1.07

「お元気ですか?」と、夜遅くに笑顔で俺の家にやってきたのは、大学生の甥っ子だ。「ああ、誠…

明けまして #月刊撚り糸

 本当に何年振りかで、年賀状を出すことにした。実家にいた頃は両親が毎年用意するのに便乗し…

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[小説] 借りパク #月刊撚り糸

 掃除が下手な男が一人、フローリングの上でひっくり返っている。秒針の音を聞きながら、蛍光…

きしもと
2年前
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缶蹴り #月刊撚り糸

「え」 野木祐也は即座に振り返った。蹴り上げられたそれは、二、三度石ころだらけの地面を力なく打って、青空に甲高く鳴いた。地面の歪な円の中心で確かに先程まで祐也が右足で踏んでいたコーヒーの空き缶が、忽然とその姿を消している。 「くっふふっ、ゆうやってば全然気づいてないんだもん」 祐也は目の前に視線を戻した。鶴田真美の長い睫毛が、白い瞼に押し潰されている。 「ふっ、おっかしい」 瞼の際にうっすらと滲んだ涙を人差し指の背で拭いながら、しかしやはり堪えきれない様子で小刻みに震えている